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第35話『Black Fang Unleashed(解き放たれし黒き牙)』B Part

 レヴァーラ・ガン・イルッゾの血縁と(おぼ)しきルヴァエル。

 彼女の駆る候補者(新人類)駆逐兵器『RaviNero(ラヴィネロ)』がフォルテザ市の喉元(のどもと)へ迫る勢いみせる中、ヴァロウズの学者ドゥーウェンがフォルテザ市の迎撃システムを機能させるべく全力を注ぎ込む。


 されど人工知性体進化用(意志在るAI育成用)ナノマシンOS『AYAME』の開発に(たずさ)わった天才肌の彼でさえ、そう簡単に(こな)せる仕事ではない。ルヴァエル側に奪取(だっしゅ)された仕組み(SYSTEM)を取り戻し新たに機能させる。

 並大抵の仕事に非ず(あらず)。「最低でも30分は欲しい処です」そんな冷汗(弱音)を吐き散らしつつ、目にも止まらぬ速さでキーボードを叩き続けていた。


 だがRaviNero(ラヴィネロ)とフォルテザ市の間隔は1kmを間もなく切るのだ。如何(どう)見繕(みつくろ)っても分の悪い賭け。


 ブオォォォォンッ! ガツンッ!! ズッガーーンッ!!


「「──ッ!?」」


 絶望しかみえぬ思いに希望の種を投じた壮絶(そうぜつ)なる絵柄(えがら)がドゥーウェンとベランドナの視界へ飛び込む驚天動地(きょうてんどうち)


 翼のプロペラシャフトが全力運転で風切る音。

 新旧の機械同士がぶつかり合う金属音と爆発が引き起こす残響(ざんきょう)

 セスナ(軽飛行機)RaviNero(ラヴィネロ)の横っ面に特攻(ストレート)、爆散し5mの巨体をただの一撃で横倒しにしてみせた不意打ち。


『な、何事……だ!?』


 RaviNero(ラヴィネロ)操縦席(コックピット)に座るだけ、ただの飾り雛(かざりびな)であるルヴァエルが三つ編み振って状況確認。信じ難い事実(馬鹿共)視界に雪崩れ(なだれ)込む。


 地上のリング──よもやな初弾に因る(よる)ダウン取られた黒猫の上、腕組む二人の男女が空で制止。此方を見下した態度が映る霹靂(へきれき)


「──俺の声が聴こえるか? ()()に乗ってる操縦士、バルタバザルの(旧インド領から来た)ルヴァエルだな?」

「此処から先は一歩も前に征かせないよ!」


 セスナ(軽飛行機)をAI任せに飛び込ませ、自分達は直前に脱出。

 マーダと争い奪った魔導、重力解放(ヴァレディステラ)で飛ぶ英雄(ローダ)

 真なる風の翼を用いて空を華麗に舞う天女めいた女傑(ルシア)


 外敵(未知)睨み(にらみ)付け腕組み揃う(そろう)仁王立ち。英傑(えいけつ)(にお)わす悠然(ゆうぜん)たる振舞い。


『ドゥーウェン、俺達英傑(奇跡の薔薇)の力を此処に示す。映像を世界へ流すんだ』


 腕時計型携帯端末を用い、(とりで)に居座るドゥーウェンへ用件を事務的に伝達するローダ。これから始まる闘争劇(とうそうげき)()()()()と堂々宣言。


 一昨日終えたばかりの外敵に対する集会、声で()()()英雄(ヒーロー)の意志。

 次は態度で体現(たいげん)すると言い放つ小癪(こしゃく)。こんな外連味(けれんみ)だらけの彼は大変珍しい。


『ろ、ローダ君にルシアさんまで!? 生身で巨大兵器相手にどう立ち向かうのですかッ!?』


 敵の兵器がフォルテザ市を蹂躙(じゅうりん)する最悪を避けた事柄すら吹き飛ぶドゥーウェンの問い掛け。

 心がよろけた気分、ルシアすら勢い任せに飛び出すのは少々予想外。吉野亮一時代に鑑賞(かんしょう)した欧米出自の不出来な特撮映画を彷彿(ほうふつ)させた現実。


『貴方、私達が人型兵器の装甲(まと)った不死の巨人と戦う一部始終を観てたんでしょ?』


 次はルシアが学者を煽る(あおる)反吐(へど)をつく。この間、不死(アンデッド)の巨人と直にやり合ったローダ。苦戦()いられた要因(よういん)、不死なる人間達がローダへ続々(こぼ)した無念の残留思念。


 今回の敵はただの機械。負ける気など(ハナ)から勘定(かんじょう)に無き様子を台詞に乗せた。『私の彼氏(ローダ)が機械相手に負ける訳ないよ、そんな事も判んないの?』痛烈なる言葉の刃。


『わ、判りました。30分……時間を(かせ)いで下さい、この街の防衛手段を機能させると約束します。……と、処でリイナさんは、そちらに居ないのですか?』


 一蓮托生(いちれんたくしょう)、若さ(あふ)れる英傑(えいけつ)達へ任せるべく腹を(くく)ったドゥーウェン。

 ルヴァエルがただの飾りでないのが残る懸念(けねん)材料、回復兼支援役の存在(リイナ)が見当たらないのが気に掛かる。


『アルベェラータ親娘には()()(あず)けた』


 またしても言葉足らずだが雄弁(ゆうべん)たるローダの伝言。

 頼り甲斐(がい)在るジェリドとリイナをこの場へ出さずに任せたと云う気になる『別件』

 機械任せで感知してない他の脅威(きょうい)が存在し得る暗示(謎掛け)候補者(新人類)のみが感じた別の何か。


 これ以上、平凡(へいぼん)な自分が立ち入れる領域でないとドゥーウェンにも流石に知れた。


『了解です、通話を切ります。くれぐれも用心して下さい』


 ローダ達との通話を切ったドゥーウェン、一瞬横目に『僕のベランドナ』を見やる。

 ハイエルフを英傑達の援護(えんご)へ回す英断(えいだん)思い付いたが即座に止めた。ベランドナなら戦力として申し分ない。


 二人が堂々奇跡の先導者たる意志を明かすべく戦場へ自ら躍進(やくしん)したのだ。やり抜いて欲しい気分芽生(めば)えた。


 ブンッ!!


「──ッ!」

「速いッ!」


 RaviNero(ラヴィネロ)の右前脚の爪が右腕へ転じ、この世の物とは思えぬ巫山戯(ふざけ)た速度でローダへ振り下ろされる。獰猛(どうもう)過ぎる猫じゃらし、四脚の生物が二本足へ転ずる刹那(せつな)


 辛くも寸で(かわ)したローダ貫く(つらぬく)()()()()AIの殺意。

 風と語り合えるルシアに走る戦慄(せんりつ)。風の精霊達が無慈悲(むじひ)にも猫爪で()かれた声なき断末魔(だんまつま)を聞いた思いに駆られた。


 パチンッ──操縦席内の声を外へ響かせるべく拡散機(スピーカー)のスイッチ入れるルヴァエルの悠然(ゆうぜん)


『ククッ……流石新しき世界のAdon(創生主)(よう)するアドレスの(おさ)。巨大な化け猫が神祀る(まつる)街を襲撃する地獄を世界へ発信(リーク)するとは』


 16の少女とは思えぬ言動と考察──。


 生身の人間二人だけを無慈悲に断罪(だんざい)する黒の()()。実に伝わり易き(やすき)善悪(ぜんあく)の図式。ルヴァエル一派は理不尽に奪われた魂の故郷(ふるさと)を取り戻したいだけの正義。


 されど事情へ気回しする気ない対岸の(やから)は若い男女の飛躍(ひやく)(おが)めば『()()()()()』を感じ、手放しで愚かへ()ちるが関の山(せきのやま)


 これは苦笑禁じ得ないルヴァエルに()()()()()()()の心情。

 見掛けの白黒だけで悪役へ堕ちる事流れ(ことながれ)堕天使(ルシファー)なぞ手軽に創作出来得る人の狂気(きょうき)を肌で感じた。


「ローダ、地上へ降りて戦うべきよ!」

「ルシア? 了解した」


 此方より遥か(はるか)上から(かぶ)せて来る敵の攻勢。

 それでもルシアは地上を蹴って普段通りの動作に於ける優位性をローダへ説いた。


 未だローダが慣れぬ空を駆ける戦い方より、地上と空を自在に混ぜ合う混沌(Chaos)を敵へ見せ付けるべきだと瞬時に悟った。


「ハァァァッ!!」


 突然地上へ風の精霊帯びた拳を振り下ろすルシア、気が変に為ったかと思わぶりな行為。

 実は冴え渡るルシアの戦闘感覚、荒地が砂浜に化けたかの如き土煙(つちけむり)──候補者ローダをつけ狙う()()()()()へ向けた煙幕(えんまく)を瞬時に錬成(れんせい)したのだ。


 ドゥーウェンの手引きで早速、通信環境行き渡る場所へ生中継される戦いの図式。

 (たもと)を分けたフォルデノ城に潜む黒騎士(マーダ)の記憶に留まる必然を呼んだ。

 挿絵(By みてみん)

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