表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/160

第36話『"Ley", where the law lies("レイ",法の在処)』 B Part

 ルヴァエル駆るRaviNero(ラヴィネロ)が神の住まう街、Forteza(フォルテザ)を潰しに掛からんとする矢先。

 たった二人の生身で巨大兵器を相手取っていたローダ・ファルムーンとルシア・ロットレン。


 決して追い詰められていた訳ではないのだ。

 だがその戦いぶり、余りに打つ手がない様に見受けられ、英傑(えいけつ)達の能力に半ば落ち込む愚者すら居た。


 そこへまさかの介入者(かいにゅうしゃ)ヴァロウズ(ナンバーズ)のレイ、颯爽(さっそう)と現る。

 然しながら例え、一度は文明失われた世界軸とはいえども22世紀より(とき)重ねること300余年。

 今更コルト・ガバメントのレプリカ携え(たずさえ)火薬必須な古臭い小銃を持ち出された処で、揶揄う(からかう)者あれど歓喜(かんき)に打ち震える(賢者)は居ないのだ。


 パンッパンッ!


 レイ、次は宙返りしながら連射ではなく単発へ転じた変幻自在。Leythemend(レイジメンド)、主人が語る法の在処(ありか)示すべく銃弾を散らす。


 笑顔を保ち続けた容姿、()()()喉奥(引き金)に指差し入れ、RaviNero(ラビィネロ)の関節部を狙い撃つ二重の悦楽(えつらく)

 自ら抜き出す()()喘ぎ(銃声)()れた当人が恍惚(こうこつ)()()()()浮かべた。


「嗚呼……ヤッバ、此奴等最高(さいっこう)。この(ぐれえ)感じて(震えて)んじゃねぇよ、俺様が先に()っちまう」


 法を体現する(名で体を表す)女とは思えぬ快楽(かいらく)織り込んだ妖艶(ようえん)なる行為。熱く滾り(たぎり)し銃口、()めるかに思えた頬擦り(ほおずり)


 ローダ達に取って最大最後の敵(黒騎士の軍勢)側から繰り出された捩じれ(ねじれ)切った正義の味方。


「あの童貞学者(ドゥーウェン)幾ら(いくら)頼んでも造ってくんなくってよぉ……。だけどな、()()()()がアッサリに形にしやがった。彼奴(アイツ)相当イカれてるぜ」


 思い当たる()()()──。

 ルシア・()()()()()の顔色に一挙陰り(かげり)が差した。


「俺様は小銃だけ()がれてんだ、ライフル(LongBarrel)? いけ()かねぇな。だけどそいじゃ威力(いりょく)がもの足んねえ。ならば簡単、相手の()()で決めりゃ済む話さ」


 相も変わらず誰も聞いてない話を小鳥の様に口遊む(くちずさむ)レイのお遊戯(ゆうぎ)。されど彼女はこの戦場に現存しないと思われた()()を持ち込んだ。


 それは、候補者でないレイを敵と(さだ)めたRaviNero(ラヴィネロ)の転化した姿である。レイは恐らく異能者だが一摘み(ひとつまみ)しか持ち得ぬ中途な存在。


 理由──。

 それは何とも味気(あじけ)ない、されど周囲が知覚し切れてなかっただけの真実。


 貴重な試作機(TYPE-ZERO)の赤い瞳を撃ち抜かれ激昂(げきこう)したルヴァエルに他ならない。

 バルタバザル(旧インド領)決起の(おり)、ゆるりと動いた試作機(TYPE-ZERO)。その糸口が見え隠れしていた。


 ルヴァエルの機械じみた(からだ)──。

 細い線が平たい(たば)を成し得てRaviNero(ラヴィネロ)と結線されていたのだ。一応操縦士(パイロット)の資格を有していた次第。


 有線で己が思念をAIに介入(かいにゅう)させ()を通わせる作業。人間の攻め手に欠ける弱気な部分は機械で()()()()足りない部品を生き血が補う(注ぐ)のだ。


「おっと、迂闊(うかつ)に喋り過ぎた。これはあくまで助っ人だかんな。次殺る時は手前(テメェ)等が俺様の()裁かれる(撃たれる)かも知んねえ、覚悟しとけ」


 手銃で指差しローダ達を威嚇(いかく)射撃したレイの()()()()


 共闘──確かに違いないのだがローダとルシアは、戦いの図式を始めから一貫(いっかん)し続けている。


 ルシアがRaviNero(ラヴィネロ)支える地盤を徐々に()()。手を汚すのは必ずローダの公式。周囲を好きに跳ね遊ぶレイの三者三様。


 世辞にも連携とは言い難い闘争の在り方。なれどゾッとする背筋弄る(まさぐる)恐怖の音。最先端技術が生み落とした黒い怪異(かいい)

 フォルテザに住まう争い知らぬ民草にも伝わり尽くす戦争の音源(根源)。怖いものみたさ──人が禁断の果実欲しがる本質サガ呼び込む。


 やがて誰かが軽々しく口遊む(くちずさむ)──。


『これは英雄譚(えいゆうたん)か、それとも災厄(さいやく)の序章?』


 火事場の見物客引き出すのは(とき)の問題。人、集まれば新たな魑魅魍魎(ちみもうりょう)召喚し得る対価と為すのだ。


 さらにその蠢き(うごめき)は、焦りの熱帯びて人の世流離う(さすらう)。伝染し続ける語りの根幹──それが人の本能らせん。例え危うき業火(ごうか)呼び覚ますとしても……だ。


 ◇◇


 フォルテザ市を姿通り()から支える最上階。砦めいた場所からこの戦いを覗く(のぞく)金髪のドゥーウェンと御使い(みつかい)ベランドナ。


「──Ley(レイ)-the()-mend(メンド)……。まさか完成させただなんて」


 自分の遥か上往くサイガン()()の能力に脅威(きょうい)畏敬(いけい)の念、入り混じるドゥーウェンの青ざめた表情。


Master(ドゥーウェン)、あの銃はそれ程凄いのですか?」


 ベランドナ的に心で首傾げ(かしげ)ざるを得ない懸案(けんあん)

 今更火薬で撃ち出す武器に驚倒(きょうとう)しそうなドゥーウェンの狼狽え(うろたえ)ぶり。


Leythemend(レイジメンド)は簡易な重力制御を秘めてます。発砲時の反動を()()()銃です。アレそのものは、実の処大した物ではない……」


 首を横に振り古めかしき小銃の解説を始めるドゥーウェン。


 Colt(コルト)Government(ガバメント)──形式M1911。

 1911年製、弾薬『.45 ACP』口径11.43mm×23mmを()()オート式で撃ち出す世界初の自動拳銃。その汎用性の高さから改良を重ね続け実に100年間、第一線で活躍続けた傑作(けっさく)


 Leythemend(レイジメンド)は、コルト・ガバメントと基本性能に寸分の狂いなし。

 重量(金属)すらコルトに合わせた無駄多き拳銃。

 ドゥーウェンが語る通り、拳銃で在りながら発砲者が居なくとも己の機能で反動発せず。それだけに過ぎないのだ。


「ヴァロウズ()()()の能力者、レイに因る(よる)処が多分だという話ですよ。空間転移、射程圏内は恐らく視界が届き得る限り。銃処か自分さえも好きに飛ばせる、ですが銃を飛ばしても支えがなければ無意味(ナンセンス)


 旧式の銃を扱き(こき)下ろす顔とは明らかに異なるドゥーウェンの身震いさえ伝わる台詞。


因み(ちなみ)に形式は『LM1911』彼女、僕を童貞(どうてい)呼ばわりする割、女性らしい自己陶酔者(ナルシスト)です」と付け加えた。


「レイ自身の能力値だけ評価するなら最底辺なのです。……ですがLeythemend(レイジメンド)を与えてしまった、サイガン先生は気が狂われたかも知れません」


 ドゥーウェンの気分──。

 要約すればレイを『Leythemend(法の先導者)』まで押し上げた判断が理解し難いのだ。過剰(かじょう)な相性、渡してはならぬ代物。


 己自身を空間転移で飛ばし法の裁きを下す行動。これだけなら大した脅威とは言い難い。

 なれど拳銃をあらゆる角度から現界させる裁きの範囲が拡がりみせる。


 敬愛する人間の説明を長耳へ注いだベランドナ──正直()に落ちない話。


 学者気取りなこの男、尊敬する先生であり年齢の幅を越えた友人を裏切った()()

 新人類第一候補と思しき(おぼしき)男と、彼を確定させる鍵すら握るべく事起こした張本人が棚上げ(たなあげ)する不可解。


 ──狂気(きょうき)の度合……測り合っても無駄なだけ。


 心の奥底へ独りしまい込むベランドナ、ルージュ要らずの気高(けだか)き唇が封切られる事非ず(あらず)。歴史の立会人なる有り様を示した──。


 さらに人が争いの火種渇望(渇望)する螺旋(本能)、目に映らぬ影絵の劇(場所の演目)。知らぬ間に封切られ様としていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ