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09話:最強のメンタルとブラフ能力の持ち主

「誰だテメェ?? もしかして香織へのナンパ目当てかよ?」

「ア、アンタ……なんでここにいるのよ……?」

「俺の話は後で。それで? この男は一体誰なんだ?」

「……元カレよ。東都大学に通ってる大学生」

「えっ? 東都大学? めっちゃ頭良い大学じゃんか。そんな頭良い大学生と付き合ってたの?」

「だから元カレよ。今はもうこんな男となんて付き合ってないわよ」

「おいおい、俺の話を無視すんなよ。ってか元カレじゃなくて今カレだろ? だってもうヨリを戻したんだからさ。はは、だから君さー、さっさと俺の腕から手を離してくんねぇかなぁ?? 俺達これから遊びに行くんだから邪魔しないでくれねぇかなぁ??」


 前島さんの元カレはあははと笑いながらも、目は笑ってなかった。完全に俺に向かってメンチを切ってきた。見た目は凄くイケメンなのにめっちゃオラついている。


 まぁ多分だけど俺が年下で弱そうにしか見えないから、このイケメン男は俺に対してかなり上から目線でオラついてきてるって感じだろう。


(弱そうな相手に上から目線でオラつくとか……なんか俺の嫌いな会社の上司に性格が似てて不快な気分になるな)


 高校時代までは引きこもり気味で人付き合いなんて皆無だった俺だけど……でも社会人(社畜)になってからは会社の同僚とか取引先相手とか、色々な人達と交流する機会が非常に多くあった。


 そしてそんな沢山の交流経験があったおかげで、今の俺は基本的に誰とでも仲良くなれるようになっていた。


 だけどそんな誰とでも仲良くなれる俺だったけど、でも性格が終わってるヤツとだけはどうしても仲良くする事は出来なかった。まぁ具体的に言うと会社の上司だ。上の人間に媚振りまくって下の人間にオラついてたあのクソ上司を思い出して不快な気分になった。


 という事で俺はそんな過去を思い出しつつも、イケメン男のオラついた態度に物怖じする事もなく、淡々とした態度でそのイケメン男に向かって話をしていった。


「いや、でも前島さんはアナタとは別れたって言ってますよ? それに前島さんは腕を掴まれているのを嫌がってますよ? だから一旦アナタの方こそ前島さんの腕を掴むの止めてあげてくれませんか?」

「はぁ? 離す訳ねぇだろ! 一体何様なんだよテメェ! ひょっとしてテメェはマジで香澄を狙ってんのか? ふざけんなよ! コイツは俺の女なんだから狙おうとしてんじゃねぇよボケが!」

「いや俺は前島さんを狙ってる訳じゃないのでその点は大丈夫です。でも前島さんは手を掴まれて嫌がっているのは本当の事だと思いますよ? ですから一旦手を放してあげてください。女性に対して嫌がる行為をするのは人として良くないと思いますよ?」

「だから離す訳ねぇって言ってんだろ! ってかテメェさっきから喋り方キメェんだよ! 年下のクセに生意気な口聞いてんじゃねぇよ! テメェこそ俺の腕を掴む手を離せよ! そんでさっさとここから失せろ! このクソガキがよ!!」

「はい、もちろんです。アナタが前島さんから手を離してくれたら俺もちゃんと手を離しますよ。ですからアナタの方から先に――」

「あぁもうっ!! さっきからいちいちウゼェんだよ! 死ねよカスッ!!」

「え……って、ぐはっ!」

「えっ!? ちょ、ちょっと!?」


―― バキッ!!


 そんなやり取りをしていたら突然とイケメン男は逆上してきて、前島さんの腕から手を離していき、それからすぐに俺の腹部を全力で殴ってきた。


 俺は殴られた衝撃でそのまま地面に倒れ込んでいった。でも俺はグルっと一回転してうつ伏せではなく仰向けで倒れていった。理由はもちろんある。


 そしてイケメン男は地面に倒れ込んだ俺に向かって、逆上したまま何度も蹴りを入れてきた。


―― バキッ、バキッ、バキッ!


「オラオラ! テメェみたいなキモいクソガキが年上に説教垂れてんじゃねぇよ! マジでキメェなぁ!! オラ、オラッ!!」

「ぐっ……がはっ……」

「ちょ、ちょっと! も、もうやめてよ!」

「はぁ? 何で止めるんだよ香織? お前だってこんなキモい風貌のナヨナヨした男は大嫌いだったろ? だから俺は香織の大嫌いな害虫を駆除をしてやってるだけだよ! オラ、オラッ!」

「ぐっ……が……」


―― バキッ、バキッ! バキ、バキッ!


 それからも俺はイケメン男に何度も蹴られていった。俺はそれを何とか気合で耐え続けていった。


 そしてそんな一方的な暴行を受け続けてからしばらくして。イケメン男は俺が動かなくなったのを見てスッキリした表情を浮かべながら、ようやく蹴り上げるのを止めていった。


「あー、マジでスッキリした! こんな喧嘩も全然出来ねぇザコのクセに俺にちょっかいかけてくんじゃねぇよ! このカスが! ま、そんなわけで香織を狙ってたザコな害虫駆除も終わった事だし……よし、それじゃあそろそろホテルに行こうぜ香織ー!」

「え……い、いや、嫌だって! アンタなんかと一緒にラブホなんて行く訳ないでしょ」

「おいおい、お前まだ怒ってんのかよ?? だからもう何度も謝ったんだからそろそろ許せよ? なぁ、だから早くラブホにいこ――」

「はぁ、全く……相手が嫌がってんだからさ……もうそろそろ諦めろよな。……よっと!」

「……え?」

「え?」


 俺はさっきまでずっとイケメン男にボコボコに蹴られまくっていた訳だけど、でも俺は飄々とした態度を取りながら地面から軽々と立ち上がっていった。


 そしてそれからすぐに二人の話に割り込んでいった。


「はぁ? なんだよテメェ……あんなにボコボコにしたのに、まだピンピンとしてるのかよ?」

「あぁ、そうだよ。ピンピンしてるよ。俺は毎日ジムに通ってるから体力には相当自信があるんだ。だからアンタのクソザコな蹴りなんて何発くらっても痛くねぇんだよ!」

「なっ!? ク、クソザコだって……?」


 俺は笑いながらイケメン男の向かってそんな安い挑発をしていった。もちろん嘘だ。まぁ確かに社畜時代の俺はストレス発散のために週2~3でジムには通っていたけど、でもこの高校生時代の俺はただの引きこもり男子だからな。


 だから今の男子高校生な俺には体力も筋力も全く無い。さっきの殴る蹴るなどの暴行を食らって全身はガチで痛いし、立ち上がってるだけで相当辛い。でも……。


(でもさ……こういう状況では……舐められたら負けなんだよ……!)


 俺はこの十年近くブラック会社で社畜として生きていた。本当にキツい職場だった。理不尽な目に何度も遭ったし、会社の仲間は次々に飛んでいった。社会人になって辛かったり悔しかったり悲しかったりした事には何度も遭遇した。


 でもそんなブラック会社で働いていて良かったと思った事もある。


 それはどんな理不尽な目に遭っても絶対に負けてたまるかと思う反骨精神を手に入れた事と、決して折れない鋼鉄のメンタルを手に入れた事だ。


 俺は社会人(社畜)になって、この心の強さだけは誰にも負けないくらいに成長させてきたんだよ。


 そしてこの心の強さは過去にタイムスリップした所で、高校時代のウジウジとしてた心の弱い状態になんて決して戻らない。身体は弱っちいかもしんねぇけど、この心の強さだけはタイムスリップしても同じままなんだよ!


 だから俺は今までの社畜人生で培ってきたこのメンタル力を駆使して……全力でこのチャラ男に立ち向かってやるからな!

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