15話:新しい問題が発生する
前島と夜に初めての電話をしてからさらに数日が経った。
ようやく顔の腫れが引き、青あざも無くなったので湿布やテープ剤を全て取る事が出来た。傷の跡とか後遺症みたいなのは何も無くて本当に良かった。
そんなわけで怪我が無事に治ったので、これから楽しい学園生活を謳歌していく事を目標に頑張っていくぞ! ……と、思った矢先に、俺には新たな問題が発生していた……。
―― キーンコーンカーンコーン♪
「おっと。チャイムが鳴ったな。それじゃあ今日の授業はここまで。日直号令ー」
「きりーつ、礼ー」
「「「ありがとうございましたー」」」
「お疲れさん。今日授業で解いていった応用問題は必ず期末試験に出題するからな。だから家に帰ったらしっかりと予習復習をしとけよ。それじゃあなー」
―― スタスタスタッ……!
数学の授業終わり。数学教師はそんな“恐ろしい単語”を口にして教室から出ていった。そして本日の授業はこれで全て終わりなので、ここからは楽しい放課後が始まる。
だから教室に居た生徒達は各々帰る準備を始めていったり、部活に向かう準備をしていた。
そんな中、俺は教室で何をしているのかというと、俺は自分の席に座ったまま頭を抱えていた……。
何故俺が頭を抱えているかなんて、そんなのはもちろん……。
「や、やべぇ……授業についていけねぇ……」
頭を抱えてた理由はもちろん今日の授業が全然理解出来なかったからだ。そしてそんな状態で“期末試験”なんて恐ろしい言葉を口にされちまったらゾッとするに決まってる。
そもそも俺が高校に通ってたのは13年も前なんだよ。だから高校の授業内容なんてほぼ全部覚えてる訳がないんだよ。こんな状態で試験を受けるって怖すぎるって……。
まぁでも俺は全教科の授業で困っている訳ではない。英語は仕事で使う場面も多かったし、英検を取るために社会人になってから必死に勉強してた。だから高校の英語くらいなら問題はないと思う。
あとは歴史とか現代文とか古文とかの暗記科目に関しても、無理やり頭に詰め込んでいけばいけると思う。テスト期間中だけ覚えておくだけなら俺でも出来るはずだ。
だけど問題は今言った科目以外のいわゆる理系科目だ。あんなの暗記するだけで何とかなる科目じゃねぇからな……。
「やばい……さっきの数学の授業とかマジで意味わからなかったぞ……微分とか積分とかやり方全部忘れてるし……ってかなんだよ部分分数分解って……新手の呪文かよ……」
俺は頭を抱えながらそんな事を小さく呟いていった……。
高校時代のほぼ引きこもり状態だった俺でもギリギリの基礎力はあったから、それで何とか毎回赤点を免れてギリギリ進級していった記憶はあるんだけど……でも今の俺にはそんなギリギリの基礎力すら残っていないんだ。
そんな高校数学の基礎を全て忘れてしまっている状態で中間試験とか期末試験を乗り切れる気が全くしない。しかも理系科目は数学だけじゃなく、物理とか化学とかもあるわけで……。
「ど、どうしよう。このままだと次のテストで赤点を取っちゃうんじゃないか? そうなったら俺、進級出来ないぞ……」
「あれ? どうしたんだい大神君? 頭を抱えているようだけど、何か問題でも発生したのかな?」
「えっ? って、あ、あぁ、委員長か。お疲れっす……」
そんな感じで俺は頭を抱えながら思いっきり悩んでいると、委員長が俺の元にやってきた。
「うん。お疲れ様。それでどうしたんだい? 何か問題でもあったのかな?」
「あ、あぁ、いや、実はその……今日の最後の授業って数学だったじゃん? それで今日は結構難問を解かされたよな?」
「うん、そうだね。今日はかなり難しい問題を沢山やらされたね。中々に歯ごたえのある問題ばかりだったよね」
「そ、そうだな。で、でもさ、俺……今ままで引きこもってたせいもあって……正直今日やった数学の問題が全然わからなかったんだ……」
「あぁ、なるほど。確かに今日の問題は応用ばっかりで難しかったもんね。でもそういう悩み事なら……うん、そういう事なら私が力になれそうだね。それじゃあ良かったら大神君がわからなかった問題を私が解説してあげようか?」
「……え? 委員長が俺に解説を? い、いや、そんな事はしなくて大丈夫だよ。俺に解説をしてあげるって言っても、そもそも俺は数学の基礎すら忘れちゃってるんだよ。そんな俺に解説しようとしたらめっちゃ時間を取られちゃうだろうし、流石にそれは申し訳ないから遠慮しておくよ……」
「いやいや。そんなの気にしなくて大丈夫だよ。だってそもそも私はねぇ……ふふん、実は勉強するのが凄く大好きなんだよ! だから問題の解説とか教えてあげるのも凄く好きなんだ。だから大神君は遠慮なんてしなくて全然大丈夫だよ」
「えっ? 勉強が大好きな学生なんてこの世の中にいるのか? ちなみになんだけど、委員長ってテストの成績とかいつもどれくらいなんだ?」
「うーん、まぁそれなりに良い成績は取っているよ。全国模試ならいつも二桁の順位は取ってるしね」
「せ、全国模試で二桁!? な、何それヤバすぎるだろ!?」
委員長の全国模試の順位を聞いて俺は大きくのけ反っていった。見た目からして勉強出来そうだとは思ってたけど、想像の遥か上をいく凄さだった。
「ふふ。それほどでもないよ。まぁでもこれで私が勉強が大好きなのは本当だと理解して貰えたでしょ? あ、それにほら、私としても大神君に勉強を教えてあげる事で、自分自身の復習にも繋がるからとっても有難いんだよ? だからどうかな? もし今日の放課後暇なようなら、私の反復学習に付き合って貰えないかな? 私を復習勉強を助けるつもりで是非ともお願い出来ないかな?」
「委員長……あぁ、わかったよ。それじゃあ委員長の言葉に甘えさせて貰うよ。という事で早速なんだけど、さっき授業中に出題されたこの問題が全然わからなかったんだけど……」
「うん。わかった。それじゃあちょっと隣の席に座らせて貰うね。えぇっと、どれどれ……あぁ、これはね、この公式を使うとね……」
という事でそれからすぐに、俺は委員長に先ほどの授業でわからなかった問題の解き方を教えて貰い始めた。
それにしても委員長は最終的に『私の反復学習に付き合って欲しい』という感じで逆にお願いしてきてくれたんだけど、でもこれって多分だけどさ……。
(きっと委員長は俺のためにそう言ってくれたんだろうな)
俺は委員長との付き合いはまだ数週間しかないけど、でも委員長の優しさはもう既に十分伝わってきている。委員長は本当に誰よりも優しい女の子なんだ。
だからさっきも俺が申し訳ないと思って委員長の提案を断らないようにするために、むしろ逆に委員長は『私の反復学習に付き合って欲しい』という形で俺にお願いしてきてくれたんだろうな。
前々から思ってたけど、この女の子はちょっと聖人君主過ぎるよなぁ。




