第43話『Cradle of fading soul(命の在処)』 A Part
互いの全身全霊──。
扉の候補者としての矜持ぶつけ合った兄弟の苛烈極まった対峙。
弟・ローダ・ファルムーンは、ガロウ・チュウマの必殺剣を模倣、己の手足でそれらを具現化成し得た。
一方、ルイス・ファルムーン。
300年もの時を糧に能力者たちの意識毎を能力を奪い尽くし、その力を纏め上げた。
そしてヴァロウズ4番目、フォウ・クワットロが惜しみなく彼を受け容れ器へ転じた愛。
ルイス自身も惜し気なく注ぎ込み続けた愛の証──。
偽りなき意志認め重ねり、鍵は機能へ馳せた。ルイスの扉拓かれた証、それは弟の赤き必殺を拾い上げた体現。赤と紅交えた情熱衝突した炎、兄弟を候補者と認めた刻印に命を薪へ変え大いに燃え盛った。
「グッ!」
「う、うぅ……」
両者一歩も退かぬ血み泥の争い──。
片足無くしたルイス、悔やみ滲んだ顔隠さず、その場に立てない己の弱さを呪う。
ルシアから風の精霊集めた翼受領したローダさえも遂に羽根潰えた。
ルイスはレイの放った銃弾の雨を全身に受け、然も弟へ差し出し左足首失った満身創痍。
ローダの方は一見無傷、されどRaviNeroから続いた連戦が蓄えた疲労。
そして何より己の体力を越えてなお成長し続ける呪縛が彼の全身を蝕んでいた。
互いの意地、されど無謀と云う言葉だけで語り尽くせぬ焔嗟続けた二人。とうに越えていた限界の枠。揺るぎない力と意志、叩き付けた成れ果ての図式。
──ひ、光が…散って?
陽光照らす昼間の最中、哀れな両者から焚火の残り火的なものが散り往く様に気付いたフォウ。
琥珀色の瞳が追い縋る。燃えた苗床崩れた欠片にしては、僅かに煌びやか過ぎる金色、フォウの心捉えて離さぬ300年前の歴匂わせた。
「も、もぅ無理よッ! 二人共止めてぇッ!」
悲痛なるルシアの叫び──。
英傑? 扉? そんな塵は要らぬ愛込めた女性の優しみ。『男同士だ、割って入るな』云われた言葉、人間として約束破りたい衝動駆られた。
無理もなき話、初代現人神レヴァーラ・ガン・イルッゾのまるで生まれ変わり。そんな外敵ルヴァエルと全力出し切り戦い抜いた時点でこの兄弟、既に終わっていたのだ。
だが『それでも』と未だ闘争の火種、残響を形と成した影だけ飛ばし絡み合う二人の候補者。未だ命最後まで削り合う哀情欲する漢の残火か。
パンッ! パンッ!
此処で不意に水差す単発の銃声鳴り響いた。
ローダとルイスの耳元抜いた銃弾、降って湧いた異なる戦慄、鼓膜震わす。
「あの嬢ちゃんがもう止めろって言ってんだろ馬鹿か手前等!」
口調こそ研がれたナイフが如きレイの罵声。けれども彼女とて所詮、命育む資格持ち得た女性なのだ。
無駄に消え失せそうな命と愛の湧き水、『嬢ちゃん』に乗じ止めに入った女の本質だ。
ボッ!
「それとも俺様の可愛いLeythemend、最初の餌食。蜂の巣にしてやろうか? 俺はどちらでも構わないぜふふ……」
煙草を吹かし、冷徹な目線を利かん坊な兄弟二人を詰り送り付けたレイ愉悦の演技。語る迄なくこれは両者を現実へ引き戻す煽りに過ぎない。
レイは嘗て同僚との間に身籠った命を死産した哀しき過去を引き摺っている。似た顛末など御免被りたい本音を煙草の煙へ乗せた。
彼女が吼えた『俺が法』Leyは後付けの改名。
己が法を語る事で過去の償い果たすべく生きるのがレイの真情。自分の意志で法を問えば過ち犯しても背負うのも我独りな唯我独尊、それを形にしたのがLey-the-mendなのだ。
「フフッ……悔しいが君の云う通りだよレイ。役者が上手だね、僕も此処で失せる訳には往かない」
「ルイス様?」
女の肩へ縋り如何にか片足で地面に立つルイスの苦笑。
暗黒神の負け惜しみと判るフォウの驚き。同時に此れでこの争いから恋慕寄せる男を担ぎ出せる心の弾みを感じた。これを恥だと覚え、己を心音で罵倒した。
ドサッ!
「──ッ!?」
ルシア、蒼い瞳に飛び込んだローダ無言の事切れ。此方も声失う驚異の仕草。
前のめりに倒れ、土煙舞う視界。『嘘よ』と喉張らしたき全身の震え。目泳がせ、足虚ろい彼氏の元へ近寄る哀情。勝手に哀惜の涙湛え始める自分を必死に否定したい気持ち荒んだ。
初めてローダが狂戦士化して物言わぬ躰に為った折、愚かにも抱きかかえ天才司祭リイナの元へ無理矢理連れた強引の記憶浮かぶ。『触れたい』『抱き締めたい』胸痞えた辛み。
動かぬ恋人の上、触れたい衝動を如何にか堪え、両肘両膝を曲げ、重さ被せぬよう慎重に身を傾ける。
息遣いを感じるほどの距離へ五感を寄せたルシア──胸痞えた辛みが絶望成して押し寄せた。感じたかったもの、感じられなかった最悪。
ポタッ……ポタッ、ポタッ、ポタポタポタポタポタッ。
命漏らした涙雨、感ずるか不明なローダの顔へ『生きろ』心張り裂けんばかりに染み渡る。
涙溢れてローダの姿が虚像に感ずるルシアの失望、永遠の愛誓い合った彼が徐々に遠ざかる嫌な感覚膨らむのを収め切れない。
「い、嫌……嫌よ。絶対に嫌。此処に居るアナタはどうするのよ……」
「なっ?」
ルシア、命の器辺りを擦りて首振り涙散らし尽くす必死の訴え。泣きじゃくり、子供の様にごねる悲しみ。
耳に届いたルイス、細い目見張り往く様。鍵の女性、気に掛かる含み。魂揺さ振れらた痛み感じた。
「いやぁぁぁぁぁッ!! アァァァァァッ!!」
最早辛抱諦めたルシアの泣き叫ぶ絶叫、世界中の最先端技術集め尽くしたFortezaへ虚しく響く。
冷たくなり掛けた彼氏の躰──全身全霊、己の命注ぎ込みたい号泣。魂込め、全力で抱き締めた。




