39話:部長会議が始まる
それからしばらくして。
今は午前中の授業が終わり昼休みに入った所だ。という事でもうすぐ部長会議が始まるので、俺は会議室に一足先に来て最終確認を行っていた。
「ホワイトボードの準備よし、全員分の資料の用意よし、パソコン動作チェックよし。準備完了だ」
俺は会議を行うための準備を全て完了させたので、あとは部活の部長達を待つだけとなった。そして程なくして。
―― ガチャ
「おつかれーっす」
「おつかれさまですー」
「おっすおっす。何か最近暑いよなー」
「はは、確かになぁ。野外の運動系の部活はマジで大変だな。あ、おつかれさまー」
―― ざわざわ
それから程なくして部活の部長達がどんどんと会議室に集まってきた。全部で十五名近くが集まった。事前に部活の数は把握しているので、来てない部長はあと二人だけだ。
そして会議室にやって来た三年生の先輩達は俺の顔を見て不思議そうな顔をしながら俺にこう尋ねてきた。
「ふああ……それにしても今日の授業もマジで疲れたなぁ……って、あれ? 君誰? 生徒会の子かな? 副会長はどうしたの?」
「あれ、本当だ。知らない子だね。今日は副会長じゃないんだ?」
そう言いながら三年生の部長達は次々に俺の顔を見てきた。しかし部長の中には二年生の部長も少数ながらいるようで……。
「はぁ? なんでゲロカスオタクがいんだよ。おえぇ……きもちわるー」
「え? あ、本当じゃん。引きこもりキモオタじゃん。何でアイツが部長会議に出席してるんだよ。ガチで萎えるわー」
「ケロカス? 引きこもりオタ? 何それ? お前らの知り合いか?」
「いや全然知らないんですけど、でもアイツってあれなんすよ。一年の頃めっちゃ不登校で引きこもってたヤツで有名な生徒っすよ。だから周りのヤツらもアイツに対してそんな事言ってるんです」
「そうそう。それに学校に来ても全然喋らないし、人と目を合わさないし、いつも挙動不審でキモいヤツって話もよく聞くよな。まぁつまりクソヤベェヤツって事っすよ」
「へぇ、そうなのか? まぁ確かに前髪めっちゃ長くて変なヤツっぽくは見えるかも?」
「ふぅん、何かそう言われちゃうと変な子にだんだんと見えてきたわねぇ……」
―― ヒソヒソ……
二年生の部長達は俺に対してそんな事を言ってきた。まぁそりゃあ俺は二年生から嫌われてる存在だから仕方ない。
それに今俺の悪口を言ってきた二人の部長はどちらもガタいが良くてパリピっぽい感じの男だった。こういうタイプの人々からはより一層嫌われるから仕方ない。今は諦めて罵声は受け入れていく事にする。
―― ガチャ!
「おつかれーっす! いや遅くなってすまん! 授業が伸びちまって来るのが遅れたわ! マジですまん!!」
「おつかれさま。多分私達が最後よね?」
「おう。おつかれっす。お前達が最後だよ」
「あぁ、やっぱりか。いやごめんごめん、今すぐ席に付くよ。ほら、さっさと席に行こうぜ、恵」
「えぇ。本当に遅くなってごめんなさい」
そんなヒソヒソ話が続いていたその時、会議室の中に二人の生徒がやって来た。それは男子、女子バスケ部の部長だ。すごく爽やかなイケメン陽キャと綺麗な陽キャっぽい感じの二人だった。
「よいしょっと。ふぅ。それじゃあ時間も限られてるしさっさと議題に入ろうぜ! って事でいつも通り副会長よろしく頼むよー……って、あれ? 今日の進行役って副会長じゃないの?」
「え? あら、ほんとうね。環ちゃんはどうしたのかしら?」
「いつも副会長なのに珍しいなー。ってか皆ヒソヒソと話してどうしたんだよ? この男子有名人なのか?」
「えっ? あー、いや、えっと……」
「それはその……」
男子バスケ部の部長が周りの皆にそう尋ねていくと、周りの皆は一斉に口をモゴモゴとさせていった。
まぁでもとりあえずこれで全部長が揃ったという事になる。よし、それじゃあここからが本番だ。全力で気合を入れていくぞ!
「……ふぅ。よし!」
―― パァンッ!!
「えっ?」
「はっ?」
「な、なんだ?」
俺は気合を入れるために両手で頬を全力で叩いていった。仕事前にいつも気合を入れるためにやっていたルーティンみたいなもんだ。
(久々にやったけど……うん、やっぱりこれが一番やる気が出る方法だな!)
何とも原始的だけど、でも気合注入するにはこれが一番良い。でも周りの部長達は皆訝しんだ目で俺の事を見てきている。当然だ。意味不明に急に頬を思いっきり叩き始めたらヤベェヤツだって思われるに決まってる。
でも皆からヤベェヤツだって思われたとしても全然気にしない。今まで社会人として何度も修羅場をくぐり抜けてきたんだ。だからこんな白い目で見られたとしても全然ノーダメだよ。という事でこれから全力で会議を始めていくぞ!
「えっと、今日はお忙しい所お集まり頂きありがとうございます! それと皆様が気になってる点があると思いますので最初にお伝えさせてください! いつもは副会長の藤咲環さんが議事進行を務めているのですが、副会長は授業中に熱が出てしまったため、今は保健室で休養をしている所です」
「え? そうなのか? 副会長は大丈夫なのか?」
「環ちゃんいつも元気なのに、熱が出たなんて心配ね……悪い病気とかではないの?」
「はい! 保健室の先生の健診結果からしばらく寝たら熱も納まるだろうと言われてるので大丈夫との事です!」
「そう。それなら良かったわ。環ちゃんに大事がなくてよかった。それで? それじゃあ君が環ちゃんの代わりって事なのかしらね?」
「はい! それで今回は副会長の代わりに部長会議の進行の代役を務める事になりました、大神秀一と申します! えっと、初めての進行役で物凄く緊張しているんですけど……どうぞよろしくお願いします!!」
俺は元気良くハキハキと喋りながらそんな挨拶をしていき、そして部長達の前で全力で頭を下げていった。すると……。
「ぷはは、何だかめっちゃ元気の良い後輩だなー! 良いじゃん良いじゃん! 元気が良いヤツは大好きだぜー! 俺は男子バスケ部の部長の三年の逢坂健だ! よろしく頼むぞ!」
「ふふ、そうね。私も元気の良い子は大好きよ。同じく女子バスケ部の部長の桜井恵よ。こんなに三年生が沢山いると緊張しちゃうかもしれないけど、でも私達も議事進行には協力するから頑張ってね。大神君」
「はい! ありがとうございます! 逢坂先輩、桜井先輩!」
すると逢坂先輩と桜井先輩は俺に優しくそう言ってきてくれた。そして他にも……。
「なんだよ。ハキハキと喋ってるマジメな感じの良い男子じゃんか。お前らが言ってた変な噂はなんだよ。ちょっとだけ信じて損したわ。俺はサッカー部の三年の真島だ。よろしく頼むよ」
「えっ? い、いや、違うんすよ。確かに何か思った感じのヤツとは違うなって思ったけど……で、でもクラスのヤツらは皆そう言ってるし……」
「そ、そうそう! 同学年の生徒達は皆、本当にアイツはかなり根暗野郎だって……」
「そういう噂を鵜呑みにするのは良くないわよ。ちゃんと自分で見たものを信じるようにしなさい。それにアナタ達だって今の大神君を見て何だか噂と違うって思ったんでしょ? ならそれで良いじゃないの。自分で見たモノよりも他人の噂話を信じてしまったら、いつか変な噂とか何でも信じちゃうようになるわよ?」
「そ、それは……まぁ、確かにそうですね……」
「は、はい……すいません……」
「うん。ちゃんと反省出来て偉いわ。それと自己紹介が遅くなってごめんなさいね。私は料理部部長の三年の鏑木唯香よ。ほら。君らもちゃんと自己紹介をしていきなさい」
「え? あ、は、はい、わかりました。その……二年の陸上部部長の刑部大輔です」
「同じく二年のテニス部部長の大佛俊……です」
という事で三年生に続いて二年生の部長達も俺に次々に挨拶をしていってくれた。
(よし。上手くいったな)
俺は社会人として生まれて初めて外部の人との打ち合わせに行く事になった時に会社の先輩にアドバイスされた言葉がある。それは。
①常に笑っとけ
③喋る相手には敬意をしっかりと持て
②腹から声を出して元気良くハキハキと喋れ
この三点さえ気を付けておけば、初対面の打ち合わせ相手でお前が色々としくじったとしても、ある程度のミスなら笑って許してくれる可能性がある。
でも逆にムスっとした表情でいたり、ボソボソとした声で喋ったりしたら相手は多少のミスであったとしても超絶激怒される可能性がある。最悪嫌われてしまう可能性も高くなる。
だからどんな事があっても初対面の人と話す時はその三点を意識して必ず喋るようにしろと、俺は何度もそんなアドバイスを受けてきた。
なので俺は外部の打ち合わせや商談に向かう時はそれだけしっかりとしておくようにいつも心掛けていた。そして今日もそれを実践していったのだけど、それが上手くいって良かった。
「よし。それじゃあこれで全員の自己紹介が終わった感じかな。それじゃあ早速今日の会議を始めていってもらえるか?」
「はい、わかりました。それでは本日の会議は今年度の文化祭の出し物についての話し合いをしていきます。机の上に置いてある本日の資料を使いながら進行していきますので、まずはお手元の……」
という事でここから文化祭についての会議が始まっていった。




