表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/163

第48話『Wings of Möbius(双翼の錦)』 B Part

 ルイス・ファルムーンの意識が目覚める以前──。

 ()()()()軍と云って差し支えない連中相手に蹂躙(じゅうりん)余儀(よぎ)なくされた戦之女神(エディウス神)の聖地アディスティラ。


 この街並み(聖地)を解放する。

 これはローダとルシア、自分達の意志ではなかった。

 だがリイナ・アルベェラータと云う記号が運命の螺旋(らせん)を伸ばし、父を喪失(そうしつ)した哀愁(あいしゅう)引き摺る(ずる)賢士(けんし)スオーラ・カルタネラと彼等を繋げた。


 それはあたかも人々を紡ぐ(つむぐ)因果(引力)蠢い(うごめい)た様。この後、さらに違う者を結ぶ運命の新たな前兆にも繋がり往くのだ。


「はぁ、はぁ……。ど、何処?」


 兵学校跡地、地下の避難道を跳ねながら駆け、荒れ果てた街並みへ18の子供から大人、移ろう中途(ちゅうと)らしき淡い息弾ますスオーラの黄昏(たそがれ)()()()を追い求めた。


 ひゅぅぅ……。


 返事を転じた風、スオーラの星空示すスカーフを揺らす。風が導いた向きへ視線移す。人隠せそうな瓦礫(がれき)の山を見つけた。


 ▷▷──静かに、そっと此方へ。


 随分()()()()()()()御願い(お伺い)。スオーラは、ハッと息飲み、荒れた息整える。

 鍵の魔女だと揶揄(やゆ)された相手だ。決して周りに気取(けど)られてはいけない当然、今さら気付いた。


 周囲の視線気にしながら戦乱の残り香(瓦礫の山)へゆるりと近寄る。

 意外な光景が待ち受けていた。迷彩色のマントに身を包んだ()()をみつけた。


「ふぅ……良かった。貴女がスオーラさんね、私が()()()()ルシアよ」


 マントのフードを払い除けた金髪の美女、悪戯(いたずら)な片目(つぶ)ってスオーラへ寄越した初見の挨拶(初めまして)


 スオーラは、即感じた。

 リイナの手紙で()()()通りの美しさ(たた)えた女性だと。但し、やけに(すす)けた姿形。物乞い(ものごい)の様相を(てい)していた。


 ──がっ、魔女の隣に座る未だフード取らぬ()に心惹かれた。


 鍵の魔女ルシアは、英雄を操る妖しき存在。操り人形は既に壊れたと世間から聞かされた。

 暗がりの最中、何故男だと確信したのか──自分の理由なき思い、答えを知りたくなった。


 未だ正体明かさぬルシアの連れと(おぼ)しき男。 不意にルシアがローダとスオーラを手を握らす。スオーラ、何かが弾け魂の中、駆け巡る響き渡り。


 (とき)を越える──そんな感覚知る由もない。

 されどルシアが繋いだ男の20年が一挙津波と為りて押し寄せた。他に今の自分を語る(すべ)を持ち得なかった。


「あ、貴方がローダ・ファルムーン。英雄の座」


「……そんな偉そうなものじゃない」


 震撼(しんかん)走り抜け言葉(にご)らすスオーラへ返すローダの無愛想。フードの中で籠り(こもり)往く。

 特段この少女を嫌っている訳ではないのだ。彼が語らずとも娘ヒビキが()()()()()()。後に続ける話題を思いつかなかった。


 然しヒビキとルシア、二人の御節介が周りに聞かれたくないローダの秘め事(企み)。スオーラの心へ真っ直ぐ届いたのである。


 だが──リイナ・アルベェラータが紡いだ運命、思わぬ処へ爆ぜり散り往く。


 ブンッ!

 ズガッ!


 突如、風の精霊斬り裂く棒術。スオーラの手を握るローダの腕目掛け振り下ろされた。

 ローダは咄嗟(とっさ)に腰に差した装い新たな二刀。その内、一刀だけ(さや)毎腰から抜き取り、棒と交わる激しき出逢い(争いの火)演じた。


「スオーラ様に近づく不届き者!」


「──ッ!」


 それは戦之女神(エディウス神)の先兵、僧兵の棒術に違いなかった。

 スオーラを知り抜いた感、匂わせる怒り(にじ)ます。


 全身傷痕だらけ、特に左目から(ほお)まで裂けた谷間の如く続いた(あと)が最も目立つ。無駄なモノ削ぎ落とした若き男の肉体美。


 深夜の闇に沈む袖知らずのハイネック。灰色の瞳、飾りではない誓い思わすピアス。


 何よりスオーラ様へ触れた男が赦せぬ少年兵の蜃気楼(揺らぎ)、怒気を己の身長より長い棒に染み渡らせた。


「ま、待ちなさいフィエロ!」


 スオーラが(とどろ)かせた制止の声。

 構わず振り切り、無礼千万(せんばん)な男へ戦舞(せんぶ)を風神の様に叩き込む。地面蹴って空から振り切り、受けられた途端(とたん)、横へ薙ぎ(なぎ)払うフィエロの迅速(じんそく)


 だがローダは、一歩も動じず剣を抜かず(さや)を握り締めたまま全て受け切る。殺意無き意識の表れ。


 ──クッソ! なんでこの野郎()かねえんだ! それに何だかやけに()()


 ──随分()()棒術だな。


 フィエロと呼ばれた僧兵。技の冴え、動きの映え、決して馬鹿に出来ぬ。


 されど黒塗りの鞘に納めた剣で弾くローダが、明らかに(しの)いでいた。

 焦り感じるフィエロの若さ、相対するローダは、フィエロから殴られる都度、異様な熱気を受け流し、若者がみせる力の本質見抜いた。


「デエオ・ラーマ、戦之女神(エディウス神)に我が言の葉を捧ぐ! 斬り裂け──『言之刃(フォグラマ)』!」


 ズガッ! ズガガガッ!


 金属に転じた木の葉が渦巻き、フィエロの足元へ夜空から無数に転じて降り注ぎ地面削る石礫(いしつぶて)呼び込む。

 (ひる)まずにいられぬフィエロの怒髪天(どはつてん)跳ねながら後退(バックステップ)せざるを得ない。()()に斬られる愚かを如何(どう)にか避け切る。


 言っても聞かぬフィエロを無理矢理止めたスオーラ、凛々(りり)しき賢士(けんし)呼び込む攻勢の奇跡であった。


 その鋭き様──。

 これ迄生死賭けた争い幾度(いくど)も演じたローダとルシアさえ戦慄(せんりつ)、背中駆け抜けるのを感じた。


 ◇◇


 ──(貴女)は誰?


 漆黒(しっこく)──なれど果て無く()()()()()銀河、宇宙の欠片(かけら)()()


 閉ざされし銀河の()()、決して触れぬ互いを見やる少年少女。周囲を渦巻く雛鳥(火の鳥)心音(心の声)代わりに鳴り響く。


 ──僕はジオーネ(私はリイナ)


 すべからず同刻に響き渡る()嘶き(いななき)


 ──私は(僕は)貴方の事を知らない(リイナの事が判らない)


 見えぬ壁越しにて語り合う少年と少女の不可思議。

 この様子、ジオーネとリイナの視線が絡み合った刻の深層心理を示した図式だ。


 ──()()()()()()()()()()()()()()()


 記憶中枢ではない()()()──理屈じゃ説明出来ぬ。

 即時理由の在り処を求めたがる大人の世知辛さ、(さが)し出さねば安心出来ない切なさ。


 されど幼き器はそんな上辺(うわべ)要らぬのだ。歳を重ねるにつれ、知識の代価に失われる大切な何か。


 ──あ、アレ? 何これ(な、涙)


 ジオーネとリイナは()()()()()に浮き、鏡に映えた己を見る気分なのだ。(ほお)を伝うものの在処(ありか)、これだけ理由を知りたかった。


 知り尽くした。

 求め合った。

 そして漸く(ようやく)再び巡り逢えた。


 それなのに、間違いないのに互いを知らないもどかしさ。


 不死鳥受け継ぎしカスード家の斬新(ざんしん)な器ジオーネ。

 ジオーネ(水の惑星)──G()e()o()の名前刻んだ通りの重力。

 この邂逅(かいこう)を天性そのまま創り出し、リイナと云う名も無き星の輝きと、互いが紡いだ火炎の()()を引き込んだ。


 輪廻(りんね)の炎──軌跡(奇跡)描いた二人の不死鳥だけ、()擦り(すり)切れるほど重ね交わった(ほむら)だけが描ける(むな)しさ、切なさだけが残留した。

 挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ