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第42話『Resistance(叛逆の風)』 B part

 流された英雄(ヒーロー)ローダ・ファルムーン──。

 兄ルイス(マーダ)突如(とつじょ)向けた殺意の形。


 2人の男共が命のやり取り始めたのをこれ見よがしに、『これぞ幸いなる切欠(きっかけ)』と乗じて鍵の女性へ親父面した気分を送り込んだ白髪の老人。だがルシアは決して(くじ)けたりしなかった。


 寧ろ(むしろ)叛逆(はんぎゃく)の言葉を老人へ吐き付けたルシアの強烈な意識の渦。渇いた老人の脳裏(のうり)取り巻いたのは、嘗て(かつて)自ら築き上げた器からの拒絶(きょぜつ)だった。


『し、然し……!』


「彼こそ貴方が望んだ到達点! 判り合おうと努力するからこそ人は(きら)めくッ! だから私は審判(見定め)を捨て彼を選んだッ!」


 ルシア発する声の断罪──。

 自ら創造し、役目を与えた老人が次第に()()()()裁き受ける。皆の知らぬ間に娘が淀み(よどみ)へ沈めた澱伐(天罰)、地上を濡らす泥沼(どろぬま)に等しき男の堕落(だらく)


「私──ルシア・ロットレンは、彼の鍵であるのを諦めないッ! ()()()()()()()()()()が負わせた役目じゃないの……彼に降り掛かる災厄(さいやく)を共に切り拓く()でありたいッ!!」


 ブツンッ!


 ルシア、恐らく最初で最後なる断絶の刻(反抗期)──。

 自らのこめかみ辺りを指で(つぶ)した()()の証。彼女は争いの後、ローダがザラレノ・ウィニゲスタから刺された傀儡(かいらい)の針──これも抜き取る決別みせるに違いなかろう。


 ──き、切りおった!?


 白髪の老人──鍵が語った通り、ルイス(マーダ)側に与したサイガン(おきな)


 未だフォルデノ城、王の間から高見の見物洒落込(しゃれこ)みながら娘を造った親の威厳(いげん)を振り翳し(かざし)、候補者ローダを想う憐れを紐解(ひもと)けば、娘が此方へ帰ると思い込んだ。身勝手なる父、造り手(ビルダー)驕り(押し付け)

 結果、最悪の形で事切られた。この必然を想像出来なかった愚者(ぐしゃ)、初老でなく歳老いた老人素のまま(たた)えた姿形。娘の意志を許容出来ずに狼狽え(うろたえ)床へ独り(くず)れた。


 少し闘争から脇道へ逸れた──。

 弟ローダVs兄ルイス、血の通った真剣勝負の行方(ゆくえ)に語り部を還す(かえす)。未だ降り止まぬ豪雨が兄弟の悲愴(ひそう)な争いの舞台へ泥を敢えて飾り付ける。


 両腕、両脚──すべからず滾る(たぎる)赤へ転じて嵐の如く()()に非ずな、命削る炎の舞繰り出すローダ相手に怯む(ひるむ)暗黒神。どちらが神か英雄なのか、論ずるのも馬鹿げたローダの凄烈(せいれつ)


 ──ローダ、お前それを続けて(からだ)がもつのか?


 生命の危機、(ひん)したルイス(マーダ)が弟の身を案じる程の焦燥(しょうそう)(にじ)んだ。


 もぅ、何度語ったか思い出せぬ漁村エドナでの初()なる争い、弟が狂戦士()()()あの(おり)、人の枠組み(くだ)いた所作(しょさ)。次こそ戻れぬ絶望の断崖(だんがい)、踏み込む危うさ感じた。


 ──がっ、僕は兄。弟が(たが)えた道を戻すのは僕以外在り得ない!


 ()(すき)見せるルイス(マーダ)覚悟の変遷(へんせん)。己が脚の動きを緩慢(かんまん)に落とす巧み(たくみ)


 弟が人類忘れた奇態(きたい)続ければ肉体の限界を越え、魂さえ砕ける(ふち)へと滑り落ちる危うさ。エドナ村での初戦に於いては寧ろ(むしろ)それを狙った。


 されど現状ルイス(マーダ)とて鍵の可能性秘めた黒き女を得たのだ。


 更なる躍進(やくしん)至るには同じ境遇(きょうぐう)只中(ただなか)漂う(ただよう)ローダを失う訳には往かぬ。神の座、放棄(ほうき)したルイス。弟の不測止める抵抗器(Resistance)演ずる決意固めた。


 英雄落とす供物(くもつ)して惜しげもなく投げ売ったルイスの左足首。

 見逃す道理なき情け落とした(破棄した)ローダの滾る(たぎる)右脚の()錬成(れんせい)対価(たいか)だ、持って行かねば世の理(よのことわり)均衡(きんこう)を歪める。


「グッ!」

「……」


 弟蹴り出す紅色の右脚に斬られたルイスの穢れた(不浄の)左、宙を舞い回りくねりて血飛沫(ちしぶき)散らす。遂に神童と(たた)えられた兄、超越果たしたかにみえた絵面。


 だが蹴り斬ったローダの右脚が斬り結ぶ相手失い輪廻(りんね)(とき)、忘却した最中、好機転じた教期(教え)──教鞭(きょうべん)受ける羽目に否応なく陥った(おちいった)


 斬り結びの永久不変から漸く(ようやく)(のが)れたルイス(マーダ)紅色の蜃気楼(レッド・ミラージュ)名称の具現化。赤い霧(ミラージュ)へ自らをすべからず沈めた逃亡果たす。


 独りよがりな陣地への帰還(きかん)果たしたルイス(マーダ)、蜃気楼を実体化させ英雄へ反撃の()突き立てる機会窺う(うかがう)。教鞭──弟へ教える(大剣)震える(振るえる)光明差した瞬間。


 ズダダッ! ズダダッ!


 絶望の鐘声(銃声)鳴り響く救済届かぬ教会、救い拒む(こばむ)螺旋(Möbius)再び訪れた。


「ぐぅッ!? な! ば、馬鹿な! 何故Leythemend(レイジメンド)が僕の霧中に!」


「ふぅ……」


 だいぶ忘れ去られた存在、銀髪のレイが空間転移で跳躍(ちょうやく)させた二丁拳銃(レイジメンド)。正に刹那に違わぬ()()霹靂(へいれき)。次の瞬間、持ち主の両手に帰還果たした相棒(愛人)達は、レイが(とも)した煙草が如き官能の余韻(吐息)、兵器共震わす。


 撃ち抜かれた不憫(ふびん)なるルイス(マーダ)──。

 新たな傷、よもやな追従(ついじゅう)受け、痛々しき流血以って直属の配下(ヴァロウズ)次点(底辺)、レイを糾弾(きゅうだん)した。


「ア"ッ!? 手前(テメェ)の赤い霧は異空間へ通じてんだろ? 同じなんだよ、ヴァロウズ10番手、レイ様の空間転移ん中、うろつかれたら乱れ撃つしかねぇんだよ」


 レイの煽りに暗黒神であったルイス(マーダ)愕然(がくぜん)の解式。方程式の解法──X(主人)Y(次点)()()虚無(ゼロ)導き出す巫山戯(ふざけ)に色失った。


「レイッ! 貴女裏切る気ィッ!」

「ハンッ! 俺様が(Ley)! 面白そうな方に付く! 最初(始め)からそういう契約なんだよ!」


 撃たれたルイス(マーダ)の肩代わり──。

 完全に暗黒神と肩並べた仕草でレイを叩く4番目超越したフォウの苦言。


 踏ん反り(ふんぞり)返ったレイ、悪びれた様子皆無で()()寄越(よこ)した女の視線、女らしき束縛の象徴。レイは一笑に付し、暴言で断ち消えにした。


 4番目(フォウ)10番目(レイ)睨み(にらみ)合う女同士。暗黒神の()を継いだフォウの魔導は無双。

 されど所詮(しょせん)詠唱在りきの術だ。空間転移で襲来するレイ呼び込む眷属(小銃)達は相性劣悪(れつあく)。援護する者なくしては抗えぬ悔み(くやみ)愛傾(あいかたむ)けた男護れなき苛立ち(いらだち)


 ルイス(マーダ)、手出し出来ぬフォウと裏切りのレイ。何れも頼れぬ崖っ淵(がけっぷち)


 そこへ無言の赤纏い(あかまとい)し男が追従(ついじゅう)の刃で迫る──。


 落ちた兄へ最早語る口持たぬ形相、ローダが兄弟の断絶思わす紅の四刃(かざ)した構え。

 ルシアが授けた風の翼で羽ばたき強襲。兄ルイスに対する裏切られた想いの怒号と愛するルシアを死守する誓い。それは判る──が、本気で兄を黄泉(よみ)送りする罪人へ自分を堕とす不可思議。


 ルイス・ファルムーン、嘗て(かつて)無き最大の危機、然も弟が運ぶ死神の鎌呼び込む戦慄(せんりつ)(ちまた)


 ヴァンッ!


「──フンッ!」

「なッ! そ、その()!」


 再逆転──螺旋の嵐、創造した風神が逆さ回し。()じた風がルイスへ与えた好機。

 ローダ、手刀から滾る拳へ瞬時転じた。闇堕ちした兄の目覚め促す赤の鉄拳を振るう。


 だがローダの滾る拳()()()のは何と大剣に非ず(あらず)、等しく燃え盛る炎の精霊(火の民)がルイスの左腕に乗り移ったが如き赤色(せきしょく)(かいな)で受け止めた。


 ローダから蹴り(対価)で斬られ、Leythemend(法の先導者)が散らし尽くした裁きの銃痕(じゅうこん)


 血塗れ、満身創痍(まんしんそうい)ルイス(マーダ)が降らせた血の雨浴びるローダ。(まみ)れた泥がドス黒い()へ転化した凄惨(せいさん)なる兄弟喧嘩、血の繋がり──同じ血で血を洗う哀れ。


「フフッ……これが候補者の()()()(さか)しいな」


 ローダが見様見真似で成し得たガロウ・チュウマの必殺剣『示現我狼(じげんがろう)

 命霞む(かすむ)最中、ルイスがみせた()()()()()()


 漸く(ようやく)冷笑へ返れたルイス、喜悦(きえつ)浮かべた血塗れ。

 フォウ・クワットロをルイス自ら『君を鍵へ昇華させる』と誓った言葉の具現、血の鏡像へ刻み返した。

 挿絵(By みてみん)

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