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第23話『Aim for a literal giant-killing!(文字通りのジャイアントキリングを狙え)』 B Part

 巨人の正体を己の(からだ)で知り抜いた絶望の果て、狂戦士(バーサーカー)に成り掛けたローダ・ファルムーン。

 愛するルシアが全身で成し得た幸福(引き留め)

 全く以って戦場に似つかわしくない初々(ういうい)しさ(あふ)れる男女のやり取りに、緩まずにはいられないジェリド・アルベェラータであった。


 ▷▷──済まないザラレノ・ウィニゲスタ。僕は本当にあの巨人について何も知らない。恐らく先輩(マーダ)と1番目が勝手に仕出かしたことだよ。


マーダ(ルイス)様っ!?」


 未だ独り絶望に()してた紺色の少女(ザラレノ)へ届いたかけがえない伝言。


 マーダ(ルイス)も風の精霊術、言の葉(風の便り)を扱えるらしい。フォルデノ城、王の寝所で傍ら(かたわら)4番目の女魔導士(慰みを与えてくれた女)侍らせ(はべらせ)ながら冷笑しつつ戦況を見つめていた。


 ▷▷ザラレノ、あの木偶(巨人)だけでは何も得られないんだ。君は優秀だ、僕の為にやってくれるかい?


 コクッ。


 甘ったるい男の声が少女の承認欲求を大いに満たす。言われる迄もない。例えあの御方(マーダ)の隣に違う女(フォウ)が寝ていようとも、自分に出来得る愛の形を示す迄の事。


 再び風を起こし殺傷の針を飛ばした。3人の兵士がただの針に突き刺され憐れ(あわれ)亡骸(なきがら)と化した。


「クッ!?」


 ローダも背中に蚊が刺したよりは痛覚を刺激する痛みを覚える。されど死には至らない。それは殺す為の道具とは一線を画す(かくす)目的(保険)を帯びていた。


 もっと驚きの奇術(Magic)を見せるザラレノ、風を用い12mの巨人を浮かせてローダ達へ強襲させる。左膝(ひだりひざ)装甲(アーマー)を突き出す恐怖の様。


 ガツンッ! グサリッ! ブシュァァァッ!


「なっ!?」

「若い、若いな(大気)使いの少女。巨人が向こうから態々(わざわざ)()()巨体でやって来る。増してや巨体を支える脚を自ら差し出すとは愚かだ」


 ジェリドが柄の長い戦斧(バトルアックス)矛先(ほこさき)を寸での処で突き出す。巨人から噴き出す血の豪雨で元聖騎士団の白き鎧が鮮血色に染まり往く。此処ぞとばかりの反撃(カウンター)最初(ハナ)から狙っていた。


 自分へ滴り(したたり)落ちる血を見ながらニヤリッと嗤う(わらう)不屈(ふくつ)の戦士。煽る攻勢(マウント取るの)も忘れない。

 戦斧(せんぷ)の騎士にしてやられ、歯軋り(はぎしり)せずにいられぬ若過ぎる大気使いの異能者(ザラレノ)


「──ハァァッ!!」


 この場でもう独りの風使いがすかさずザラレノへ燃え滾る(火の精霊を付与した)拳を突き出し邪魔をする。


「ルシアッ!」

「この()は私に任せて皆は巨人退治に専念するのよッ! 大丈夫、私()()()じゃないからっ!」


 巨人より先に注意すべきは紺色の少女、ヴァロウズ7番目の強者ザラレノなのは間違いない。

 それが気掛かりなローダへ『心配ない、私に任せて』と力強く告げるルシアの体現(具現化)。相手に縋る(すがる)愛だけでない自分を彼に見せるべく奮闘(ふんとう)する覚悟だ。


 若干(じゃっかん)後ろ髪()かれる思いのローダであるが、此処はルシアに一任すると改めて決めた。


 ──巨人の脚を絶つ……か。


 意味不明な地震の次は大気を操る新手(ザラレノ)。その上エドナ村から来た英雄(ローダ)が吐いた真実を聞き、やるべきことを半ば(なかば)見失い掛けてたラオ守備隊副団長の赤い鯱(プリドール)


 勇猛果敢(ゆうもうかかん)な戦斧の騎士、その動きを見た途端(とたん)戦術的(副団長の)血が沸々(ふつふつ)と湧き上がるのを感じた。『巨人を支える屈強(くっきょう)な脚を最初に崩せ(くずせ)』当たり前過ぎるが有効打と知る。


「何ボサッとしてんのさッ!! 1番隊から3番隊、馬上槍(ランス)を構え縦列陣形ッ!! あのふざけた馬鹿の脚を狙えぇッ!! 一番槍を余所者(ジェリド)に取られた汚名を晴らすんだよォッ!!」


 最も()()()としていた自分を投げ捨て味方へ指示を送るプリドールの雄姿(ゆうし)

 鼓膜(こまく)が破れていようが届かぬ訳無い声が戦場に轟く(とどろく)一目散(いちもくさん)、副団長の元へ向かい、背後に陣形を組む騎兵達の素早さ(すばやさ)。鮮やかな動きの良さ、目を見張るもの(価値)がある。


 ──さてと……俺様はどうすっかな。


 得意の投槍(ジャベリン)で己の肩叩きながら、相も変らず副団長へ指揮を依存(いぞん)し続ける青の団長(ランチア)


 助っ(ローダ・)人の英雄(ファルムーン)が巨人の弱点であった筈の光を用いた攻撃を全く以って使わぬ様子に『実は効かねえんだな』と勝手に咀嚼(そしゃく)。さりとて見せる笑顔の白い歯。


「御客様ァッ!! ラオ一番の()()()は此処よぉ()。いつもみたく真っ先に相手してくれないだなんて本当(ホンット)失礼()()()()()()!」


 ラオ守備隊の最後尾、突然の女口調で客を逆指名(ナンパ)するランチアの奇行。()()()()()()に気付き、縦列していた守備隊へ走る恐怖の(ちまた)を呼び込んだ。


 拳を振り上げ店員に襲い掛かる困った(パワハラな)客。


 けれども一歩も引かぬラオの強靭(きょうじん)な騎兵隊。副団長(プリドール)の動きと即座に同調(シンクロ)、先頭の隊士が馬上槍(ランス)斧槍(ハルバード)を降ろされた拳へ合わせ渾身(こんしん)込めて振り上げる。


 ブシュァァァ!!


「へッ! ざまあねぇやね、汚ねえ返り血浴びせやがってッ! この代償(代金)高いから覚悟しなッ!」

「見事っ! 何とも抜かりない鍛え(きたえ)抜かれた素晴らしい兵達だッ!」


 三本の槍がカウンターで相手の拳を見事斬り裂く。『汚い返り血』を先陣切ってわざと浴びる赤い鯱(プリドール)、異名通りの血に()えたシャチの八重歯()が喰らい付いた。


 何時の間にかほぼ同様の位置に陣取ったラファンの白騎士(ジェリド)が白い歯を見せ、親指を立て(サムズアップで)鎧の赤をさらに増した女騎士(プリドール)の健闘ぶりを(たた)えた。


 赤い鯱(プリドール)も鎧の胸元に在った竜の紋章(もんしょう)を削り取った歴戦の騎士とて、互いを称え合い(認め合い)戦意を高揚(こうよう)させる効果を知り得た強者(つわもの)なのだ。

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