25話:帰り道の電車の中で(前島視点)
大神と一緒に晩御飯を食べ終えてからしばらくして。
駅の改札前にて。
「それじゃあ。また明日ね」
「あぁ、また明日な」
私は駅の改札前で大神に別れの挨拶をして改札に入った。そしてすぐに到着した電車に乗り込んで帰路へとついていった。
(それにしてもまさか、アイツ駅まで見送りまでしてくれるなんてね)
私は電車に揺られながらそんな事を思っていった。
ついさっき私はそろそろ帰ると言った時、大神は駅まで見送ると言ってきたんだ。
私は見送りなんて別に要らないと思ってすぐに断ったんだけど、でもアイツは“前島は女の子なんだしちゃんと駅前まで送る”と言って、半ば強制的に駅まで一緒に付いて来たんだ。
私はアイツがそう言ってきた事にビックリとしてしまったし、ちゃんと有言実行で駅まで見送りにきた事にもビックリとしてしまった。
「はぁ、全く……誰よ。アイツの事を根暗キモオタ野郎って言い始めたヤツは。全然根暗でも無ければキモくもないじゃない」
私の属してるグループの女子達もクラスメイトの皆もアイツの事を根暗キモオタだと揶揄している。もちろん私もそう思っていたから、アイツの事を今までキモイヤツだとずっと思ってた。
でもこの数日間、アイツとちょくちょく交流を持つようになってわかった。大神は全然普通の男子だ。
時々アイツとはLIMEでやり取りしてるけど、いつもドラマの話とか学校の話とか普通の話でちゃんと盛り上がってるし、それにアイツは私の話をマジメにちゃんと聞いてくれる。
アイツは凄く聞き上手っていうか、私の話をちゃんと聞いてるなっていうのがいつもよく感じるんだ。私の話をちゃんと聞こうとしている辺り落ち着いた雰囲気も持ってる不思議な男子だ。
それに今日は委員長と一緒に料理実習をしてたけど、料理実習中は私の指示に従ってテキパキと行動してたし、気が付いたら洗い物とかも率先してやってるし、なんというか要領の良い男子でもあると感じた。
という事でここ数日で思ったけど、アイツがオタクかどうかは知らないけど、でもアイツは全然根暗なんかじゃないし、キモくもない。本当に普通の男子って感じだ。
いや、普通の男子よりも遥かに良い男子な気がするわ。少なくとも元カレのクソ男よりかは遥かに立派な男子だと思う。
「はぁ。やっぱり人の噂なんて信じるもんじゃないのかもしれないわね」
私は今まで皆がそう噂をしてたから、私もアイツの事は何となく毛嫌いしていた。でも実際に話してみるとそんな変なヤツではなく、むしろ話しやすい部類の男子だった。それに私が危ない時も助けてくれたし……アイツって結構良いヤツなんだよね。
だからそんなお礼と今までの謝罪の意味も込めて、今日はバイトが無くて暇だったから何となくアイツに晩御飯を振舞った訳なんだけど……。
『う、うまっ!? めっちゃ美味しいよ!』
『マジで本当にめっちゃ美味しかった! こんな美味しいご飯を作ってくれてありがとう!』
その時、私はさっきの晩御飯時の光景が頭の中に広がっていった。アイツの嬉しそうに食べる顔が頭にどんどんと蘇って来る。
「あんな簡単な料理であそこまで大喜びするなんて……ふふ、子供じゃないんだから」
私はアイツの嬉しそうな顔を思い出して笑みを溢していった。
元カレに料理を振舞った時には感謝の言葉なんて全然貰った事ないし、むしろ“味薄い”だの“この野菜嫌い”だの文句ばっかり言ってたわよね。今思えば野菜嫌いって何よ。ガキ過ぎるだろ。
そんな事もあって、今日のアイツの美味しそうにご飯を食べている様子を見るのはなんだかちょっぴり嬉しい気持ちになった。
だってそりゃあやっぱり、私もずっと料理をしてきた身として、自分が作った料理を喜んで食べてくれる人の顔を見るのが何よりも嬉しいしね。
だから本当はご飯を作るというお礼は今日だけの予定だったんだけど、でもあんなにも美味しそうな顔をして食べてくれるんだったら……まぁこれからも時々晩御飯を作ってあげても良いかな。料理作るの好きだし。
「よし。それじゃあ今度は何を作ってあげようかな?」
私はアイツのために次に作ってあげる料理を楽しく考えていきながら、そのまま電車に揺られて家まで帰っていった。




