第40話『Divinity Unmasked(神格の戯れ)』 A Part
バルタバザルから送り込まれた死神が如きなるルヴァエル。弱冠16歳、未だ幼さ孕む様相にも関わらずResistance最強の一角。
ローダ・ファルムーンとルシア・ロットレンの英傑二人。増してや本来有り得ぬ援軍、ヴァロウズの空間転移使いであるレイの組合せ。彼等を立ち振舞いのみで圧倒しつつあった。
迂闊な観客、フォルテザ市民を瞬時虜にした上、爆弾錬成の対価と成した驚異。
ルヴァエルから感ずるレヴァーラ・ガン・イルッゾの面影色濃い仕草、300年前の屈辱彷彿したマーダはただ怯えていた。
「リディーナ……途轍もない存在を世に解き放ったものだ」
フォルデノ王国、玉座の間。
ルイスとフォウ、裏切りの学者ドゥーウェンが垂れ流す中継を共に視聴していた白髪の初老、サイガン・ロットレンが皺で潰れ掛けた目を見開く動転、乾いた声音が震えた。
リディーナ──人型アンドロイドのマーダを人間の女性へ先導した立役者。フォウの知らぬ名、ルイスがマーダの記憶を引き出せば理解出来る存在。
「──フォウよ」
「はっ」
暗黒神の御使いから横一列に並んだ恋人へ昇華成し得たフォウ、一瞬油断覚えた。呼ばれた怖色、恋人ルイスでもなければ、暗黒神へ完全に傾倒し尽くした何れにも在らず。混じった印象に緊張走る。
「レヴァーラは我に取って悄然の象徴──が」
名前からして暗闇を具現化した神、黒のジャケットが実に相応なる姿でフォウの背後へ音無しで忍び寄り肩を抱いた。漆黒羽織る形は外から乱入したルヴァエルにも劣らぬ。
「──?」
温かみ伝わる手を置かれ動揺隠せぬフォウ、この男は自分へ何を求めているのか気持ち手探る。
「だが怯え隠れるだけの見下げ果てた男をお前は望むか?」
──ッ!
ハッと息飲むフォウ新たなる目覚めの刻──。
自分は試されている、鍵としての資質を。
『僕が君を鍵へ昇華させる』
ルイス・ファルムーン愛の語りを思い出したフォウの神格。
これは決して逃ぐる事無く応じねばならない。敢えて肩払う従属の拒絶。暗黒神相手に真正面。背丈負ける黒の女が敢えて魅せる蔑み、男の手を取る。
「確かに……話になりませぬ、私の扉であるのなら」
己が使徒へ琥珀色の瞳開いた御告げ、空気震えた新鋭なる黒の女神生誕の宴。
ルイスが示す恭順の形。取られた手を恭しく握り返し手の甲へ口付け手向けた。
ヴァロウズ4番目の女がSarielへ堕天果たした図式。男を煽動する色艶溢れた大人の女。
「ふふっ……これで宜しいですかルイス様」
緩み切った笑顔へ返るフォウの戯れ、女神演じ切れた愉悦なるひと時。
「流石僕のフォウ、弟の後釜なのが気に入らないけど御陰で如何でも良くなった」
立ち上がり微笑み返すルイスがフォウの黒髪へ自分の指触れる手櫛。
瞬間、フォウの立ち絵が金色の得物携えた姿へ様変わりした。
「征こう、僕達があの外敵止める様──世界へ披露するんだ」
二番目が身勝手成した偽りの共同戦線。さらに世界の注目攫い尽くす預言、英傑二人の躍進。
捻れ切った黒き束、御自ら出向き、よもやな灰色へ転ずるべくいざ戦場へ。
◇◇
ルイス達が観ていた一部始終──。
映像の中へ場面を戻す。
「フフッ……。今日の訪問理由は試作機の実戦試験、云わば御披露目会に過ぎなかったのだけれど」
すっかり気圧された感の英傑達の不甲斐なさを尻目に冷たき微笑み流すルヴァエルの悦楽。
自分で『御披露目』などと言った割、フォルテザ市民を花火に仕立てた豪華絢爛。少女とは思えぬ──いや、或る意味子供らしき残虐なのやも知れぬ。
ズダダッ! ズダダダッ!
銃毎爆ぜるLeythemendの舞台選ばぬ弐銃奏、銃撃が激しきタンゴが如き足音共鳴させつつ、少女忘れた女神の足元。一挙、弾倉撃ち尽くした苛立ちの発砲。
「ガキが調子こいてんじゃねぇぞッ!」
恐らく一回りは年上のレイ怒りをそのまま転じた銃撃である。
「足場を崩すか、何とまあ涙ぐましい努力──ッ!?」
銃弾より速きルヴァエル驚異の飛翔、悪足掻きに思えてならぬ大先輩の努力嗤い飛ばすも、飛んだ自分の躰が突風に流された連携気付く。
天女ルシア──。
風の精霊に自らの躰運ばせ光の精霊帯びた拳を届けようと迫り征くルシア、即興の連携。
白い軽装がはためく危うさ──。
はらりと一瞬何かが見えそな視線に心掴まれた16歳乙女の不純。自分がこんな物に興味抱くなど見知らなかったルヴァエルの高鳴る動悸。
ルシア、拳では届かぬと咄嗟に知り抜き、手刀へ変えルヴァエルの肌晒した頬へ捧ぐ。
ルヴァエル想定外の風に依る捻れと輝き持ち得たルシアの白い指先が視界邪魔する血路呼び込む。遂に届いた手刀、少女の柔肌一枚だが漸く斬り裂いた。
──ッ!
たかが皮一枚、されど女神の顔を傷物にする雪辱晴らす。
未だ風に流されるルヴァエルの背後、最早情け無用へ転じたローダが蒼白い剣握り待ち構える。装甲なき肌見える背中狙い。
敵は怪異か得体知れぬ化物、少女の様相に因り僅か削られた戦意。本気で殺る決意、一挙攻勢が転じ始めた。
──暗転!
これ以上好きにはさせぬルヴァエルの不満、緑の瞳端に映るローダと自分の位置を反転。
街を襲撃する嫌われ者が、愛しき神へ転じた先程の暗転。何でも在りな理不尽思わす。
300年前同じ名称の異能、暗転の使い手は刃に映る事象を入れ替えた。これでは反転の意味合いが異なる。
ローダが待ち構えてた立ち位置へ、黒三つ編み揺れし、鉄の拳匂わす灰色を構えた。
ルシアが流した風に運ばれ成す術なき絶望にみえたローダの行先。
「──ッ!?」
ルヴァエルの拳、空を切る不発に沈む。
失せたローダの身体──空間転移、レイの御業はLeythemendだけへ作用するに非ずだ。思い込みとは空恐ろしきもの也。
ローダ、無事ルシア達の側へ無傷で帰還果たした。
闘争の語らい、これぞ刹那に相応しき血の駆引き。疾風へ転調、傾き走り出した。




