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第37話『Pride of the Blade(剣士の矜持)』 B Part

 示現(じげん)の流れを身勝手に組み込むガロウ・チュウマの滾る(たぎる)刃。

 対するは意志在るAIと自らの想いを具現化した()()()()で水滴り(したたり)落ちる()()倭刀(わとう)を振るうヴァロウズ第三の剣士トレノ。


 真っ直ぐな剣士と水で為した見た目と異なる羽根より軽い()剣振るうトレノ。

 同じ刀使いなれど、全く異なる剣と矜持(きょうじ)が絡み合いを始めた。


 両者微動に(一歩も)(ゆず)らぬ争い始めた裏──。


 アルベェラータ父娘、騎士ジェリドと司祭の少女リイナがフォルテザ市から漁村エドナへ帰投の道行く。ローダが二人へ預けた目的。


 22世紀初頭以来、歴史が止まりアスファルト()()()道。街道とは世辞にも言い難き荒れ果てた地面を踏みしめる。もう目指すエドナは間もなく……。


 ズサッ……。


「──むぅ」

「あ、貴女は!」


 脇から道へヌッと赤過ぎる女戦士が現れ二人の行方を阻む(はばむ)仁王(におう)立ち。迷彩柄(めいさいがら)のコートを『邪魔だ』とばかりに脱ぎ捨てた。


 赤い髪、女を捨てた感漂う(ただよう)適当なる切り捨て。

 右頬(みぎほお)に残る戦士の勲章(傷跡)、全身の各所に及ぶ。

 元フォルデノ王国聖騎士の長、ジェリドと比べても見劣り(みおとり)しない体格。

 鎧要らずの筋肉(おお)った全身鎧(フルメイル)。『俺の身体が抜き身の()』ヴァロウズ第五の女戦士ティン・クエンに相違ない。


「この先は行かせねぇよ、彼奴(トレノ)の邪魔はこの俺が赦さん」


 立てた親指自分へ胸差し軽々笑顔を流すティン・クエン。


 ズザッ!


「──ッ!?」

「良いんだな女、貴様はとうに忘れただろうが我が妻(ホーリィーン)(かたき)だ手加減出来んぞ」


 拳闘を得意とするティンでさえ背筋走る戦慄(せんりつ)

 見た目通り重さに沈む白き鎧と柄の長い斧(バトルアックス)を寸分狂い無く仇の首元へあてがうジェリドの疾風怒涛(しっぷうどとう)

 勢いそのまま突けばティンの首が形残さず消し飛んだやも知れぬ()()(はら)んだ一閃(いっせん)


 相手が如何(いか)にも緩慢(かんまん)そうな鎧の騎士と争い向かぬ司祭の少女。

 数多(あまた)の死線潜り抜けたティン・クェン、油断が呼び込む冷汗。地面蹴り僅か(わずか)に後退、開始早々、道譲る(ゆずる)屈辱(くつじょく)


 ──()め過ぎた!


 己の甘さに苛立ち(いらだち)募り(つのり)歯軋り(はぎしり)するティン。この騎士、嘗て(かつて)トレノと彼の相棒である巨大な狼相手に独りで対峙(たいじ)

 トレノは軽量な武器エストック(細身の長剣)を用い、速さで対抗するも相棒の首級(クビ)奪われ敗走()いられた。『何故俺を誘わなかった』とトレノを叱咤(しった)した当時。まさに思い知らされた。


 クイッ……。


「……覚えているさ司祭(クラス)とは思えなかった洗練された動きの女。アンタの嫁だったのか。頗る(すこぶる)心地()い殺し合いだったよ」


 両腕(ガード)上げ、さも拳闘(ボクサー)思わせる軽快な跳躍(ステップ)踏みながら、右手で殺戮(さつりく)舞台(マット)上がれと誘う(さそう)ティンの挑発(ちょうはつ)。心に住まう(ゴング)鳴らした。


 だが決して乗せなられない熟練(じゅくれん)滲む(にじむ)ジェリドの構え。

 敵の異能が未だ()()、理解進めるべく思考(めぐ)らす。


 実の処、白霧(はくぶ)に沈み何も見えない訳ではないのだ。

 首筋まで着実届けた殺気帯びた一撃、()()気であったが()がれた真実(まこと)


 ──何故()()()()()()()


 ジェリド、己の一挙一投足を見透かされた不吉(ふきつ)に気分駆られた。


 ◇◇


 ローダ&ルシアVsRaviNero(ラヴィネロ)戦いの図式へ話を戻す。

 全く以って(やわ)らかくない()()の装甲に手を焼くローダ側。

 一方、じゃれる黒猫の爪届かぬ英傑(えいけつ)達の宙舞う瞬足。


 高次元なる硬直状態続くかにみえた争い、乱入したレイがLeythemend(レイジメンド)で放つ銃弾が一挙(くさび)刺した事柄に気付いたローダ。


 ──割れている? 


 ただの乱射に見える二丁のLeythemend(レイジメンド)撃ち出す()()

 寸分の狂いなく同じ場所を(とら)えていた。まるで継矢(つぎや)か、はたまたレイの毛嫌いしてるライフル銃の暗殺術。じゃれて来る右前脚関節部へ入れた好機(ひび割れ)


 口先三寸(さんすん)だけに非ず(あらず)レイ(Ley)()は既に成し終えていたのだ。


 ▷▷──ルシア、アレだ。俺の剣を導いてくれ、やれるな?


 ──はッ! う、うんっ!


 突然ルシアの脳裏に響き渡る愛()がれる彼氏(ローダ)から()()。風の精霊術、言の葉(風の便り)が呼び込む指示。


 略奪(りゃくだつ)愛──勝手に彼が自分から奪った秘密の連絡先(風の術式)

 命削り合う戦闘の合間、私だけ()()出来る愛の囁き(ささやき)と受け容れた背徳(はいとく)感。心毎横領(おうりょう)された悦び(よろこび)浸る(ひたる)(さま)。彼との余白(距離)(ZERO)に至る()()


 機械(AI)頼みなRaviNero(ラビィネロ)へ人間の意志を(つむ)いだルヴァエルとて右前脚の異変に気づいていた。それが返って良好でない波長呼び込む。


 候補者ローダのみ心血注ぐべき現状、なれど脚を喪失(そうしつ)し兼ねない状況変化に思わず()()な女二人へ守りの意識を向けてしまった迂闊(うかつ)、集中すべき意識を散らしてしまった。


 風纏う(まとう)ルシアが現界(召喚)した光の精霊術に因る(よる)攪乱(かくらん)

 空間転移で自在に迫り来るLeythemend(レイジメンド)威嚇(いかく)の発砲。

 二人の女性が成し得た即興(そっきょう)連携(コンボ)、見逃す筈ないローダの蒼白い剣戟(けんげき)飛び込む隙間(すきま)が遂に(ひら)かれた。


 ガシャンッ!


 宙舞いながら突きを見舞うローダの攻勢。(くさび)()()込んだ同じ場所へ『届け!』と声なき咆哮(ほうこう)。剣がRaviNero(ラビィネロ)の装甲を貫通(かんつう)──()()()()()()


「なッ!? な、なんだこれはッ! どうしたと云うのだRaviNero(ラビィネロ)!」


 黒猫の操縦席内部(コックピット)、響き渡り鳴り止まない警告音(ALERT)騒乱(そうらん)

 狼狽(ろうばい)せざるを得ないルヴァエル。ありとあらゆる計器類を見渡した上、『沈まれ!』と思念送るが徒労(とろう)()する。


 ローダの放った剣戟こそ、この争いに於ける英雄(女傑)二人の()()調()()。文字通りローダは試作機(TYPE-ZERO)の扉を拓き、己が意志を接続(ONLINE)したのだ。


 ()に認められ昇格しつつある候補者の思念が滝の如く注ぎ込み防御璧(セキュリティ)喪失(そうしつ)したAIの愚直(ぐちょく)な意志を暴走させるウイルスへ転じた。

 これならば黒猫の中枢が何処へ潜んでいようが無関係、装甲さえ打ち破ればRaviNero(ラビィネロ)を飾りへ戻せる元の木阿弥(もくあみ)策略(さくりゃく)が最初から存在していた。


 ルヴァエル守りし操縦席内(コックピット)の各計器類、漆黒(しっこく)()ちる完全停止(シャットダウン)再起動(リブート)許容出来ぬ必然。


『機械相手に()()()()()が負ける訳ないよ』


 闘う前から知り抜いた結果、ルシアの思いが遂に形を成した。


 そう──。

 機械相手にこの英傑二人が負ける道理がないのだ。

 問題なのは寧ろ(むしろ)これから。黒猫の()()が持ち寄る力こそ未知数。


 真の戦いはこれから始まる……。

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