12話:そして翌日……
それから翌日の朝。
俺はいつも通り学校にやって来た。そして上履きに履き替えてさっさと自分の教室に向かっていった。
―― ガラガラッ……!
「え、マジで? お前もうそのボス倒したのかよ。あはは、それは凄いなぁ……って、ひ、ひえっ!?」
「あはは。そうなんだよ。もうボス倒すためにめっちゃ課金しちまったよ……って、どうしたんだ? 廊下の方を見て……って、うわぁっ!?」
「ん? なんだ……って、わ、わわっ……!」
「ひ、ひえっ……な、なんだよアイツっ……!」
―― ざわざわ、ざわざわっ!
教室のドアをガラガラっと開けて中に入っていくと、教室の中にいたクラスメイト達は俺の顔を見てどよめきが走った。
まぁそりゃそうだ。だって俺の顔にはあちこちに大量の湿布やテープ剤が貼られているんだ。昨日家に帰った時までは全然大丈夫だったんだけど、でも時間が経つにつれて俺の顔がどんどんと腫れていってしまったんだ。青あざも大量に出来ちゃっていた。
だからそんな顔の怪我や腫れを抑えるためにも、今日は顔中に湿布やテープ剤を貼りまくって学校に登校したという訳だ。そしてそんな顔面湿布だらけの男が教室に入って来たら、そんなのどよめきが走るに決まっているよな。
流石にこんなボロボロな状態で注目を浴びるのは嫌なので、俺はコソコソとしながらさっさと自分の席に移動して座っていった。
そして自分の席に着席していくと、それからすぐに俺に声をかけてくる生徒が現れた。
「やぁ、おはよう、大神君。何だか今日はえらく男前になっているようだね?」
「うん? って、委員長か。おはよう。まぁイメチェンってやつさ。どうだよ? 今日の俺はカッコ良くなってるか?」
「はは、君は意外に冗談もいける口なのかい? まぁそんな軽口を叩けるようなら深刻な怪我という訳ではなさそうだね」
「あぁ、そうだな。まぁ多少痛みはあるけど、でも全然深刻な怪我じゃないからそんな気にしなくて大丈夫だよ」
という事で俺に声をかけて来てくれたのは委員長の藤咲だった。
クラスメイトが皆遠巻きに俺の顔を見ながらコソコソと喋っているのに、委員長だけは率先して俺に近づいてきてくれて怪我について尋ねてきてくれた。
「そっかそっか。それなら安心したよ。まぁ急に大神君が顔中傷だらけになった理由はよくわからないけど、でも何か困った事があったらいつでも言いなよ? 学級委員長である私がいつでも力を貸してあげるからさ」
「あぁ、そう言ってくれると助かるよ。いつも気に掛けてくれてありがとな、委員長」
「ふふ、それが学級委員長の役目なんだから気にしなくて良いよ。……って、おっと?」
「ん? 今度はどうした委員長? ……って、あっ」
「……」
委員長とそんなやり取をしていると、委員長は急に俺の後ろを見ながら何かを見つけたような声を出してきた。
俺もすぐに後ろを振り返ってみると……そこにはなんとスクールカースト最上位の美人ギャルである前島さんが立っていた。
どうやら前島さんも今登校してきたようで、肩には学生鞄をかけられていた。
「やぁ、おはよう。前島さん」
「えぇ、おはよう、委員長」
そんな前島さんに向かって、委員長はいつも通り朗らかな笑みを浮かべながら朝の挨拶をしていった。
そして前島さんも同じく委員長に向かって朝の挨拶を返していった。そしてさらに……。
「……アンタ、その傷は大丈夫なの?」
「……え? お、俺?」
そしてさらに前島さんは俺の顔をじっと見ながらそんな事を尋ねてきた。
でも前島さんが俺に声をかけてくるなんて思わなかったので、ちょっとだけ間の抜けた返事をしてしまった。
「……何よ。その間の抜けた返事は? アンタ以外に怪我してるヤツいないでしょ?」
「あ、あぁ、確かにそうだよな。まぁ怪我は全然大丈夫だよ。一日経って腫れてきたから湿布を貼ってるだけで、痛みとかは大してないから気にしなくて良いよ」
「そう。それなら良かったわ。あぁ、それとさ……おはよ。大神」
「えっ? あ、あぁ、うん。おはよう、前島さん」
「……ほほう?」
前島さんは俺に朝の挨拶をしてから、自分の席に鞄を置いていった。そしてそれからすぐに……。
「あ、香織ー。おはよー! 昨日のドラマ見たー?」
「ねぇねぇ、香織ー! 良かったらこっちに来て昨日のドラマの感想語り合おうよー!」
「おはよう、麻弥、佐倉。うん、昨日のドラマ見たよ。それじゃあ今からそっちに行くわね。そういえば昨日は佐倉の大好きな俳優が……」
―― スタスタッ……
前島さんはスクールカースト上位の女子達に呼ばれたので、そっちの方に移動していった。そしてすぐに前島さん達は楽しそうに話を始めていった。
(……ま、いつも通りの前島さんのようで良かったな)
昨日は色々と酷い目に遭いかけてしまったから、多少メンタルにショックとか受けていてもおかしくないと思ったんだけど、でも今日の前島さんはいつも通りの感じに見えた。俺はその姿を見てホッと安堵した。
「……ふふ。何だか大神君はいつの間にか前島さんと仲良くなったようだね?」
「……うん?」
するとその時、急に委員長は笑みを浮かべながら俺に向かってそんな事を言ってきた。俺と前島さんが仲良くなっただって?
「いや、別に前島さんとそんな仲良くなったという事はないと思うんだけど……でも何で急に委員長はそんな風に思ったんだ?」
「だって君達は朝の挨拶を交わしていったよね? 朝に挨拶を交わし合うというのは、仲が良い証拠だと言っても良いんじゃないかな?」
「えっ? いや、朝の挨拶なんて社会人やってりゃ誰だってする事じゃ……って、いや、違うよな……この時代の俺は朝の挨拶なんて誰にもしてなかったよな……はぁ……」
「うん? どうしたんだい? 何だか急にガクリと項垂れてしまっているようだけど、もしかして顔の怪我が痛み出したのかい?」
「いや、違うよ……まぁ何というか、今までの自分の事を思い返して、ちょっと反省してるんだよ。はぁ、こんなんじゃ友達を作るなんて夢はまだまだ先になりそうだよなぁ……」
「友達を作る? ふふ、何を言ってるんだい、大神君? 君の友達ならさ……今君の目の前にちゃんといるじゃないか?」
「え……って、あっ」
そう言って委員長は俺に向かって優しく微笑みかけてきてくれた。その笑みはとても柔和で優しい笑みだった。俺はその優しい笑みを見て……。
「……うん? きょとんとした顔をしてどうしたのかな? まさかあんなにも三国志の話で盛り上がったというのに……もしかして大神君は私の事を友達だと認識してなかったのかな? それはあまりにも私が可哀そうじゃないかな?」
「……はは、いや、ごめん。そうだよな。あんなに楽しく話をしたんだから……そりゃあ俺達は友達だよな。ありがとう、委員長。そう言ってくれて本当に嬉しいよ」
俺は初めて言われた“友達”という言葉を聞いて心がポカポカと温かくなっていった。友達だと認めて貰えるのがこんなにも嬉しいなんて知らなかった。本当に嬉しい気持ちでいっぱいだ。
「うん。まぁ何だかよくわからないけど……ふふ、大神君が喜んでくれるのなら私も嬉しく思うよ」
「あぁ、本当にありがとう。そして委員長のおかげで改めて決心がついたよ。過去の事を色々と思い出してクヨクヨするのはもう止めにして……それで今度こそ楽しい学園生活を過ごしてみせるよ!」
「そっかそっか。うん、それは良い目標だね。それじゃあこれから楽しい学園生活を送れるように頑張っていってね。私も応援しているよ」
「あぁ、ありがとう、委員長!」
という事で俺は改めてそんな目標を立てていった。そして委員長から激励の言葉を貰っていった。
高校時代にタイムスリップしてきたというのに、今はまだ高校生活を全然謳歌出来ていない残念な状態なんだけど……まぁでもこれから高校生活を謳歌出来るように全力で頑張っていこう!
【第一章:高校時代にタイムスリップをする編 終】
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