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24 あ、コイツじゃないな


 俺達は聖王国に到着すると王国の旗を掲げ、そのまま内に入っていく。

 都市の中枢辺りまで来たかと思ったら、なんだココ。


「……あの、あれ……なんですか?」


「魔法の研究所ですね。魔法聖は魔法の探求だけしたいとかなんとかで」


「落ち着く場所が欲しかったとか何とか」


 作業をするのに静かな場所が良いっていうのは理解できる。ただ……。


「それだけの理由で、()()()()()()()()()()()()……?」


 ノルマンの説明を受け、ソレを見上げる。


 都市の上に都市が浮かんでいた。


 大陸に根ざす四方の柱と中央の一際大きい柱に支えられ……いや、それだけで浮かぶ訳がない。何かしらの力で城が宙に浮かんでいる。


 空中都市といえば良いのか、298年前の法国にはこんなのなかった。


(アレは、魔族の力じゃな)


(だろうなあ……)


 見たことはないが、人がコレをできるとは思えない。


 陽光は時折空いている穴から下に降り注いできてはいるが……何を食ったらこれを作ろうって思うんだよ。

 

「あそこに行くのはどうしたらいいんですか? まさか飛ぶとか?」


「いえ、中央の塔に上下移動装置(リフト)がありますのでそちらで」


「現実的な移動手段で助かりました」


「300年経ってもまだ人類は大地にベタ足ですので」


 中央の塔に入るとそこには草原が広がっていた。


 そこには子どもたちが楽しそうにかけっこをしていり、座って話し込んでいたり、こちらを不思議そうに見てくる奴らもいた。鎧を着ている奴とその他数名の集団だからな、気になるわな。


「綺麗だな」


 天井を見上げ、照明が石のような見た目なのに気づく。


「……なんですか、あの照明」


「日中に浴びた陽光をそのまま光源とする魔道具らしいです。魔法技術の結晶ですよ。魔力も魔石も使わないらしいです」


「空中都市の後は、エネルギーのいらない光源か」


「王国にも空中都市の1つや2つがあればな~」とノルマンが話す。


「落ち着かないでしょ……落ちたらどうするのよ」


 カロリーヌは気分が悪そうな顔をしてそう話す。


「だが、コレで上空からの襲撃を防げる。技術だけでもあれば」


「王国が望めば、技術なんていくらでも提供していただけるのでは?」


「同盟国ではありますが、そこまでの力は貸してくれないでしょうね」


 ってことは、王国自体の力はそんなに強くないってことか?


 昔は王国と言いながら、黎明国(メルヒェン)以外は属国みたいな扱いだった。皇帝と王様、帝国と王国みたいなモン。でも、298年で権力が分散したみたいだ。


(ざまあねぇな。何もせずにふんぞり返ってるからだ)


「じゃあ、行きますよ~。奥から詰めてください」


 手続きが済んだようでリフトに乗って上に行く。

 さすがに人数が多かったので、大半は地上に残るらしい。

 チーンと到着したような音が鳴ると扉が開き、誰かが感嘆の声を漏らした。


「雲がこんな近くに……触れられますよ。あ、無理だった……」


 そこは街があり、塔があり、ローブを着ている人間が行き交っていた。

 地面が真っ白で建てられている建物も白色が多い。白を基調とした街なのか。

 

(異様な空間じゃのぉ。なぜ、下と分けとる? 権威を示すためか)


(魔法の時代っていうくらいだ。権威を主張をしてもらわないとな)


 国の実行権が宮廷貴族や王族ではなくなり、財務を司る官庁になるように。何かをする対価、原料を管理する所が権力を持つのは当然のこと。


 人や国であれば財布であるし、魔法が国を支えているなら魔法を司る場所だ。

 家で母が権力を持つのは家の財布の紐を握るかららしい。昔からそんなもんだ。


「お待ちしておりました! 黎明国(メルヒェン)の皆様!」


 遠くから現れたのは、白色のローブに身を包んでいる者達。お前らも白かい。


 ヘルムを小脇に抱えたまま頭を下げるジルと、この旅団──というか、外交使節団を率いるオッサンが頭を下げる。


 だが、向こうは頭を下げず、立ったまま笑みを浮かべている。お前ら程度の礼には頭を下げないってか? 生意気~。


(人間なんぞ、着る羽衣や装飾でしか権威を主張できぬ生き物じゃというのに)


 クディは彼らの様子を一蹴するように笑う。


(魔力じゃ、魔法じゃで地位を決めるか。魔族の真似事かのぉ?)


(そうだな)魔法庁とやらの魔力量を見て、目を伏せた(その通りだ)


 王様ほどの魔力はないが、ジルよりは上。子爵から伯爵級といった所か。

 宮廷内にいた人間の何人かには勝ってる。

 

 だが、問題は……この代表はそこまでの権力者じゃないって所だ。


「ご要件はお聞きしております。それで、勇者様はどちらに……」


 顔をひょこひょこと動かし、勇者を探す代表。その時、バチッと目が合った。


「……、」


 だが『コイツじゃあないな』と思われたようで、視線がすぐに外された。


「この方が勇者様です。呪いの影響で、別人のようになってしまわれてますが」


「!? え、ええ! いや、分かっていましたとも。オーラが違いますからね」


 はい、こいつ嫌い~。

 魔力やら装飾品でしか人を判断できねぇから落ちぶれるんだよバーカ!


「で、では参りましょう! 勇者様、お足元にお気をつけくださいね」


「ええ、お気遣い感謝致します」


 誰が転ぶかバーカ。アホ、まじで嫌いだ。馬鹿にすんな。


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