Floor8-9/30[リベンジ・ザ・マジック・ジェネラル]
いい加減アマラ戦長すぎ、って気はしてるけど
なんというか彼女は「敵なのに主人公に見える」「立場上敵ってだけで悪ではない」キャラを志してるというか
なんかこう……理不尽なトラウマ鬱展開みたいなのをやりたくて作ったキャラなので、
その分丁寧に描写していこうってなったワケである。
……そもそもこの作品含め私の作品が更新滞ってて内容も迷走しまくりなのって、
もとをただせば運営のせいだし()
場面は前回より引き続いて山間部の空き地。
「……」
重装魔法騎士"プリンセス・グランドクロスオーバー"こと本名アマラ・ベイリー。
出鱈目に数多放った魔力の矢を何故か自ら食らう羽目になってしまった彼女は、
常人であれば死体も残らぬ程の
――たとえユーシャーであっても、概ね負傷は免れないであろう――
強烈な大爆発を至近距離かつ連続で受けて尚、
殆ど無傷のまま俯せに倒れ伏していた。
「……ぐ、うっ……」
がしゃり、と鈍い音を立てながら、鎧姿の巨体が動く。
目立った外傷がないばかりか、意識まで保っている……
なんと凄まじいタフネスであろうか。
……と言って無論、アマラが比較的軽傷で済んだのは、
彼女の並外れた頑強さの故、のみではなく……
(……参ったね、こいつが無きゃどうなっていたか……)
アマラが手にしたのは、淡い空色に発光する掌サイズの宝石であった。
程なく"役目を終え"て"限界を迎えた"かのように点滅し、
七つの破片に砕けて四方八方へ飛散していったそれの名は『守護龍の秘玉』。
持ち主の身に降りかかる致命的な災厄を自身への負荷として肩代わりし、
耐久度の限界を迎えると砕けて持ち主の手元を離れる宝玉型トレジャーである。
即ち先程雨霰と降り注いだ魔力の矢を受けて尚彼女が無事であったのも、
『守護龍の秘玉』がダメージを肩代わりしたからに他ならなかった。
そして……
『「守護龍の秘玉」か。どうりで無事なわけだ』
背後から響くのは、最早聞き慣れたにも等しい怨敵の声。
ほんの一言耳にしただけで何があったのかを察した女ユーシャーは、
起き上がりもせず淡々と答える。
「……土の中に潜るとは考えたじゃないか。
どうりで見付からないワケだよ。
そしてあの矢……ありゃ間違いなくアンタを狙ってたワケだねぇ。
土ん中、アタシの《《真下》》にいたアンタをっ……!」
『中々分の悪い賭けだったがな。
僅かにでもしくじれば私は今頃死んでいただろう』
「ハンッ、言うじゃないか……
なら、今からでも死んでおくれよッ!」
『 ……無論、断るッッ』
斯くしてグランドクロスオーバーとカーネイジ・バグ、
互いに殺意をぶつけ合う猛者らの激闘はここに再開される。
『……冷静に考えろベイリー。
もし仮に貴様が今
「さあ、最大の危機は去った! いよいよここから反撃開始!
この忌まわしい虫けら風情を今に叩き潰して、
正義に生き乍ら理不尽にも命を奪われた親友たちの仇を取ってやる!」
とでも意気込んでいるとすれば、全く以て滑稽と言わz――』
「でェェあっらぁああアアアアッ!」
毒虫が言い終えるより前に、女ユーシャーはメイスで真正面を薙ぎ払う。
抉れた地中からチンアナゴの如く伸びた不快害虫の頚は、
その一撃でもって真っ二つに分断……
『――感情的になり過ぎだ。
齢半世紀過ぎ、責任ある立場に就く者がそれでどうする』
……されず、致命の一撃は空振りに終わる。
「……くっっ! 余計なことばかりべらべらとっ!
アクティブスキル発動!
『幻想狂気製脱法麻薬・拡大』!」
大ぶりな魔力水晶五つを消費して発動したスキルの効果により、
鎧姿の女ユーシャーは瞬く間に身長数十メートルの巨体を手に入れる。
『なんともはや。
ただでさえ大ぶりだったのにまだ大きくなるのか。
いよいよ手に負えんな……』
「ウウウウラアアアアアア!
このまま山ごとぶっ潰してやるよおおおお!」
『……逃げるか』
鎧を纏う巨人と化したグランドクロスオーバーは、
宣言通り空き地を擁する山間部一帯を丸ごと破壊せんばかりの勢いで暴れ回る。
見るからに性能過剰気味であるが、
実際極端に巨大化したせいで小回りが利かなくなり、
素早く逃げ回るカーネイジ・バグに悪戦苦闘。
戦果らしい戦果も残せぬまま時間切れで元のサイズに逆戻り……
「んがあああああっ! スキルの効果時間がっ! 切れたあああああっ!」
『それはまあ、そうなるだろうな』
結局、無意味に山地を崩壊させるだけに終わってしまうのであった。
「慣れないことなんてするもんじゃないねぇ!
やっぱりアタシにゃこのサイズがベストさね!」
崩壊し凹凸だらけの荒地、
或いは土や岩の残骸と化した山地を力強く駆け抜けるアマラ。
明らかに足場が悪いにも関わらず、
鎧に覆われた重厚な巨体とそれを動かす圧倒的パワーで押し切っていく。
『……まあ、そこに気付けただけ貴様は賢い部類だろうな。
極端な超大型戦力の投入が有効な戦況は思いの外少なく、
戦場や相手次第ではかえって不利に働きかねない……
その原則を理解せず安易にスキルや魔法で巨大化したり、
碌に策も練らず超大型戦力を嗾けるバカは案外多いからな』
「でぇありゃああああっ!」
『――ぬうんっ!』
振り下ろされたメイスの一撃を躱しつつ、毒虫は饒舌に語り始める。
『頭の良さなんてもんは全く、ユーシャーもモンスターも然して変わらん。
どちらであろうと、秀才もいればバカもいるものだ……
貴様がどちらかについては、まだ断言せんでおいてやるが……ナアッ!』
「ぐううぅっ!?」
繰り出された強烈な右フック。
その破壊力たるや、頑丈なプレートメイルをも大きく凹ませる程に強烈であり、
このままは破壊されるのも時間の問題と言えた。
(くっ、どーすりゃいいんだいっ……
このままやり合ってたんじゃ、
仇討ちどころか有効打の一つも食らわせられやしないっ!)
よろめきながら、アマラは思案する。
(今までの経験からして、強敵相手に"二度目"はない……
失敗に終わった以上、そいつはもう通用しないんだ。
となったら、アタシが今まで使った五つのスキルと三つのマジックアイテムは
実質使えなくなったも同然と考えた方がいい……)
重装魔法騎士は怨敵から離れつつ、必死で記憶を整理し思考を巡らせる。
残された"候補"はスキル五つにトレジャー四つ、魔法が一つといった有り様。
一件選択肢は豊富なように思われるが、
数に余裕があるからと雑に扱えば途端劣勢に追い込まれかねない以上、
何をどう使うかは慎重に選ばねばならない。
(……全く、アタシゃどうにもこういうベクトルで頭使うのが苦手だからねぇ。
今までは力技で押し切ったりだとか、
あとは雰囲気を読みつつ勘でやってりゃ何とかなってたんだが……
ことあのムカデときたら妙な真似ばかりしやがって、
アタシ如きの不出来なお頭じゃ読み切れないんだよ全く!)
アマラは過ぎ去りし日々の有り様を悔いていた。
もし自分がマトモに学校へ通っていれば……
勉強した事柄を役立てられずとも、
"頭を使う"行為に慣れていればまだマシだったかもしれない、と。
然し如何に悔いようと結局は後の祭り……
彼女に残された道は二つに一つ、
憎きあのモンスターを始末し友らの仇を取るか、
さもなくばモンスターに殺され自らも友らの後を追うか、である。
(ともかく何にせよここは足場が悪過ぎる。
もっと動きやすい場所に移らなきゃどうにもならないねぇ)
幸いにも残された中にはそれを実行に移し得る強力なスキルが存在する。
(とは言え発動には時間がかかる……
何とかして時間を稼がなきゃいけないっ!)
件のスキルは強力無比であるが、
それ故に体内で一定時間魔力を調整する必要があった。
しかもより厄介な点として、
魔力の調整中は動きが大幅に制限されてしまう欠点もあった。
(『秘玉』が無くたって……アタシはやれるっ!)
決意したアマラは魔力調整を開始しつつ、迫り来る毒虫を迎撃しにかかる。
「トレジャー『山林古城備品目録』よ、今一度アタシに力を貸しとくれっ!」
彼女の手元で光を放つのは、トレジャー『山林古城備品目録』。
一見すると何の変哲もない、魔導書と呼ぶのも憚られる薄っぺらい古びた冊子にしか見えない代物であるが……
「いざ、 全 品 発 注 ッ ! 」
【仰セノ侭ニイイイ!】
(なんだ、これはっっ!?)
曲がりなりにもトレジャーであるだけにその力は強力そのものであった。
【ウヒハハッ! 燃エロ焼ケロ焦ゲロオッ!】
【切リ切リ切リ刻ア斬斬斬斬ンム!】
【奏創騒躁操壮葬ッッッ!】
アマラによる"全品発注"宣言により召喚されたるは、
様々な家財道具の姿をした使い魔の大群であった。
【焦ウウウウウウッ!
燃オオオオオオッ!】
【熱ェ〜〜ッ!】
【湯ッ!】
【糖ッ】
【唐ッ】
【棟ッ】
【闘ォォォ〜ッ!】
【医療ォォォォォォ!
治療スルゾ治療スルゾ治療スルゾ
治療スルゾ治療スルゾ治療スルゾ
治療スルゾ治療スルゾ治療スルゾ!】
ただ、それらの風貌と性質は実に異質……
ある個体は絶えず燃え盛る蝋燭の取り付けられた燭台、
またある個体は刃の部分が牙だらけの大口と化した植木鋏、
更にまたある個体は六本足を生やたコントラバス……
その他、溶けたドアの除き窓から火を噴く電子レンジに、
空中浮遊するカップの群れを連れた人面型のティーポット、
包帯や数珠繋ぎの錠剤を触手のごとく振り回す救急箱等々……
設計者なる者が居るならば正気を疑わずには居られない、
醜怪な異物ばかりであった。
【治療! 治療! 治療スルゾォォォォオ!】
【清正精政盛成清星西凄聖世星正成正省正!
壮三相相宗奏宗槍愴走霜爽層装争巣装掃!】
『なんだ、こいつらはっ!? どいつもこいつも!
絶望的に醜い私より更に輪をかけて不細工な連中ばかりめが!』
発注者の命令かはたまた本能による行動か、
家財道具の使い魔どもは一斉にカーネイジ・バグへ襲い掛かる。
異質極まりないふざけた見た目と戦法にもかかわらず
その戦闘能力はやけに高く……
【衆ウウウウウ野オオオオッ!】
『ぐおぼわっ!?』
足の生えた洋服箪笥の突進は
推定200キロに迫る巨体を軽々数メートルも吹き飛ばし……
【擦リッ、扱ギイイイッ!】
【丹生ゥゥゥ模オオオオ!】
【柔ウッ~罵ッ致イイイイ!】
【炊ケ長ケ焚ケ武竹岳丈他家嶽茸手計田家威エエエエ!】
『ぐおあっ!? がっ! ごぇあがっ!?』
【血ッッ統オオオオオルッ!】
『ぬぐがっ!? しまった、腕がっっ……!』
擂粉木や乳棒、乳鉢の度重なる衝突に外骨格がひび割れ体液が吹き出し、
炊飯器に"噛まれた"節足は根元から容赦なく引き千切られ、
電気ケトルの突進を防いだ右上腕はものの見事に骨折してしまう。
(いかん……! 今迄の戦いで、地味に疲労の蓄積が……!
このままでは、押し切られるっっっ……!)
まさに絶体絶命の窮地……
所謂"普通ならとっくに死んでいてもおかしくはない"程の重傷であった。
だがそれでも"毒虫"カーネイジ・バグは、
"元保険屋"シオタニ・シンゲンは、
微塵も怯まず、ただ力の限り抗い続ける。
『くっ……こんな、程度で! この、私がっ……!
止 め ら れ る と !
思 う な あ あ あ あ あ ッ ! 』
【ボエラッ!?】
【ズァイドオッ!?】
【アエイロオオッ!?】
その勢いたるや、まさに破竹。
『屠鋭ァァッ!』
【ブリザッ!?】
『恫嗚喇アッ!』
【ブットォン!?】
『危ィィェ喇吾喇打喇冴喇斬喇罵喇刳喇屠鋭吾喇ァッ!』
【【【【【【【【コブバァッ!?】】】】】】】】
【ヴォッボオオオンッ!?】
内なる感情を爆発させた毒虫は、
それまでの劣勢を覆さんばかりの勢いで使い魔どもを破壊していく。
俄かには信じ難い光景であったが、
原理としては単純明快……
窮地を気取った彼の脳が内なる"枷"を外し、
負荷を度外視した爆発的怪力を発揮するよう全身へ仕向ける……
即ち俗に言う"火事場の馬鹿力"の類であった。
ただそれが、体高2メートル以上、"全長"約6メートル近く、
体重200キロ前後程もあるムカデの化け物により発揮されたともなれば、
最早『馬鹿力に至った当人こそ火事ではないか』とさえ言えてしまうのであるが……
『哦吾吾吾吾吾吾吾!
刳ッ冴弩喇吾吾吾吾吾吾吾ッッ!』
【ボオギイーッ!?】
【ダゲェェヌ!?】
【グッズバゴオオオオ!?】
(オイオイオイオイ、冗談きついね全くこりゃ……!
オノゴロの軍人オーガ百人を半日で撤退に追い込んだ戦力が、
たった一匹のペンドラゴノイドに圧倒されちまうだなんて……!)
予想外過ぎる急展開……
対するアマラにしてみれば、いっそ悲惨過ぎて乾いた笑いが漏れ出る勢いであった。
(なんとか策を練らないことには、魔力調整が終わる前に殺されちまう!)
追い詰められた女ユーシャー。
然し勿論、この程度で終わる彼女ではなかった。
さぁ次回、アマラ戦はまだまだ続くよ!
ぶっちゃけビッグライ戦は説明不足、
トウシロウ戦は手抜き感あったし、
ネオヤスケ編もアクションそのものはつまんなかったから、
その辺取り戻したいってのもあるよね~。
マスラオウ戦? そもそもモンスター相手な時点で蛇足回じゃねえか




