14話:夜に前島と電話をしていく
その日の夜。
「うわぁ、懐かしいなこのテレビCM……あっ、このドラマってこの時代にもやってたんだ。今の時代もまだ続いてるし、凄い人気作だったんだなぁ……って、うん?」
―― ピコンッ♪
俺は昔のテレビ番組を見ながら懐かしい気持ちに浸っていると、テーブルに置いてたスマホが鳴り出した。LIMEの通知音だ。
「LIMEのメッセージなんて誰からだろう? って、前島からじゃん」
スマホを手に持って電源をオンにすると、LIMEメッセージの宛名が表示された。そこには“香織”と書かれていた。つまり前島の事だ。
なので俺はすぐに前島からのメッセージを確認するためにLIMEアプリを開いていった。すると……。
『今から電話しても良い?』
「……えっ?」
前島からのメッセージはその一言だけだった。
まさか今日LIMEの連絡先を交換したばかりなのに、夜になってすぐにメッセージが飛んでくるとは思わなかった。しかもメッセージ内容は電話をしても良いかの確認だった。
「で、電話したいって、一体何を俺に言うつもりなんだろ?」
俺はそのメッセージを見て少しだけ狼狽えながらそう呟いた。
だってスクールカースト最上位のギャルから急に電話を要求されたら、誰だってビックリして今の俺みたいに狼狽えるに決まってるはずだ。
でもこのまま前島のメッセージを既読スルーしたままだと、心証が悪くなると思ったので俺はすぐに返事を送った。
『良いよ』
俺は急いでそう一言だけ返していった。
―― プルルッ♪
するとそれからすぐにスマホの着信音が鳴り出した。前島からだ。俺はすぐに通話開始のボタンを押して通話を始めていった。
『もしもし? えっと、大神……君の電話で大丈夫ですか?』
「そうだよ。お疲れさん。前島」
『あぁ。良かった。お疲れ様。それと急に電話をしちゃってごめん』
「全然良いけど。どうせ暇だったし。でもこんな夜に電話したいってどうしたんだ?」
『いや、まぁ何というかさ、改めてあの時助けてくれた事の感謝を伝えようと思ってね。教室の中だとアンタと話す機会全然無いし。という事で改めてあの時は助けてくれてありがとう』
「なんだその事か。そんなの気にしなくて良いのに。あ、そうだ。ちょっと気になってたんだけど、あれから元カレには絡まれたりしてないか?」
『うん。それは大丈夫。アイツもヤバい動画を撮られてるっていう事を自覚してるだろうし、流石にもうあっちから絡んでくる事はないわよ。曲がりなりにもアイツは頭良い大学に通ってるんだし、そこら辺の思慮分別は出来るはずでしょ』
「そっか。それなら良かった」
という事で元カレにはあれ以来絡まれていないようだ。それなら良かった。
『うん。それでアンタにはその事で沢山迷惑をかけちゃったし、それに怪我も負わせちゃって本当にごめんなさいね』
「そんなの大丈夫だから気にしなくていいって。でもそんな事を電話でしっかりと言ってきてくれるなんて、前島って凄く律儀な女子なんだな」
『は、はぁ? 何よそれ? もしかして意外だと思ってるの? 私みたいな女はお礼を言ったり謝ったりしないと思ってたって事?』
「いや、別にそういう訳じゃないけど……でも、そもそも俺、前島の事そこまで知らないんだよ。ほら、俺は今まであんまり学校に来てなかっただろ。だから前島がどんな女子かなんて正直そんなに知らないんだよ」
『……なるほど。それはそうよね。私もアンタの事は全然知らないし、アンタだって私の事は全然知らないに決まってるわよね。よし。それじゃあさ、せっかく同じクラスメイトなんだから、これからお互いの事をちゃんと知っていきましょう。って事で今日はアンタの事を教えてよ』
「お、俺の事を教えてって……まぁ、別に良いんだけど、ちょっとザックリとし過ぎじゃないか? 俺の事って具体的に何を話せばいいんだ?」
『別に何でも良いわよ。それじゃあ今は何してたの?』
「今はテレビを付けてドラマをながら見してる所だ」
『へぇ、アンタってドラマとか見たりするんだ? というか私もドラマ見てる所よ。多分同じドラマを見てるのよね。ってかアンタがドラマを見たりするなんて意外ね』
「まぁ先週の話は見てないから何となく雰囲気で見てるだけだけどな。それとこのドラマに出てる新人の女優さんが結構好きなんだ。だからついついその女優さんを目で追っちゃってるんだよ」
今俺が見てるドラマに出演している新人女優は、13年後の世界ではトップ女優になっているんだ。演技も良いしビジュアルも綺麗で皆から愛される国民的人気女優になるんだ。
『ほうほう。新人女優の川瀬里奈ね。ふぅん、アンタってこういう女子が好きなんだ?』
「なんだよ、悪いか? めっちゃ可愛くて演技も凄く上手い女優さんじゃんか」
『ふふ、別に悪くないわよ。私も川瀬里奈は可愛いし好きだしね。でもアンタの口から好きな女優さんの名前が出てくるなんて思わなかったからビックリしたってだけよ。ドラマの話も付いてこれるし、俳優の名前も出せるし……何だかアンタって意外と普通な人間なのね」
「は、はぁ? 意外と普通の人間って……あ、そっか。なるほどな」
そういや忘れてたけど、俺ってクラスの皆からは引きこもりのキモオタって思われてるんだよな……。
そしてそんな引きこもりのキモオタだと思ってたヤツがドラマとか俳優とかの話題に普通に付いてこれたから、前島はビックリとしたって感じかな。
まぁでも確かに13年前の俺だったらそんな話題には全く付いていけなかっただろうな。だってあの頃の俺はクラスメイト達が思ってた通り、ほぼ引きこもり状態だったからな。
だから当時の俺は世間で流行ってるものなんて全然知らなかったし、興味も全然なかった。テレビドラマとかも全然興味が無くて一度も見た事がなかった。俳優の名前だって一人も知らなかったんだ。
まぁでも流石に引きこもりを卒業して社会人になってからは、そういう世間の流行りとか話題に関してはちゃんと調べるようにしてたし、引きこもり時代には全く興味が無かったドラマとかアニメとか映画とかも今では物凄く大好きになっていた。
休みの日にはサブスクの動画配信アプリを使って、一日中ドラマとかアニメとか見てたりしてたしなぁ。
だから俺は今みたいなドラマの話とか俳優の話とかするのは実は結構好きな方なんだ。そして今前島とそんな話をしていると……。
(なんだか前島の声が物凄く楽しそうな感じに聞こえるんだけど、もしかして……)
「それにしても……もしかして前島ってドラマ見るのって好きなのか?」
『えぇ、大好きよ。テレビドラマはしょっちゅう見てるわ。恋愛ものでもコメディでもミステリーでも学園ものでも……どんなジャンルでも見てるわよ。そんでテレビドラマの録画をしょっちゅうしたくなっちゃうから、家のテレビに繋げてるHDDがすぐに一杯になっちゃってもういつも大変なのよ』
「へぇ、HDDがすぐに一杯になるって凄い量を録画してるんだな。それはドラマの知識とかも凄そうだな。あ、そうだ。それじゃあさ、前島の見てきたドラマでオススメの作品とかないかな? もしあるようなら俺に教えてくれないか?」
『え? 私のオススメを? もしかしてアンタ見るの?』
「もちろん。バイトとか部活やってなくて暇な時多いし、何か面白いドラマとかあったら見たいなって思ってさ。だから俺にオススメ出来そうなのあったら教えてくれよ」
『なるほどね。ふふ、そういう事ならもちろん良いわよ。それじゃあアンタにオススメ出来そうなドラマを紹介してあげるわね。えっと、そうねぇ……あ、そうだ。それじゃあさ……」
という事でそれから俺は前島にオススメのドラマを何本か教わっていき、そしてその後も俺達はドラマの話や俳優さんの話で大きく盛り上がっていった。




