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19 コイツらは敵か?



 修正した計画を実行するためには、王宮に行かねばならない。

 なので、ガルーに道案内を頼んだ。


 途中から騎士らに案内され、謁見の間にやってくることが成功。クソでけぇ扉を開かれ、中に入るとすぐ手前にグラムとエルトーがいた。


(アイツらもいるのか。襲いかかってきたり……流石にないか)


 一応、視線が切れるまでは横目で確認し、その後はあくまで自然な流れで視線を前に戻す。


(なんか騎士たちの反応が怯えてるみたいでおもろいな)


(それはお主が威圧をしておるからじゃろう)


(武装した騎士がこれだけいたらそりゃあ威圧の1つや2つするだろ。襲われでもしたら面倒だ)


 ちなみに、威圧のやり方はいくつかある。そこの男(グラム)がやっていたような魔力を放つやり方。そして、それ専用の魔法を使うやり方だ。俺のはそっちだな。


権力と腐敗の魔人(ティラヌス)の権能──王の眼差しレギス・イントゥイトゥス


 厄介な魔人が使ってた精神汚染系スキルを大勢の騎士に使いながら、俺は片膝をついて王に頭を下げた。

 

「ただいま、戻ってまいりました」


 徐々に出力を抑えていく。雰囲気の変わりように驚いた様子の王、並びに当日にいた従卒達。


 威圧のある人間が王の前では丸くなる。

 こういうの好きだよな、お前らは。


「……。どうだったかね、私の国は」


「298年前とは比べるべくもないほどに発展を遂げており、国民も心豊かに日々を過ごしておりました。これもひとえに陛下の優れた御国政の賜物でございましょう」


 適当に褒めておけばこいつらは満足する。

 んで、本題はこっちだ。


「昨日は不躾な態度をとってしまい、申し訳ありません」


 一旦謝罪な。したくないけど。


「私は魔王との戦いの最中に封印をされたようです。戦っていたと思っていたら、突如として城に連れてこられ……陛下の話を聞き、混乱をしておりました」


 片膝を付き、目線は真っ赤な絨毯の上。ホコリ1つないキレイな空間だ。

 

「その中で、勇者資料館を訪れました。そこで、私がどうやって封印されたのかを知りました……仲間たちが裏切ったことを知りました」


 今回、コレを議題に上げるのは理由がある。

 計画を実行する前に確認をしておきたいのだ。


「陛下のご意見をお聞きしてもよろしいでしょうか」


 勇者資料館で見たこと、聞いたことが事実なのか。


 異人種は解放していない。そして、ナモー、ノアラシ、アラムを指名手配。本当に国としてそれを認知しているのか。


「なんでしょう、勇者様」


 もし、認知をしているなら──


「異人種は敵でしょうか。私はまだ、気持ちの整理がついておりません。298年間もの間、何があったのでしょうか」


 コイツらは──敵だ。

 


     ◇◇◇



 勇者の問いを受け、小太りの黎明国(メルヒェン)の王は唸る。


 どのような意図があるのか分からなかったからだ。


 ただの問いなのか、どうか。ただ、聞かれたならば答えねばならん。


「異人種は……勇者様を裏切り、298年もの間、謝罪をせず、あろうことか勇者様の封印石を渡すことを拒み、逃げ続けた。あの資料館に移動させれたのはほんの数年前なのだ。何があったかは──」


 王は目線を近くの将校に向ける。それを受け、将校は話し始める。


「エルフが拒み続けたため、兵を向かわせたのですが……その1/3は殺されました。ただ、封印石は奪い返すことができました。その際に右目と右腕を切り落とすことに成功したため、しばらくは姿を表さないでしょう」


「ドワーフに関しては東の地で仲間を集めているとの話がありますが、確かな情報とは言えません。斧王国(クロッツ)が警戒をしてはいますが……奴らは穴蔵を好む。力を蓄えているとして、森の奥や山岳地帯といった立ち入りにくい場所なのではないかと」


「アンスロはかつての国の跡地を利用し、大規模集落を立ち上げました。その際、砦などもドワーフと協力して修復、送り込んだ者からは勇者様を裏切ったナモーというアンスロを筆頭に、侯爵クラスの魔力を持っている者がいるとの報告があります」


 将校の説明を受け、王は口を開く。


「勇者様を裏切った者達は国を挙げて捜索をしています。人類の英雄を陥れた者達の首に懸賞金をかけ、探索者並びに傭兵たちにも捜索を出しています」


 そこまで話をして、王は自らの意見を話す。


「我々にとって異人種は敵です。異人種の持つ技術や能力は使えるからこそ、種の根絶とまでは考えてはいませんが……彼らの罪は重く、許されることでは無いのも事実。その罪を清算させる必要もあるでしょう」


 その言葉を聞き──勇者は笑っていた。

 王は一つの懸念をしていた。

 裏切り者たちを庇い、現状に怒るのではないかと。


「そうですか。ありがとうございます」


 だが、勇者は勇者であった。

 期待を常に越え、冷静で、時には冷徹に物事を対処する。


「私からしたら彼らは仲間であり、友でした。先の話を聞いても信じられない思いが今でもあります……しかし、敵であるならば屠る。それが、勇者である私の使命です」


 人類のために身を捧げた者を疑うなどと、と王は内心で改める。

 この者こそ、本物の英雄なのだ。

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