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第38話『Rebirth of the Obsidian Queen(復刻,漆黒の女神)』B Part

 壊れた()()──黒猫RaviNero(ラヴィネロ)から零れ(こぼれ)落ちた()()

 亡霊の様な少女ルヴァエル。落差ある異形(いぎょう)に思わず怯え(おびえ)感ずるローダとルシア。此処から真実の争い始まる劣悪(れつあく)を想像、気が削がれる思いに駆られた。


 ヴァロウズからの助っ人、二丁拳銃使いのレイだけは()()らしく片時なる味方の震えに銀髪の首を傾げた。


 一方、ヴァロウズ3番目の倭刀(わとう)使いトレノ。

 Resistance(民衆軍)の実質的リーダー格、髭面(ひげづら)の剣士ガロウ・チュウマが一騎討ちは激化の一途辿る伯仲(はくちゅう)


 両者一歩足りとも退かぬ剣戟(けんげき)、水滴る(したたる)トレノの刃。落ちた(しずく)がガロウの膝へと染み渡る()


「グッ!──熱か剣じゃ。じゃっどん(だけども)そげな(そんな)虚仮威し(こけおどし)。かえって血がたぐっど(滾るぞ)!」


 またしてもただの水滴に非ず(あらず)()混じる水がガロウの服毎肌溶かす(焼いた)痛々しき烙印(らくいん)刻む(きざむ)

 されど心地好き雨粒浴びた様なガロウの蛮勇(ばんゆう)硫酸(りゅうさん)さえ涼しき打ち水が如し(ごとし)顔つき。


「減らず口を……」


 腹立たしいトレノ、痛い脇腹(わきばら)を突かれた気分。

 この桜陽(旧日本)の侍『()に頼らず()()()成し得た小賢しき剣』と(あお)られた己の在り様。

 滾る(たぎる)刃のみ非ず──灼熱(しゃくねつ)抱えた二刀が滴り(したたり)落ち往く()自体を蒸発させんと盛り(さかり)()く。


 悔やむ気持ちを地面へ刻み(きざみ)間合いを開いたトレノ。


 得意の左斜め下段から刃と云うより流れる水そのものを振り上げ勇猛(ゆうもう)だと認めた剣士へ投げる(飛ばす)

 続けざま、上段下段と()()を絵に描いたトレノの変遷(へんせん)。彼の動き、岩肌すら削る川の渓流(けいりゅう)示すと共に白き流れの美しさを体現(たいげん)していた。


 ──へッ!


 ガロウ向けて襲い来る酸帯びた濁流(だくりゅう)。滝登り赦さぬ様相(ようそう)、津波の如し理不尽。

 さりとて髭面の笑顔(つい)えず。敵と同じく刃を下段に構え、討ち出すべく砂地踏み抜く。


示現我狼(じげんがろう)──『櫻道(おうどう)』!」


 トレノと等しく交わる剣ない立ち位置での下から降り抜いた刃。

 砂浜斬り裂き大地に眠る溶岩噴出させ、技名通りの赤き道を創造、トレノが拓いた水源流れる川の剣を見事相殺。陽から火への変遷(へんせん)


 トレノ、()()()()と云う全く以って人の御業(みわざ)と思えぬガロウの剣、僅かにたじろぐも、構わず同一の太刀筋(たちすじ)にて再び()()()飛び道具繰り出す。


 ──ッ?


 乱れた黒髪を少し傾げ(かしげ)ながらも先程と同じ櫻道(おうどう)で迎え討つべく逆袈裟懸け(けさがけ)。敵の倭刀(わとう)使いが効かぬと知りつつ同様の剣を捻り(ひねり)出したのに感じた違和感。


 ピキンッ! ピキピキッ!


「なッ! ウグッ!?」


 ガロウが斬り拓いた(開拓した)灼熱の道が蒼白く凍結。氷山へと再錬成されたではないか。驚きひん()いたガロウの視線、迂闊(うかつ)呼び込む。


 漁村エドナの波飛沫(なみしぶき)、氷の五寸釘へ転生。髭面の侍が視線奪われた最中、背中へ突き刺さる巫山戯(ふざけ)()()()()()


 硫酸がただの水分へ返りて氷の(つぶて)。一見凡庸(ぼんよう)なるトレノ、剣術の変遷(へんせん)。だがそれだけで終わらぬのが剣士の怒れた(イカレタ)矜持(きょうじ)なのだ。


「ハァッ!」


 やはりトレノは暮れても剣豪なのだ──。


 見る者の心さえ(こご)える氷山の錬成すら捨て石、見る間に凍結する溶岩の背後、己の身を忍ばせ一挙(いっきょ)間合いを詰め征く。そして沈黙(冷静)吐き捨て、気合込めた最上段からの一閃(いっせん)


 遂に牙剝く(きばむく)トレノ剣士の本懐(ほんかい)


 トレノ舞い踊る霜刃演儀(そうじんえんぎ)──。

 氷上の演舞(アイスダンス)思わす荘厳(そうごん)さと滑走の氷理一対(表裏一体)、美しさの裏側に秘めた()()()()


「むぅッ!」


 遂にガロウの笑み失せた戦慄(せんりつ)、凍り往く髭面。


 キンッ! 剣、交わる残響(ざんきょう)さえ凍り閉ざされた。


 とうに抜刀済だが()()()()()ガロウ護りに徹する剣。脇差(わきざし)握る手を咄嗟(とっさ)に捨て、()()(つか)を両手で掴み(つかみ)トレノ渾身(こんしん)の一撃と相まみえる。


 振り下ろす者、受けて立つ男。何れも眉顰(まゆひそ)めずいられぬ必然。


 トレノの迂闊(うかつ)、剣士の本能に従い正直に首級(クビ)を獲りに向かった真っ直ぐな剣。


 殺られる──!

 剣筋予測出来ているにも関わらず鋭き剣圧に背筋()()ガロウ。(つか)握る腕に走る痺れ(しびれ)、決死で(たましい)流し握力に頼れぬ分を補う(おぎなう)


 ダンッ!


 だがガロウ、尋常(じんじょう)じゃない剣の狂気呼び覚ます。

 剣狂一念(けんきょういちねん)──理を超えた一念(いちねん)の刃。


 全霊込め砂地踏み抜き、落した脇差宙を縦に転がる様。瞬時砂で創った(るい)、不覚にも怯む(ひるむ)トレノ。


 あろうことか剣士の命である大太刀落として脇差握り返す奇異(きい)なる剣。


 当人ですらこんな()()()()知らぬ。敵の好機を潰した直後、今こそ最高の機会(チャンス)。理屈で動いた訳に非ず、()られたら()り返すのが剣の本質。


 真逆絡み合う互いの剣気(殺気)、両者の剣舞(けんぶ)は千日手に及ぶのか?

 否──達人同士の真剣勝負、刹那(せつな)などという文学的美麗な言葉は似合わないのだ。


 ──『櫻打(おうだ)』!


 狙った訳でない、偶々(たまたま)逆手で握った脇差、拳毎燃え盛りながら刃と云うより漢の(哲学)叩き込むガロウの新術。『示現我狼』と技名発言する(とき)さえ惜しむ全力。


 ガロウ、四六時中(しろくじちゅう)()()()の拳がトレノ細身の(あご)(くだ)かんと今にも(かす)める一瞬。


 何処から両者の死闘を見物する剣神が犯す(おかす)悪戯(いたずら)

 エドナの波が荒れ狂い、闘争に水を()()。絶望的トレノへ()らされた蜘蛛の糸(剣神の意志)


 次なるはトレノの即興(そっきょう)、荒れ狂う波飛沫(なみしぶき)浴びた腕を凍らせた刀鍛冶(かたなかじ)

 脇差離さなかったガロウ、逆手に握った剣の刃と交わりし必然呼んだ。


 ガシャンッ!


「──グッ!」

「お、折れた!?」


 腕凍結させたトレノの新たな刃。

 偶然が産み落としたガロウの()剣。


 何れも折れる結末呼び込んだ。脇差とはいえ剣士の命折られたガロウと、等しく夢見の能力の全霊で回し剣化した腕()がれたトレノ。


 日本刀の精製は"超"が付く優秀な鍛冶師(かじし)、ドワーフ族でさえ(さじ)投げる代物。

 恐らくガロウの()()()為の剣は復活出来ない。


 一方トレノは片腕と剣士としての誇りこそ失われたものの、マーダが300年前から伝承(でんしょう)せしめし術式で再生叶う事であろう。されど重傷、現状このまま争い続ける訳には往かぬのだ。


 剣神は余程二人の剣舞をお気に()したか──この場は痛み分け、再戦を望んだ。

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