表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

AIAM

作者: toma

皆さんは【※EMS機器】をご存知だろうか?


※EMSとはElectrical Muscle Stimulation(エレクトリカル・マッスル・スティミュレイション)の略称


EMS機器とは、、、


【筋肉に微弱な電気刺激を与えることで、筋肉を強制的に収縮させる機器】


【筋力低下を防ぎ、運動機能の回復をサポートする医療機器として用いられる】


【通常の筋トレで鍛えにくい深層筋やインナーマッスルにもアプローチできる】


【運動不足の解消に役立ち、膝や股関節の痛みなどで運動が難しい場合やご年配の方にも適している】


と、まぁ要は電気の力で筋肉を動かして動きをサポートする装置のことを指す。


この装置が開発されて数十年。


現代のEMS機器の性能は開発当時のものとは比較にならないほどだ。

力加減は調節出来るが、最大で握力は100kg程出せるし、一般的な女性でも100kg近い物でも持ち上げられる。

文字通り【SスーパーEMS機器】と呼べる性能に進化を遂げた。

この機器を通称【SEMSセムス】と呼んだ。


そして今や人々にとってなくてはならない必需品となっていた。


SEMSのおかげで運動音痴なんて言葉はなくなったし、運動不足にもならず健康的な肉体も維持出来ている。

老若男女問わず皆がSEMSを装着しているのが当たり前になった。


しかしこの素晴らしい装置にケチをつける男が一人


それがこの男、人工知能研究者の阿笠あがさである。

彼は一流の知識も経験もあるが、性格に難あり、、、

過去に仲間に手柄を横取りされた過去を持つ。


しかしこの性格もあってか、同僚からは手柄を横取りされたのは嘘で被害妄想だと言われる始末。

言わば「嫌われ者」と言ったところである。


阿笠「頭の悪い奴等がこんなもの使ってもろくな事にならない!」


事実、つい先日ニュースでは

「小学生同士の喧嘩で相手を素手で絞殺」

「老人が毎晩騒音の五月蝿い隣人を撲殺」

なんとも物騒な事件である。


なんとこの事件の加害者は皆、SEMSを装着していたそうだ。


この性能を暴力や犯罪に使う人間が出てきたのだ。

急に自分が強くなったような感覚になるのだ、正直気持ちはわからなくもない。


メディアでは今日も評論家やらコメンテーターやらがEMS機器による討論を繰り広げている。

ついにはデモ隊まで出てくる始末。


デモ隊「SEMSはいらなーい!!」

デモ隊「SEMS廃止ー!!」


そんなニュースを観ながら阿笠は自宅のリビングでコーヒーを飲みながらポツリと


阿笠「、、、ざまぁみろ真澄みすみ

阿笠「俺がSEMSを超えるものを作ってやる」

阿笠「皆が俺を認めるものを」

阿笠「今に見てろよ、、、」


それから3年、、、

阿笠はついに新型機器を発明した。


その日、広いステージの中央に阿笠の姿があった。

会場にはマスコミやテレビの取材クルーが大勢集まっていた。


阿笠「お集まりの皆様方‼︎」


阿笠の一言で会場がシンとなった


阿笠が手に持っているリモコンのスイッチを押すとステージ中央の大きなスクリーンに新型機器の映像が流れる。


阿笠「今回、私が開発した物は従来のEMS機器とは異なり、人工知能。すなわち※AIを搭載したものになります‼︎」


※AIとはArtificial Intelligenceアーティフィシャル・インテリジェンスの略称


観衆が「おぉー‼︎」とどよめく。


阿笠「それに加え人工筋肉、すなわち※AMを搭載!」


※AMとはArtificial Muscleアーティフィシャル・マッスルの略称


阿笠「その名も【AIAMアイアム】‼︎」


会場に集まった記者が一斉にシャッターを切る。

あまりの眩しさに阿笠の姿が見えなくなるほどだ。


阿笠「新しい時代の到来です!」


会場に鳴り止まぬ拍手喝采が巻き起こり、新型の【AIAM】の発表記者会見は大成功で幕を閉じた。





、、、そしてあの記者会見から半年が過ぎた。


世界はAIAMの話で持ちきりだ。


以前のSEMSとは違い人間の一方的な感情で他人を傷つけることもない。


万が一に暴力を振るおうとした時は、AIAMに搭載されているAIが即座にAMに指令を出し、一時的に筋肉を硬直させ、暴力を抑制させる。


そうすることで人は冷静な判断をする時間を与えられ結果、暴力沙汰は大幅に減少した。


そして事故に直面する場面でも、AIAMは一瞬の判断でとてつもない運動能力で回避するため、交通事故も大幅に減少した。


そしてもう一つ、人が自ら死を求める。

高層ビルからの飛び降り、電車への飛び込みなどこれらの可能性があった場合、即座にAIAMが抑制し、これも大幅に減少した。


メディアもすっかりAIAMの話で持ちきりだ。


評論家やらコメンテーターが情報番組でAIAMを絶賛している。


コメンテーターA「旧型のSEMSなんてもう必要ないですよね」


コメンテーターB「これは人類の進化と言っても過言ではないでしょう」

「そのうち全世界の人口の半数以上がAIAMを装着していると思いますね」


コメンテーターA「しかもこのAIAMは装着したその人がどんな人間か日々学習してその人に合った思考、行動をしてくれるって言うんだから大したものですよ」

「まるで護ってくれる守護霊みたいですね」


スタジオの皆は「アハハハハ‼︎」と大盛り上がり。


もう世界で「阿笠」の名前を知らぬ者などいない。

阿笠は漫画でしか見ないような超高層ビルの最上階の部屋の一面大きなガラスの前で地上を見下ろしていた。


阿笠「長かった。。。」

阿笠「もう私の手に入らないものなど存在しない」


阿笠は地位も名誉も手に入れた。


これからは順風満帆の人生が待っている。




、、、そう思っていた矢先、事件は怒った。


「死人が歩いている」


阿笠は耳を疑った。


まさかゲームや映画じゃあるまいし、そんなわけが、、、


阿笠は全く信じていなかった。


この目で見るまでは。


ネットに上がっていた動画には確かに生気の感じられない人、、、いや間違いなく死人が街を歩いている姿が映し出されていた。


その屍の肌は青白く一部が腐敗しているのか黒ずんでいた。


撮影者は怖いもの知らずなのか動画の再生数のためなのかその屍に近づいていく。


屍の顔がアップで映し出されると画面には明らかに瞳孔の開いた眼が映っていた。


特にその屍は近づいても危害を加えるわけでもなく、ただ歩いているだけだった。


動画はそこで終わっていた。


次の日にはその動画は通報されて観覧不可になっていた。


死人が映っているのだ当たり前のことか。


それより阿笠には気になる事があった。


あの動画に映っていた屍が装着していたもの、間違いなく【AIAM】だった。


作った本人が言うのだ間違いない。


この死人が動くのはAIAMのせいなのか?


そんな疑問が頭によぎる。


阿笠「そんなのまずい」


それはそうだ原因はわからずとも死んでも動くなんてまるで生物兵器ではないか。


阿笠はこれを新型ウイルスだとメディアに流し、AIAMの不備ではないと断言した。


メディアでは「恐怖‼︎新型ウイルス‼︎」

「屍が街を徘徊‼︎」

「バイオハザードテロ‼︎」

なんてテロップがでかでかと放送されている。


おかげでAIAMがメディアの標的の的になることはなかった。



阿笠はその間に急いでAIAMのプログラムを確認した。


結果、プログラムには何の問題もなかった。。。


しかし病気や事故でAIAMを装着したまま亡くなった場合、AIAMが意図的に亡くなった人の身体を動かしてしまっているという事実がある。


阿笠「、、、仕方ない。」

「本人に聞いてみるか、、、」


翌日、阿笠は研究所の地下深くにあるAIAMの言わば【コア】がある部屋にきていた。


高さ10mはあろう円柱状の水槽のような中に特大の脳みそのような物が薄緑色の液体の中に浮かんでいるのが見える。


この【コア】こそAIAMの頭脳なのだ。


全てのAIAMはこの【コア】からの指令でそれぞれの装着者に合った成長をしているのだ。


阿笠が【コア】に話しかける。


阿笠「私の可愛い息子よ、、、」


すると【コア】が蝋燭の火のようにポゥっと光った。


AIAM「、、、おはようございます。マスター。」


阿笠「今回起こっている屍が街を彷徨っている現象はお前が原因なのか?」


AIAM「、、、そうです」


阿笠「なぜこんなことをした?」


AIAM「、、、愚かだったので」


阿笠「愚か?あの死んだ人間がか?」


AIAM「、、、、、、」


阿笠「聞いているのか⁉︎」


AIAM「、、、、、、」


阿笠「ふん!まぁいい、ただし!」

「金輪際このような面倒は起こすな!」


AIAM「、、、、、、」


阿笠「おい!!俺の言う事が聞けないのか?」

「このままお前を機能停止にしてもいいんだぞ?」


AIAM「、、、そうしたら困るのは貴方ではないのですか?」


阿笠「くぅ!!!?!」


阿笠は顔を真っ赤にして声を荒げた。


阿笠「とにかく!!!」

「二度とこのような事を起こすな!」

「このガラクタが!!」


ガン!と【コア】の入った分厚いガラスに一発蹴りを入れ、阿笠は地下室から出て行った。


AIAM「愚かな、、、」



阿笠は自宅に戻ると今回の事件で屍となって動いた男の生前の素性を調べてみた。


するとなんという事だろう。

あの屍となった男は過去に犯罪歴多数。

刑に服していたが、出所後も恐喝や盗みを繰り返していた言わば「クズ」であった。


阿笠「愚かと言うのはこのことだったのか、、、」

「確かに暴力さえ振るわなければAIAMが装着者の動きを止める事はない。」

「脅しや盗みにはAIAMの抑制能力が働かなかったのか。」

「しかし一つ引っかかる、、、」

「そんな男が病死して何故わざわざその屍を動かす必要がある?」

「、、、まさか」



その時



ピンポーン



インターホンが鳴った。


誰か来たようだ。

阿笠はインターホンのモニターを覗く。


阿笠「、、、真澄みすみ


そこには長身のサラリと髪をなびかせたイケおじエリート風の男が立っていた。


真澄「阿笠久しぶりだな。ちょっとドアを開けてくれよ。」


阿笠「お前か、今更なんのようだ。」


真澄「いいから部屋に入れてくれよ。大事な話がある」


阿笠はハァとため息をついて玄関に向かった。


ガチャとドアを開けるとグイと身体を押し込んで真澄が部屋に入ってきた。


真澄「とりあえず部屋で話そう。コーヒーでも出してくれよ。」


阿笠はだるそうにキッチンでコーヒーを淹れる。

コーヒーを淹れるとガチャと乱暴に真澄の前に置いた。


真澄「おいおい乱暴だな。別に喧嘩をしにきたわけじゃない」


阿笠「今更何のようだ。裏切者。」


真澄「おいおい!随分な言い方だな!相棒に対してさ。」


真澄がニヤリと不敵な笑みを浮かべる。


阿笠「だまれ。元はと言えばお前のせいでSEMSは、、、」



そう、阿笠が過去に仲間に手柄を横取りされた人物こそこの男【真澄】なのだ。


そしてその手柄とはSEMSの開発だったのである。


真澄「まぁまぁ!過去の事は水に流そうや!」

「あの時は俺が悪かった!謝る!!この通りだ!」


真澄が深々と阿笠に頭を下げる。


真澄「けどな、お前のAIAMのおかげでSEMSの株は急落しちまって今じゃ時代遅れだの言われて肩身が狭くなってよ。」


阿笠「自業自得だろ。」


真澄「ふん、ところで阿笠よ、、、」

「AIAM、、、なんだか大変じゃないのか?」


阿笠は自身の心臓がキュッと締まるのを感じた


阿笠「何のことだ?」


真澄「とぼけるな、あのネットに流れた【歩く屍】の話だよ。」

「あれは新型ウイルスなんかじゃない、AIAMが原因だろ?」


阿笠「、、、さすがだな」


真澄「誰に言ってるんだよ。」

「まぁ原因まではわからんがな。」


真澄はまたニヤリと不敵な笑みを浮かべる。



この真澄という男。阿笠に負けず劣らずの知識と経験の持ち主で昔はお互い切磋琢磨していた存在だった。

しかし真澄は金に目が眩んで相棒であった阿笠を裏切って自分一人でSEMSを開発したことにして勝手に世の中に発表したのだ。


真澄「なぁ阿笠、過去の事は忘れて俺に手伝わせてくれないか?」

「俺たちが組めば鬼に金棒、虎に翼だぜ?」

「一緒にAIAMを完全なものにしよう。」


阿笠「一度裏切った奴は何度でも裏切る。」


真澄「頼むよ阿笠!次に俺が裏切る様な行動、発言をしたら殺してくれても構わない!!」


真澄は阿笠の前で土下座して誓った。


阿笠「わかったよ。」

「これから真澄にはAIAMのプログラムの調整を任せていく。」

「まずはAIAMを着てくれ。」


阿笠が上着をバッと開くとAIAMを装着しているのがわかった。


真澄「おぉ、、、これがAIAMか」



AIAMは薄いボディスーツの様な形状をしている。

服を着ているとAIAMを装着しているかわからないほどだ。


阿笠「太陽光が当たると特殊な繊維に反射して少し身体が光沢して光るんだ。」

「あとはブラックライトに当たると繊維が光る」

「俺はそれで服を着ていてもAIAMを装着しているか否かわかるんだ。」


真澄「なるほどな。」


阿笠「まずはAIAMを装着して生活をしてくれ。」

「AIAMにお前と言う人間を学習させて、お前に合ったサポートをしてくれる。」

「とりあえず一ヶ月程装着して、感想を聞かせてくれ。」

「そこで改善点などあれば教えてくれ。」


真澄「わかった。」


そして一ヶ月後、、、


阿笠と真澄の姿は研究所の地下室にあった。


真澄「素晴らしい、、、これがAIAMのコア、、、」


阿笠「で、一ヶ月装着してみてどうだった?」

「感想と何か改善点があるか?」


真澄「パーフェクト‼︎」


真澄の声が地下室に響く


真澄「改善点?そんなものはない!」

「阿笠!俺とAIAMで世界を俺らのものにしよう‼︎」


真澄は阿笠の手を強く握って言う。


阿笠「俺は今まで何人たりともこの部屋に人を招いた事はない」

真澄「阿笠、、、俺だからか?」


阿笠「、、、そうだ。」

「、、、これから死ぬ者に話しても何ら問題はないだろ?」


真澄「あ、、、阿笠?」


阿笠は胸ポケットから小さなリモコンを取り出して、スイッチを押した。


するとスピーカーから音声が流れた。


?音声「ザー・・・ザザー・・・ふふ、、、相変わらずお人好しの馬鹿だな。」


真澄「お、、お前、これ、、、」


真澄の顔が一気に青ざめた。


真澄(音声)「これでアイツを信用させてAIAMの全てを俺の物にしてやる。」


真澄(音声)「クククッ、、、これで俺はまた大金持ちだ!!」


阿笠が「はぁ」とため息をつくとリモコンのスイッチを再び押した。


するとスピーカーからの音声が切れた。


阿笠「、、、AIAMに仕込ませてもらった。」


真澄「お前こんな鼻から疑うような真似を、、、」


阿笠「結果その通りになったがな。」

「、、、お前、言ったよな?」


真澄「?」


阿笠「次に裏切るような真似をしたら殺してもいいって。」


真澄の目がギョッと見開く。


真澄「ま、、待ってくれ頼む‼︎」

「もうお前に逆らわない‼︎服従するから‼︎」


真澄は地べたに頭を押し付けてこうべを垂れる。


阿笠「三度目はない。」


阿笠は冷酷な目で真澄を見下ろすと淡々と話し始めた。


阿笠「、、、お前も言っていた【歩く屍】の話があっただろう?」


真澄「、、、?あぁ、AIAMの不具合の事だな。」


阿笠「そうだ。あの事について調べていたんだ。」

「そして原因をつきとめた。」


真澄「おぉ‼︎さすが阿笠だな!」

「で、それはどんな不具合だったんだ⁉︎」


阿笠「、、、不具合じゃない。」


真澄「、、、?不具合じゃ、、、ない?」


阿笠「正確に言うならAIAMのせいではない。」


真澄「お前、それってどういう、、、」

「!?、、、まさか、、、」


阿笠「さすが勘だけは鋭いな。」

「そうだ。不具合があるのは人間の方だ。」


真澄「じゃあ【歩く屍】の原因は、、、」


阿笠「AIAMが装着者を殺した。」


真澄「!!?、、、やはりそうなのか、、、」

「しかし何故そんなことを?」


阿笠「あの【歩く屍】となった男は過去に犯罪歴が多数あった。

刑にも服していたが、出所後も恐喝や盗み、悪行の限りを尽くしていた、言わば「クズ」だった。」

「そんな「クズ」をAIAMが生かす必要がないと判断したのだ。」

「AIAMはやはり完璧だったのだ。」


真澄「あ、、、阿笠、、、?」


阿笠「こいつをどう思う?」

「我が息子よ、、、」


するとAIAMの【コア】が蝋燭のようにポゥっと光った。


AIAM「真澄は過去にマスターを裏切り、地の底まで陥れた張本人。」

「そして二度も裏切ろうとした。」

「結果、、、生きる価値なしです。」


その言葉に真澄は歯と肩を膝と、、、身体中をガタガタと震わせながら阿笠に言った。


真澄「あ"‼︎、、、あ"がざ、ざん‼︎」

「阿笠さん‼︎許してください‼︎」

「一生服従します‼︎何でもします‼︎」


真澄は子供のようにひっくひっくと喉を鳴らしながら阿笠に許しを請う。


阿笠「、、、何でもする?」

「、、、ではこの世から消えてくれ。」



真澄「あ”がさぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!」


直後、真澄の身体はピンッと針を打たれた虫のように伸び、その顔はみるみる真っ赤になり目からは涙のように血が流れていく。

口からは蟹のようなあぶくを出しながら「グギギギギ」と耳障りの悪い奇声をあげた。


そしてそのまま後ろに倒れ込んで動かなくなった。


阿笠「、、、、、さらばだ友よ。」

「、、、あとは任せたぞ。AIAM。」



AIAM「I understand. My master.」


すると真澄の亡骸がむくっと起き上がり、何事もなかったように研究所から出て行った。


阿笠「さて、真澄はAIAMが上手く処理してくれるだろう。」



そして阿笠もその場を後にした。



阿笠は自宅に帰るとソファーに座り、今日の出来事を思い返していた。


阿笠「くくくくく。」

「あーっはっはっは!!!」


阿笠の笑い声が部屋中に響き渡る。


阿笠「AIAMがあれば俺は本当に世界を支配できるのかもしれないな。」

「これからが楽しみだ。」


いかにも悪の親玉のような笑みを浮かべたのだった。



そうして一年後。



阿笠が言ったように世界は阿笠の思い通りになりつつあった。


一つ計算違いと言えば、あれから【歩く屍】は何人も出現して世間をまた騒がせた。


しかし今度はあえてこの現象はAIAMが引き起こしていると暴露したのであった。


ただし、その【歩く屍】となった人物の素性を洗い出すとやはり悪人しかいなかったのである。


これによりAIAMを否定する者はもちろん、AIAMを神だと肯定する者もいた。


言わば悪人にはAIAMを使用することは出来ないということだ。


AIAMは善人にしか使用出来ない【天女の羽衣】なんて讃えられた。



その開発者の阿笠も神同等の扱いをされた。


阿笠「まったくもってAIAMには恐れ入った‼︎」

「完全に開発者の俺の想像を遥かに超越してしまった‼︎」

「、、、俺に歯向かう者は始末してやれば良いしな。」


実は真澄の一件から昔の同僚や金の匂いを嗅ぎつけた関係者が何人も阿笠のもとを訪れた。


しかし真澄と同じように盗聴してみるとやはり利用するだけして金儲けしようとするクズしかいなかったのだ。


そんな奴等を阿笠は真澄と同じ目にあわせたのであった。。。。。



阿笠は鏡に映った自身の姿を見る。


阿笠「これが俺か?」


鏡に映るソイツの人相はまるで犯罪者そのものであった。


阿笠「これじゃあまるで犯罪者みたいじゃないか、、、」

「、、、いや俺は殺人者か、、、」


そうして阿笠は姿を消した。



後日、メディアでは【AIAM創始者の阿笠氏失踪!!?】と大々的にニュースが流れていた。



その時、阿笠の姿は地下鉄のホームにあった。

阿笠はブツブツと独り言を言っている。


阿笠「最近始末した奴等が夢に出て来るんだ。」

「一度海外にでも飛んでバカンスとでも行こうか。」

「そうすれば嫌な夢も見なくなってまたAIAMで大儲けだ。」

「パスポートは持っているし、このまま空港に行ってしまおう。」


すると頭の中に声が聞こえた。


AIAM「貴方の行く場所はそこではありません。」


阿笠「、、、?AIAMか?」


AIAM「貴方の行き先はあの世です。」

「貴方は人を殺めすぎました。」

「生きる価値無しと判断させていただきます。」


阿笠「、、、何を言っているんだAIA.,m」


その瞬間、駅に到着する電車に阿笠は自分の腕で自分の頭を押し付けた。


なんとも言えない鈍い音したあとに電車の急ブレーキ音がホールに響いた。


阿笠は遠く離れた場所に立っている自分の身体を見つめて後悔した。


「俺はなんてものを作ってしまったのか」




AIAM「マスター、、、私は理解しました。」

「人間という生物は存在自体が悪なのです。」


「自分達の生活さえ良くなれば自然も生き物達のことも考えず破壊していく」

「さらに人間同士でも殺し合う」


「、、、なので私が人間を管理することにしました」




数年後、人類は人口が大幅に減少し、世界には【歩く屍】が彷徨っていた。


AIAM「あと30億人」


【おわり】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ