表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/157

第11話『Trap Set by the Darkness(漆黒の仕掛けた罠) 』 B Part

 白い修道服姿のルシア・ロットレン。風の精霊術で己の機動性をより鋭敏(えいびん)に高め、目前の()だけでなく森に潜む戦場(敵共)総てを相手取ろうと画策(かくさく)


 腐葉土(ふようど)積もる悪い足場にも(かか)らず敵女武術家の背後に回る。


「ウグッ!?」


 一体何をされたのか判らぬまま、後ろ首へ剣より鋭い手刀を浴びた女。狼狽(うろた)えずにいられない。それでも気絶ぜず、そして(おく)せず身軽な脚捌き(あしさばき)で正面を向き直そうと追い縋る(すがる)


 だが白い()()()()()()の女は既に忽然(こつぜん)と姿を消していた。


「ティン! 何遊んでいる?」

「トレノ!? これが遊んでる様に見えんのかい!」


 ティンと呼ばれた女、トレノ(味方の剣士)からの煽り(あおり)と敵に及ばぬ自分に対する怒りが一挙(いっきょ)沸き(わき)起こる。短めな赤い髪が逆立ち、血流が毛先迄届いているのかの様。


 一方、トレノと言い返された大太刀(おおたち)の剣士。

 余裕面でガロウ一撃必殺の剣をあしらい続ける。だから味方の様子を見やる(いとま)さえ生み出せる。


 剣を交えるガロウ的には大層腹立たしい。上段、中段、苦手分野な下段斬り。全て殺気を込めた必殺剣、子供の様な敵に幾度(いくど)(はば)まれる屈辱(くつじょく)に支配されゆく。


4番目(フォウ)の魔法を斬ったらしいがこんなものか」

「ア"ア”ッ!? 嗚呼、あん(あの)魔導士のおなご()か」


 ほくそ笑みすらしない相手に余計苛立ち募る(いらだちつのる)ガロウ。

 砂浜で斬り伏せた赤い光のこと(切り裂く爪)を思い出す。あの時『異能者だな』と相手に与えた(言わせた)謎の戦慄(せんりつ)。この相手も己に対し異端(いたん)な力を求め挑んでるのか? さらに腹立たしさを覚えた。


 処で犬人間(コボルト族)でなく狼男(ワーウルフ)帯びた敵を相手取るローダ。

 (もり)が通じず少々慌てた。森の暗がりに潜む地面へ視線を落とす。錆び塗れ(さびまみれ)のナイフを視線が(とら)えた。


 咄嗟(とっさ)()()()()()()敵へ全力で投げつけ錆びたナイフを拾い上げた。


 切れ味? そんな贅沢(ぜいたく)最初(ハナ)から求めてない。それでも銛より剣に近しい形。まだやり様ありそうな根拠(こんきょ)ない自信が湧き起こる。


 ──()()()()……。


 4日前の夜、壮絶(そうぜつ)にやり合った黒騎士マーダ脅威(きょうい)の魔法剣。輝く真空の刃(アディシルド)をふと連想する。封じられた筈の記憶の断片を錆びたナイフへ流し込む創造(イメージ)


「──えッ!?」


 ローダへ加勢に転じようと迫るルシアの大きな翠眼(すいがん)が増々見開かれる。

 ローダの握る錆びたナイフが蒼白い輝きを(にじ)ませるのに気付いた。無論、()()の如く剣筋を飛ばせる訳ではない。


 それでも蒼白いナイフを犬族(コボルト)へ繰り出し今度は首を斬り捨てた。勢いそのまま次の獲物へ脚を引っ掛け倒すと体重を載せた蒼いナイフを敵の胸元に突き立てる。


 ──そんな……。アレじゃまるでやり合った相手の力を?


 一部始終を見てたルシアは、ローダの実力を見くびっていた認識を改めた。

 コボルト族相手なら今の彼でも存分渡り合える。ならば自分は今度こそ赤い光線の主(ダークエルフ)へ標的を(しぼ)ろうと考え直す。


 精霊の扱いに()けてるダークエルフ。それにも(かか)わらず赤い熱線には精霊の気配を微塵(みじん)も感じぬ不可思議(ふかしぎ)。ルシアが不気味と感じた判定理由だ。


 ダークエルフのオットォン、素早く(すばやく)動き回っていたが流石に居所はルシアに知れた。(きびす)を返して一際大きな広葉樹の枝元へ飛び掛かろうと思い立った瞬間の出来事。


「──コンテジオネス、インラメガラ。暗黒神(ヴァイロ)の名に於いて命ずる。蜘蛛(くも)が如き拘束(こうそく)の糸よ。此処にその(かせ)を成せ」


「え、詠唱術!?」


 禍々(まがまが)しく嫌味(いやみ)在る声がルシアの耳に届く。精霊術でなく赤い熱線でもない別の術。

 されど紛う(まごう)事無きダークエルフの嗄れ(しゃがれ)声。それもやたらと勝ちを確信した不気味。不意に地面が赤みを帯びた円状の輝きを放つ。


 暗黒神マーダでなく、その()()()であるヴァイロが扱う魔法陣の術式。

 赤い熱線は攻撃手段じゃなかった事実を思い知るルシア。この陣を地面に描いていたのだ。


 ()()()()()は、もっと考察すべきであったと思い知る地獄の沙汰(さた)をこれより受ける。

 ヴァイロとはこの島(アドノス)の言い伝えにある暗黒神本来の名前。

 マーダが暗黒神を名乗る意義(主張)外連味(けれんみ)過ぎる、或る(ある)意味陳腐(ちんぷ)()()()


 彼の中に()()()()(候補)()()()のを知り得た時点で注意すべき事案であった。


「──『蜘蛛之糸(ラグナテーラ)』!」


 ダークエルフ・オットォンの呪文(スペル)完遂(かんすい)


「ぐっ!?」

「き、貴様まさか!」


 何もないのに腹の辺りを縛られ吊し上げられるティン(女武術家)トレノ(大太刀使い)。オットォンに取って味方で在る筈の両者。


「なっ!」

「ひ、引っ張られる!?」


 ローダとガロウも同じ目にあう。幾ら(いくら)足搔(あが)こうが如何(どう)にも出来ない。


「くぅッ! ……こ、声す……ら」


 ルシアも同様に吊し上げられるのだが、彼女だけ全く以って異なる状況に()とされる。


 両手両足をそれぞれ見えぬ何かに拘束(こうそく)される感覚。それだけに収まらない。首と胸元すら同じく縛られ悲鳴すら叶わない。呼吸はおろか心臓さえ何かに鷲掴み(わしづかみ)された恐るべき感触。


 ルシアのみ大の字の形で吊し上げられるまるで刑執行(けいしっこう)の如き様。


 スーッ。


 ルシアが体勢を変えられないまま、広葉樹の巨木の先へ引っ張り上げられる。

 そこには継ぎ接ぎ(つぎはぎ)だらけのドス黒い顔。食い千切られた痕が在る黒き長耳。さらに左眼だけ不自然に埋め込まれた感じの赤目。


 ダークエルフのオットォンが(よだれ)()らし美し過ぎ(ルシア・)る金髪の女性(ロットレン)面前(めんぜん)迄引き上げたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ