21話:家庭科の調理実習が始まる
俺が生徒会に参加してから数日が経過した。
この数日の生徒会の仕事としては学校の中を見回りしていったり、掲示板のポスターの貼り換えをしたり、切れてる電球の交換をしたりと……まぁそんな雑務全般をこなしていった。
大変ではないけど、メンドクサイ仕事を淡々とこなしている感じだった。
まぁでも内申点が上がるのであれば、メンドクサイ仕事でも全然苦にはならない。というか放課後がいつも暇だったから仕事がある今の方が普通に有難いしな。
という事で内申点をどうするか問題はこれで多少は解決出来そうだ。生徒会に入れてくれた委員長には本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。
だけどタイムスリップしてきた俺にはまだ一番の大問題がまだ残っている。その一番の問題というのはもちろん……。
「それでは今日の家庭科の授業ではクッキー作りをしていきます。班決めは自由です。好きな人と三人で班を決めていってくださいー」
「「「はーい!」」」
「……う、うそだろ……?」
家庭科の授業中に俺は愕然としてそう呟いていった。
調理実習の班決めなんて名前の順とかで勝手に決めてくれると思ってたのに、まさかの自由という事で俺は愕然としてしまった。
(友達が全然いないのにどうやって三人の班を作ればいいんだよ……)
という事で一番の問題というのは、もちろん友達が全然いないというこの状況だった。
タイムスリップしてから友達を沢山作って楽しい高校生活を送ると意気込んでいたのに……それなのに勉強面だとか内申点だとかの新しい問題が次々に出て来てしまったので、俺は友達作りなんて全然出来ていなかったんだ……。
―― ざわざわ!
「あ、タケルー! 俺と一緒に組もうぜ!」
「もちろん良いぞ。それじゃあ後一人は……カズマだな! おい、カズマー、一緒に班作ろうぜー」
「おう、わかった! 皆でクッキー作りとか楽しみだなー! お前ら変な事して遊ぶなよー!」
「あはは、当たり前だろ。めっちゃ美味しいクッキーを作ろうぜ!」
「綾ちー。私達と一緒に班になろー!」
「うん、良いよー。皆で美味しいクッキー作ろうね!」
「そうだね! クラスで一番美味しいクッキーを作ろうね!」
そんな愕然としている俺を完全に無視して周りの生徒達は皆班を組み始めていった。それに何だか皆凄く楽しそうに笑っているよな。
でもそんなの当たり前だよな。仲の良い友達同士で集まって調理実習をするなんて、そんなの楽しいに決まってるよなぁ……。
「って、そんな周りのヤツらの事を見てる場合じゃないだろ。俺、どうやって班を作ればいいんだ……」
「ふむ。どうしたんだい? 大神君?」
「うぅん……って、えっ? あ、い、委員長……」
俺が頭を抱えながらうんうんと唸っていると、その時委員長がキョトンとした表情で俺の所にやってきた。
「い、いや、まぁその、なんというか、そのー……」
委員長にそう尋ねられた俺はちょっとだけしどろもどろになりなっていった。すると委員長はそんな俺の様子を見てすぐに……。
「ふふ。大丈夫だよ。君の困ってる事なんて予想はついているから。班が作れなくて困っているんでしょ? それなら私が君と一緒に組んであげるよ」
「えっ? い、いいのか? でも委員長だって一緒に組もうって友達に誘われたりしてるんじゃないのか?」
「そんな事は気にしなくて大丈夫だよ。まぁ他の子からも誘われたけど、でも大神君だって私の友達だからね。だからそんな遠慮なんてしないで私と一緒にクッキー作りをしようよ?」
「委員長……あぁ、わかったよ。それじゃあその……是非ともよろしく頼むよ」
「うん。よろしくね。それじゃあ残りの一人を探すとしようか。早く班を決めてクッキーを作る作業に入らないと時間切れになっちゃうかもしれないしね」
「そうだな。それじゃあさっさと余ってる生徒を探して調理実習を始めていかなきゃだな」
「……ねぇ。ちょっと良い?」
「ん?」
「え?」
その時、ふいに俺達に声をかけてくる女子生徒がいた。それはスクールカースト最上位の美人ギャルである前島だった。
「あぁ、前島か。お疲れさん」
「お疲れ様、前島さん。どうしたのかな? 私達に用事かな?」
「お疲れ様委員長。それと大神も。今の委員長達の班って二人組よね? 最後の一人はもう決まってるの?」
「いや、まだ決まってないよ。まだ班が決まってない子を今から探そうって話をしてた所なんだよ」
「そっか。それなら私が入ってあげるわよ」
「え……えっ!?」
「えっ! 良いのかい? それは助かるよ!」
前島は俺達の班に入ると言ってきてくれた。でもそんな事を言ってきてくれるなんて思わなくてちょっとビックリとしてしまった。
「い、いや、でも良いのか? 前島っていつも仲良くしてるグループあるじゃん? そっちに参加しなくても良いのかよ?」
「問題無いわよ。私達のグループは四人組だから一人余るのが確定してるから。それに委員長が班の人探しに困ってそうだったから、委員長を手伝ってくるって言ってこっちに来たのよ。それで彼女達はすぐに納得してくれたから何も問題無いわ」
「え? あ、あぁ、なるほど……」
そう言われてから前島の友達グループの方に視線を送ってみた。するとギロっと俺を睨みつけていた。どう見てもこれってあれだ。俺を敵対視してる感じの視線だ。
(まぁでもそう見られるのも仕方ないか)
委員長はクラス中から好かれてる存在の人物だ。そして俺はクラス中からかなり嫌われている存在の人間だ。
だから前島が“助けに行く”って言ったら、それは“委員長をキモオタから助ける
困ってる委員長をキモオタから助ける”という意味にしか聞こえないからな。そんなの喜んで前島を送り出すに決まってる。
そしてそんな俺達を見ながらヒソヒソ話をし始めるヤツらも出てきた。まぁ不登校気味の男子、優しい委員長、スクールカースト最上位のギャルっていう異色すぎる組み合わせだから訝しげに見られるのも当たり前だよな。
―― ヒソヒソ……ヒソヒソ……
「あの引きこもりキモオタ……なんか最近ずっと委員長につきまとってねぇか?」
「確かに確かに。アイツもしかして委員長に気があるんじゃ?」
「うげぇっ……マジかよ。キモオタのクセに委員長にちょっかいかけるとか生意気過ぎるだろ」
「きっと委員長が優しい女の子だから、あのキモオタ調子に乗ってるんだろ。マジでキメェわ……」
「でも前島さんがしっかりとキモオタをガードしてくれてるようだし、あれなら大丈夫だろ。あのキモオタが変な事したらすぐに前島さんが止めるだろうしな」
「そうだな。キモオタが悪い事しだしたらすぐに前島さんが締め上げてくれるだろうし安心だな。まぁでも委員長に何かしたらマジでただじゃおかねぇけどな……」
そんな怨嗟のヒソヒソ話も聞こえてきた。委員長が皆から好かれているのは前々から分かっていたけど、逆に俺ってこんなにも嫌われてたんだな、はぁ……。
「うん? どうしたんだい? 大神君?」
「いや、何でもないよ。とりあえず無事に班が決まって良かったって思ってるだけだ。二人とも班を組んでくれてありがとな」
俺は委員長にキョトンとした表情でそう尋ねられた。委員長は今のヒソヒソ話は聞こえてなかったようだ。それなら俺はそのまま誤魔化してそう言った。
まぁ俺が嫌われているのは前々から分かっていた事だし、今更そんなの気にしてもしょうがない。
そしてせっかく委員長と前島が一緒に組んでくれるって言ってんだから、ここは厚意に甘えて一緒にやって貰う事にしよう。
「ふふ、別に感謝なんてしなくて良いよ。よし、それじゃあ班も無事に決まった事だしさっさとクッキー作りを始めていこうか。それじゃあ改めてよろしくね、大神君、前島さん!」
「ん。よろしく」
「あぁ、よろしく頼むよ」
こうしてそれから俺達は早速クッキー作りに取り掛かっていった。




