第26話『Dive into my breasts!(飛び込め私の胸に!)』 A Part
ラオ守備隊、命散らした者共を火葬で弔った夜の浜辺。
皆、思い想いの感情。ルシアとローダは波打ち際と星降る夜、不謹慎にも酔いしれた一夜。
今宵のローダ青年は珍しく自分語りが多く、特に燃え滾る火について大いに口を開いた。
彼はアドノス島に渡る以前、孤独な独り旅の最中、焚火の不思議さ面白味に我の寂しさを忘却出来た。
『焚火とは1秒たりとて同じものは在り得ない。天候、燃やす物、何より周囲の景色。これらが渾然一体で全く異なる絵面を見せる』
ルシア、何故こうもローダが楽し気なのか正直理解度は低かった。
だがそんな些細は捨て置き、彼が雄弁なのが嬉しくひたすら傾聴するのを楽しんだ。
巨人退治が終結した翌日、目的果たしたローダ一行はフォルテザ市街に帰るものだと思い込んでいた。
「う、海……!?」
「み、水着!? そ、そんな」
綺麗処がよもやな海遊びをプリドール・ラオ・ロッソから誘われ困惑気味。
昨夜葬式を執り行った舌の根乾かぬうちな在り得ない呼び止め。ラオの人々は基本陽気らしい。
季節は初夏、目前に広がる遠浅の波間煌めく海。
なお、ラオ自治区は22世紀以前、アドノス島の旧名シチリア北東付近。リゾート地『Taormina』辺り。
だが22世紀初頭、吹き飛ばされたエトナ火山を始め、様々な天変地異が在った所為で多彩過ぎる変化を遂げた。その点、海に関わる観光地が未だ続くラオは過去の街並みを奇跡的に残した方。
漁村エドナに居を構えた二人だが海は仕事場、遊ぶ思考がそもそもないのだ。女性が海水浴で真っ先に思い当たる水着の御洒落など考えた事柄なく大いに戸惑う。
「大丈夫、二人共可愛いから俺が見繕ってやんよ」
実に頼り甲斐ある経験値高めな女性。されどやけに執拗い断り切れぬ誘い文句。
フォルテザで待たせているドゥーウェンへ通話連絡した処『OK! 好きなだけ遊んで下さい』と快諾。
斯くして退路絶たれた遊び慣れしてないルシアとリイナが流れに身を任せる羽目になる。
女同士、三人連れ添って水着選びを含む買い物。当然至極一日を擁した。
チーズクリームを包んだ伝統的焼き菓子『Cannolo』やスイカ果汁で作るゼリー『Gelo・di・mellone』等を堪能。
男二人、ローダとジェリドはラオ守備隊が待機する砦にて待ち惚けを喰らうのだ。
男の水着選び?
そんな味も素っ気も無い話なぞ即刻割愛に決まっている。
翌日──。
初夏、天高く昇る陽光が熱気呼び込む。最早水着無くとも水浴びせずに要られぬ絶好の海水浴日和。
男共──ローダ、ジェリド、ランチア。その他大勢。
海辺へ先乗り、サッサと場所取りに励み女性陣を待つだけの凡庸に徹する。
そこへ人生初水着を恥らう乙女二人。水着の上から何れ脱ぐ運命にあるTシャツ羽織ったルシアとリイナが静々と現れた。
シャツの下から開けた水着がかえって男心の性的欲求を刺激する。遊び慣れない二人は知らぬのだ。
「ろ、ローダ……」
「あ、うん……? そ、そう言えばプリドールさんは?」
何時になく歯切れ悪いルシアの第一声。
シャツの下から覗く際どき深緑の何とも頼り無い腰下周りと、上半身白いシャツでは全く以って隠し切れない胸元。首元から垂れる金色のロザリオが豊満な胸を悪目立ちさせていた。
此処で敢えて言わせて頂く『ローダは朴念仁が酷過ぎる』
勇気振り絞って水着初披露のルシアを目端に入れながら、他の女の行方を訊ねる底辺な発言。
「あ……準備があるから後から来るとか言ってた気が……」
それでも二歳年上御姉様の決してめげない恋心。
やはり無駄な着衣であるTシャツを中途半端に脱衣。腕だけに残すチラリズム、上目遣いと羞恥で自然の赤みも装い新たに愛しのローダへ『どう?』と迫るのだ。
海鳥達も同時に飛び発ち、奇跡的自然なレフ板と化す美麗なる様子。ボブカットの金髪が陽光に照らされ一際艶やか。
ワンピースな水着かと思いきや、胸元部分とお腹周りが分離していた。森の緑と瞳色が揃いで大人過ぎす、かと言って子供ではない冴え渡る演出。
ゴクリッ……。
ローダ青年、暑さで喉が渇いた訳ではない……渇望した以上の者がそこに居た。彼女の誘う視線絡むのを感ずる。
「き、綺麗だ。……す、凄く似合ってる」
熱い砂浜へ腰をヘタリと落としながらも、勇気振り絞り如何にか賛美を送る青年。此方も遊び慣れなどしてない天然の発言。
例え恥ずかしくともローダに褒められ、御満悦のルシアが膝抱え隣に腰を下ろして密着。
「ろ、ローダさん……わ、私の水着。へ、変じゃないですか?」
青年が意識手向けぬ二人目からの誘い。今日のローダは何やらモテ期到来? 或いは他に気に掛かる男が居ないのか?
長い銀髪を解き放ち、海色の瞳を湛えたリイナ14歳が魅せる穢れ知らずな純白水着。普段は修道服で隠した身体の落差激しき姿形。
此方も一見ワンピースに見えるが、その実ボトムス部分を縛る腰紐覗くセパレート。
金色のネックレスがこれまた胸の膨らみ迄伸びて映え渡る。煌めき放つ海を背景に波飛沫弾く白い柔肌が眩し過ぎて直視出来ない絵画。
恥らいながら『私の水着、変ですか?』こう聞いて来る女子の大半は『変な道理が皆無』
そもそも『水着が変?』ちょっと何言ってるのか解せない? 世の男子は大抵そう思い惑わされるものだ。
ゴクリッ……。ローダ、本日二度目の生唾。
「か、可愛いよ。す、少しも変じゃない」
こればかりはローダに激しく同意。
他に応じられる言葉が見当たらない。オウム返し以外の選択肢が在り得ない辛み。
──むぅ?
14歳の本気を見せ付けられ22歳のルシアが頬膨らます仕草。『貴女彼氏居なかった?』爆弾発言吐きたい本音。
さりとて遊び足りぬ若者達は知らぬのだ。
個人的算段抜きで海へ誘う清廉潔白なる29歳独身女性など無きに等しい絵空事を。




