Floor8-7/30[セカンド・ターゲット"プリンセス・グランドクロスオーバー"]
誰もが予想しうる展開……
ところでネオヤスケ戦を長引かせ過ぎた気がするので、
Floor8のエピソード数自体増やすかもしれません。
「全員モンスターに殺されて、死んじまったからだよ」
場面は人気のない山間部の空き地……。
飲食店にて出会った青年と行動を共にしていた女ユーシャー、
アマラ・ベイリーの口から明かされたのは、
親しかったユーシャー・パーティ『シン・スーパーヒーロータイムズ』の辿った悲惨な末路であった。
「もう十年も前になるかねぇ……
結構時間が経っちまったけど、
度々つい昨日の出来事みたいに思い出すのさ。
全身傷だらけ、泥や血に塗れながら
息も絶え絶えにゲートから這い出て来たダイゴローの傷ましい姿……
あの子の口から出た世にも恐ろしい証言……
アタシの腕の中で事切れていったあの子の、硬直して冷たくなった亡骸の感触……
その全てを未だ、事細かに語れちまうんだよ……
元々、物覚えなんて世辞にも良かない方だってのにね……」
アマラに曰く『シン・スーパーヒーロータイムズ』は余りに救いのない形で壊滅に至ったという。
「その日、あの子たちは軽めのレベリングをしようとダンジョンを訪れてた。
手頃なモンスターを倒しちゃドロップアイテムを手に入れて……
予定通りにレベリングを終えようかって時、ヤツが現れたのさ。
残酷で卑劣なあのモンスターがね……!」
当時そこまで本格的な戦闘を想定しておらず、
また疲弊してもいた『シン・スーパーヒーロータイムズ』の五人は、
虚を突くように現れた未知なる敵に苦戦を強いられる。
どうにか生き残ろうと尽力した五人だったが、
奮闘虚しくメンバーは一人、また一人とモンスターに殺されていった。
……その後の顛末は、既にアマラ自身の口から語られた通りである。
「確かにね、ユーシャーってのは死と隣り合わせの仕事だよ。
そんでモンスターってのは、
人間を攻撃する為なら手段を選ばないそうじゃないか。
ともすりゃあの子たちが死んだのも"仕方のなかったこと"なんだろう。
けどアタシにとっちゃあの子たちは家族も同然の親友だった。
五十路過ぎのババアが何言ってんだと思うかもしれないけど、
あの子たちほど『絆』を感じる人間はそう居なかったのさ。
となりゃ、やることなんて一つしかない……」
「仇討ちに、御座いますか」
「そうさ! 察しがいいねえ、お兄さん……
そうとも、アタシは決意したのさ!
必ずあの子たちを殺したあの腐れモンスターに復讐してやるってね!
とは言え決して楽な道じゃなかった。
世に出回らなかったあの子たちの死因に繋がる情報……
あの子たちの遺体についた傷の分析データだとか、
遺体に辛うじて残ってたモンスターの身体の一部みたいなのを、
必死にかき集めたのさ!」
「……それは、相当な手間と費用がかかったのでは?」
「ああ、そりゃそうさ。
一筋縄じゃなかったし、金だって何億とかかった。
逮捕されてもしょうがないようなことだって何度もやったさ。
幾らユーシャーだからって、下手すりゃ破滅は免れなかったろうね。
……けど、あの子たちの無念に比べれば……
親友を五人も喪った悲しみに比べればっ……
あのふざけたモンスターへの恨みに比べればっっ……
そんなもん、屁でもないんだよっっ!」
叫ぶアマラの全身からは魔力が迸り、
波動となって空間そのものを揺るがす……。
(なるほど、これは確かに白金三級相当……
ネオヤスケと肩を並べる武闘派と言って差し支えないな)
冷静に分析した青年は、
『或いは、武器術と魔法の双方に長け、
鉄壁の防御を誇る重装魔法騎士なら
実質金剛五級相当の実力はあるかもしれない』と思案する。
「コストかけた甲斐あって、奴の正体はすぐにわかったよ。
毒虫系の中級知覚種族"ペンドラゴノイド"。
二足歩行するムカデの化け物だとかで……
兄さんも知ってるだろう?」
「ええ、存じております。
素人の趣味程度ですが、モンスター学には幾らか造詣が深いもので」
「そうかいそうかい。
アタシは見ての通り浅学なもんだから、
名前を聞いてもいまいちピンと来なくてねぇ。
……ただ、本当に辛いのはそこからだったよ。
仇の正体を知ったのは事件発生からだいたい一年後。
あとは探し当てるだけ……そのハズだったのに、これが思いの外難航してね。
モタつきにモタついて、結局九年もかかっちまった……」
アマラは自嘲しつつ魔法"武装変換"を発動し、
着ていた普段着を厳めしく重厚なプレートアーマーへと変化させる。
顔面はじめ肌どころか毛筋の一本さえ鎧で隠しきったその姿は、
彼女の巨体も相俟ってさながらリビングアーマーやメタルゴーレム等の重量級モンスターを思わせる。
「……けど、漸く見つけられた。
今こそ、非願成就の時さね……!」
続けて魔法"武装召喚"でこれまた厳めしいメイスと重厚な大盾を召喚・装備したアマラは、
メイスの矛先を事も在ろうに青年へ向け、意味深に口走る。
「……」
対する青年はと言えば、
突然武器を向けられたにもかかわらず不自然な程に冷静そのもの……
或いは"この状況を予め予期していた"かのように、
ゆっくり、淡々と言葉を紡ぐ……。
「如何為さいました、マダム。
まるで、ご友人方の仇……件のペンドラゴノイドが、
あたかもご自身の目前にいるかのような、口ぶりですが……」
「ふん、今更トボケたって無駄さ。
……上手く化けたつもりかもしれないけどね、
このプリンセス・グランドクロスオーバー様に
隠し事なんて通用しないのさ……ハアッ!」
「ぬっ!?」
刹那、強気に言い返したアマラは青年目掛けて盾を突き出す。
盾はあたかもそれそのものが光源であるかのように眩く光り、
迸る光が青年を包み込む。そして……
『……さっきの光は、一体……
――なあっっ!?』
「ふん、やっぱりそうだったかい……!」
光が晴れると、そこに青年の姿はなく……
代わりに、読者諸君にとってはよく見慣れたある男が佇んでいた。
『よもや、擬態を強制解除するとは……!』
その男とは……最早説明するまでもないであろう、
我らが本作主人公"カーネイジ・バグ"こと
本名"シオタニ・シンゲン"に他ならない。
「ふん、驚いたかい? これぞアタシの数あるスキルの一つ……
その名も『魔鏡は真実のみを告げり』
金属の面から発する光で偽りを暴く力さね」
『……お見事。
ともすれば虚言も無駄であろうし、
一先ず名乗らせて頂こう。
……オイッス、失礼致しております。
ミクス-プリンセス・グランドクロスオーバー……。
我"カーネイジ・バグ"。
まさに貴殿の探し求めたる下手人、
十年前のあの日に"シン・スーパーヒーロータイムズ"を壊滅させし、
悪辣にして卑劣なるペンドラゴノイドに御座い……』
「ふん、モンスターがグリーティングかい。
アタシがやり合った中にも、片手で数える程は居たもんだけど……
お前さんみたいなクズがそんな真似に及ぼうとは驚きだぁねぇ」
無骨なフルフェイスのヘルム越しに響くアマラの声には
確かな精神的余裕が見て取れる。
友の仇を執念深く追い続け、
十年の月日をかけて漸く相対した復讐者とは思い難い態度である。
「……いいだろう、ならアタシも返してやろうかねぇ。
ハイサイ=マイドウ、お気になさらず。
カーネイジ・バグ-シ。
我"プリンセス・グランドクロスオーバー"。
友らの無念晴らすべく聖戦に挑む者……
即ち今日を、貴様の命日とする者に御座い!」
毒虫と大女は厳かに頭を垂れ……沈黙。
人気のない山林の一角は、僅かな間静寂の支配する無音の世界となる。
「……」
『……』
だがその沈黙こそはまさに"嵐の前の静けさ"であり……
「うおッラアアアアアッ!」
『屠鋭ィ喇ァッ!』
即ち、此れより始まる激闘の合図に他ならなかった。
次回、アマラ大暴れ!




