36話:放課後に会議の準備をしていると
その日の放課後。
「ふぅ。これで明日のお昼の準備はオッケーだな」
俺は明日の部長会議で使う会議室の準備を進めていっていた。必要な数の机と椅子は準備し終えたし、ホワイトボードも準備した。
配布資料も部長の数分コピーはしておいたし、議事録用のパソコンも充電して生徒会室に置いてある。準備はこれでバッチリだな。
「それじゃあ準備も全部終わった事だし、今日はさっさと帰るとするかなー」
という事で準備を終えた俺は会議室から出ていき、そして教室に戻っていくと……。
「あれ? 大神じゃん。お疲れさま」
「え? あぁ、前島か。お疲れさん」
教室に向かっている廊下の途中で俺はスクールカースト最上位のギャルである前島と出会った。
「放課後に一人で何してるのよ?」
「明日部長会議があるから、生徒会のメンバーとして雑務をこなしてたんだ。そっちは?」
「私は先生に提出するプリントがあったから職員室に行った帰りよ。今から教室に戻るの? それなら一緒に戻りましょうよ」
「まぁ別に良いけど。でも良いのか? 俺みたいなのと一緒に歩いてたら変な目で見られるんじゃないか?」
「確かにそうね。アンタ周りからすっごく嫌われてるもんね」
「おいコラ。そこは嘘でもそんな事ないって言う所じゃないのか?」
「残念だけど私は嘘は付けない女なの」
「……最近の前島さ、なんだか俺の事をからかって遊んでないか?」
「ふふ。バレた?」
俺がそう言っていくと前島はケラケラと笑いながら返事を返してきた。まぁやっぱり前島は俺をからかって遊んでいるようだ。
「ふふ。まぁでも話を戻すんだけどさ、アンタが嫌われてるのって誤解なんじゃないの?」
「ん? 誤解?」
「だってアンタって全然普通の男子じゃん。皆が言ってるような引きこもりキモオタじゃないんでしょ? それなら私が皆からそれとなく言ってあげても良いけど? 大神はそんなヤツじゃないってさ」
「前島が?」
急に前島はそんな提案をしてきた。俺はちょっとだけ逡巡した。
(確かに前島が俺が普通だって言ってくれれば多少は嫌われてるのが減るかもしれないな)
だって前島はこの学校のスクールカースト最上位に君臨する絶大なるギャルだからな。
今時の学校事情はそんな事ないと思うけど、でも一昔前はスクールカースト最上位のギャルなんていえば学校の中ではボスキャラみたいな存在だったからなぁ。
だからそんなボスキャラの前島がクラスの皆に口添えしてくれたら、もしかしたら俺への敵意だとか不快感などは多少は払拭されるかもしれない。でも……。
「……いや、そこまではしなくていいや」
「そう? 別に遠慮なんかしなくても良いけど?」
「いや。遠慮をしてる訳じゃないって。まぁでも何というか……誤解っていう訳でもないからさ」
「そうなの? でもアンタって全然普通の男子じゃん?」
「まぁ今は確かにそうかもだけど……でも昔はこんなんじゃなかったんだよ。ずっと家に引きこもってたし、学校に来ても誰とも目を合わさないし、話したりもしない。声をかけられても無視をするなんて当たり前。そんなヤツは皆から嫌われてもしょうがないさ。だから誤解という訳でもないんだよ」
「大神……」
「だから前島が口添えしてくれるってのは俺にとっても有難い事だと思うけど、でもそれじゃあ根本的な解決にはなってないんだ。前島に言われたから俺の評価を変えるっていう人も少ないだろうしさ。だからまぁ何というか……自分でちゃんと評価を変えていくつもりでいるんだ」
「……」
「だから口添えはしなくて大丈夫だ。俺はちゃんと自分で自分の評価を変えていってみせるからさ。でも心配してくれてありがとうな。前島」
「ふ、ふん。別に心配して言った訳じゃないわよ。まぁでも……変わろうと頑張るってのは凄く良い事だと思うわ。私も応援してるわよ」
「あぁ。ありがとう。前島」
前島はプイっと顔を背けながらそう言ってきてくれた。何だかんだ言って前島も優しい女子なんだなというのがよくわかる。
「あ、そうだ。そういえばさ、話変わるんだけど、前島にとって去年の文化祭ってどんな感じだった?」
「? なんでそんな事を聞くの?」
「いや、俺は去年参加してなかったからさ。何となく気になって」
「ふぅん? まぁ私にとって去年の文化祭は凄く楽しかったわよ。準備期間は皆でクラスTシャツを作ったのも楽しかったし、お化け屋敷を作りあげるのも楽しかったし。文化祭当日はもう全力で遊びまくったわね」
「そっか。それは何だか面白そうな文化祭だったんだな」
「そうね。あ、でもあれだけはちょっとメンドクサカッタわ。急に行われたミスコンがあったんだけど、それに他薦で選ばれて舞台に立たされたりしたのは面倒だったわね」
「ミスコン? へぇ、そんな出し物もあったのか。それはちょっと見たかったなぁ」
「ふぅん? その見たかったっていうのはミスコンに出ていた私の事を見たかったのかしら? それとも学校にいる可愛い女の子達をまとめて見たかったっていう事かしら?」
「え……って、えっ!? あ、い、いや、それは……どっちも違くて! ただ何というかそういう面白そうなイベントが見てみたかったというか何というか……」
「別にそんな挙動不審がらなくて良いわよ。アンタも他のエロ猿男子と同じだって事がわかって私も面白いし」
「え、エロ猿男子!? い、いや、だからそういう訳じゃ――」
「ふふ。冗談よ冗談。アンタがそんなお猿さんじゃ無い事くらい知ってるわよ。それで? どうして文化祭の事なんて急に聞いてきたのよ?」
「い、いや、今は生徒会の仕事で文化祭の仕事を手伝っていてさ。だから去年は参加出来なかった分、今年はちゃんと参加しようって思ってさ。それで前島の話を聞いてみて、皆もきっと文化祭を楽しみにしてるんだろうなってのがわかったから……だから俺も頑張ろうって思ったんだ」
「ふぅん、そういう事か。ま、良い心掛けなんじゃない? それじゃあ生徒達のためにしっかりと文化祭準備を頑張りなさいよ」
「あぁ。ありがとう。前島」
前島はそう言って俺にエールを送ってきてくれた。よし、それじゃあ皆のためにも……文化祭の仕事を頑張っていくぞ!




