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第47話『Twilight of the divine(神性の黄昏)』 A Part

 エドル神殿跡をマーダの手から取り戻すべく出立したリイナ・アルベェラータとベランドナの両者。

 エドルは、エトナ火山をディスラドと云う気狂いが噴き飛ばし、己こそ美をこよなく探求する神主張すべく神殿の本家、パルテノンさえ超越した巫山戯(ふざけ)が過ぎる証を建造した。


 されど護りの女神(ファウナ神)紛争(ふんそう)の折、その過半が消失。

 神殿の欠片(かけら)転がり、主人ディスラドは、この世から失せた。神殿跡──()()と云うには余りに若輩(じゃくはい)()と云わざるを得ない。


 然し神殿跡に噛り付くよな別の主人が台頭(たいとう)、外れた伝承(でんしょう)を結び付けた。

 不死司る(つかさどる)炎の鳥、己が魂を常に燃焼しながら飛翔した不死鳥(フェニックス)

 エドル神殿にてこれを具現化──この世界軸へ解き放つ召喚(しょうかん)成し得た褐色(かっしょく)の女性、名をSCALE(スケイル)


 この奇跡を息子ジオ・スケイルが継ぎ、血の系譜(けいふ)繋ぎ止めCASUDE(カスード)へ転じた。

 何しろ不死鳥と云えば、若さを保ち永久を成す。あらゆる栄華極めた者が最後に欲する至高。


 スケイル家が為した不死鳥は不死を与える存在に非ず、然し『それでも!』と欲する愚者(馬鹿)が後を絶たない。

 そこでSCALE(スケイル)のアナグラム、CASUDE(カスード)と名乗り転じた者共が密やかに継承(けいしょう)

 神殿を敢えて完全なる復刻なさず、エドルは辺境(へんきょう)を世界へ植え付けた。


 この伝承『U』が余剰(よじょう)──。


 アルファベットの文字面通り、不死鳥の力を注ぐ(資格)を有する意味。

 或い(あるい)は人の夢、永久機関の様に燃え盛る不死鳥の炎を、人が造りし最大の禁忌。Uranium(ウラニウム)(おぼ)しき(さま)を拾ったとも云われる。


 なお、余談だが嘗て(かつて)エトナ火山を有したこの地をEDOL(エドル)と命名したのは、火山を噴き飛ばしたDislard(ディスラド)当人。

 今と為っては意図不明だが、永久な(Eternal+)る己(Dislard+)(Oracle+)祀る(Legacy)地。己の芸術成す行為を全て正義と肯定した彼なら、これほどの驕り(おごり)を為したとしても何ら不自然ではない。


 処でそのエドルへ向かう道中、吹き飛んだ跡地へ根付いた樹々が森を成そうとする景色の中。リイナが森の民ベランドナへ(たず)ねた問いの返答。聡明(そうめい)過ぎる少女の想定、大方正解であった。


 ただ一点──。

 ルシアは命尽きる寸での処、ハイエルフから鍵の正室。サイガン・ロットレンの娘として再構築された時分(タイミング)が、少々遅かった。


 黒騎士マーダがアドノス島をヴァロウズ引き連れ蹂躙(じゅうりん)した際、彼女自身がこの世に存在しなかった事の顛末(てんまつ)

 ルシアとして生まれ変わった後、Resistance(抗う者共)へ身を寄せる以前。


 彼女は父サイガンの指令(Logic)通り、フォルデノ城兵士へ身を寄せるなどアドノス島に於ける情報収集に従事(じゅうじ)した。結果、フォウがエドナ村襲撃の際、『この女、何者!?』と成った次第だ。


 さて、少々前置きが長引いた。

 リイナとベランドナ、何事もなくエドル神殿跡へ無事到着果たした。


 神殿跡で待ち受けていたのは、火の鳥を(かたど)った正装を(まと)った老人の従者。

 案じていたマーダ(ルイス)の息が掛かる者ではなかった。


「どうぞ──我らの長が奥で御二人の到着を待ち兼ねておりました」


 従者の気になる言い回し、リイナとベランドナが来るのを預言(よげん)……ではなく確信してたらしい。

 顔見合わせながらも、従者から怪しげなる雰囲気感じず、リイナ達は素直に応じた。


 抜け目ないベランドナ──精霊達へ静寂(せいじゃく)なる心の呼び掛け、従者の吐く息遣(いきづか)いの変化や、神殿跡の奥深くで待ち受ける者達の気配を事前に察知したのだ。


 あくまで神殿()、従者に連れられ慎重を(きっし)ながら進むリイナ達。

 世辞にも整った内部とは言い難いのだが、人が往来出来るだけの道筋は確保されていた。


 やはり気掛かりなのは、此処も過去の戦場であった情報(噂話)

 人が争った形跡、端的に云えば血の匂い。嫌な残り()殆ど見つからぬ不可思議。

 ベランドナとリイナ、異世界送りか幻術の類(イリュージョン)にでも掛けられた己を疑った。


 何事も起きる事無く、神殿の大広間へ通された。

 天井から()れ下がる巨大なタペストリー。老人の衣服に描かれた火の鳥と等しい紋様(もんよう)一際(ひときわ)大きく描かれていた。不死鳥こそ我らの()()、そんな気分滲ませた。


 されど大広間の最深部、これ迄の疑問をすべからず吹き飛ばす小さな存在が鎮座(ちんざ)していた。

 300年以上を()()()()()、ベランドナですら息飲む圧倒的存在感。


 リイナより低いと思しき背格好、歳も恐らく10を越えたばかりな印象。

 だいぶ大きめな緑のクローク、(めく)れた襟元(えりもと)飾る左右対称なる金色。鳥が雄々(おお)しく翼広げた様子を彷彿(ほうふつ)させる。クロークの下、聖職者滲ます黒のカソックが覗き見えた。


 だがこの少年をより一層際立(きわだ)たせたるは、赤と黄色のオッドアイ。

 それもリイナ・アルベェラータの姿形を優しく真綿(まわた)拘束(こうそく)する赤みさした笑顔だった。

 生涯待ち焦がれた存在を遂に捜し(さがし)当てた、ルーブルに飾られたどんな芸術よりもリイナこそ至宝。歴史を語るも人の温もり伝わらない美術品よりリイナのみ()がれた視線。


 リイナ、(とき)の流れ吹き飛ぶ少年の魅力に心奪われた。周囲の者全てを空虚へ転じ、舞台上に佇む(たたずむ)のは二人きり。異様な亜空間を瞬時、錬成(れんせい)した相手に包まれた気分。


 緑の少年が語り掛けたき相手は自分独り──自ずと知れた。そして言葉聞かずとも瞬時悟れた。彼こそエドル神殿跡の長、不死鳥(フェニックス)の血、受け継いだ神聖(しんせい)である確信を。


 大広間に辿り着くまでの最中、受けた偽物の空気漂う不信感。

 されどこの少年だけは本物である()()()信頼(あふ)れるのを汲み取るリイナらしからぬ先走りが如何(どう)にも留めておけなかった。


 自分は少年の枠組みから外れた気分感じたベランドナ、オッドアイが(とら)われの人生から解放望む。女神の化身(エディウス神の司祭)へ送り届ける願望(かす)んだ。


 ◇◇


 ローダ・ファルムーンとルシア・ロットレン、戦之女神(エディウス神)の都。ロッギオネ奪還に向けた歩み。

 日中は(ふところ)(さび)しげな庶民(しょみん)装い(よそおい)、夜中はルシアの()()頼みで約4日の行程。

 ロッギオネの中心部、アディスティラへの侵入を果たした。


 問題はこれから、未だ山積みと云えた。

 戦之女神(エディウス神)の先兵達は、最下層の僧兵・それらを束ねる修道騎士。

 そしてリイナと等しき司祭(クラス)と、攻撃の奇跡扱う賢士(けんし)(クラス)が軒を連ねる。


 特に血気盛んな割、頭へ血が回らぬ僧兵と修道騎士が厄介な存在。

 何しろ自分達は神の御旗掲げ、その為に命捧ぐ(ささぐ)

 ドゥーウェンがロッギオネ救援の便り(たより)幾ら(いくら)出そうが『Resistance(民衆軍)!? そんな烏合(うごう)の衆なぞ話にならん!』すべからず切って捨てた。


 民衆の内側から決起した志願兵の集まりがResistance(民衆軍)

 対して神の為に拳や剣を振るうのが僧兵や修道騎士なのだ。兵の本質が異なる両者。


 然も賢き(かしこき)司祭や賢士は、神政(まつりごと)には意見するが、争い事は殆ど口を(はさ)まない。

 ハッキリ語ろう──頭の固い修道騎士を相手に正義を語る気力を持ち得る連中は極少数。


 重ねて自分で啖呵(たんか)切りながら、黒の剣士(ルイス)に大敗。死亡扱いで地に()()()英雄ローダ。

 それを()()()()に仕立てた鍵の()()。妖しきことこの上なき存在とされた。


 マーダ軍の猛攻(もうこう)を受け、失墜(しっつい)した神の都。戦之女神(エディウス神)の像や聖書など砕かれ燃やし尽くされた。

 それでも愚直(ぐちょく)なる僧兵達は残兵集め、助け乞う(こう)街の民衆を相手にしない。

 (おさ)()()()()へ転じようとも神を守護する意志を決して捨てなかった。


「さぁて……どうしたものか」


 ドゥーウェンから英雄復活の狼煙(のろし)上げるべく、演出家を頼まれたルシア。洗えぬ金髪を抱えた。

 挿絵(By みてみん)

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