彼氏がスパダリ過ぎてうわさになってて困る
「ねえ!!ちょっと聞いてよ!!」
「……どうしたの、いったい」
「めっちゃムカつくの、ひどい、ひどすぎる!!」
「……まあまあ、落ち着いて。まずは…深呼吸、してみようか?はい、一緒に?」
すう、はあ、すう、はあ……。
「あのね、みんなが…ひどいの。シュン君の事、化け物だって!人間じゃないって!」
「……化け物?人間じゃない?それはまた…面白いことを言うね」
「涼しい顔で難しい問題解いたり、リレーで最後方から追い上げて一着でゴールしたり、毎日美味しそうなお弁当も作って持ってきてるし、歌もうまくて聞き惚れるし……、どう考えてもおかしいって!!!」
「……はは、なに、それ」
「あたしが…ぷくぷくしてて美味しそうだから、いつか食べちゃうために飼い慣らしてるに違いないって!!」
「……ひどいこと言うなあ」
「あたしの事をね、人目も気にしないで…必要以上に大切にしてて、ありえないって……」
「……大切な人を大切にしたいと思う気持ちを、周りを気にして抑えるなんて…おかしくないかい」
「……あたしみたいな、平凡なJKに夢中になるのもありえないし、絶対に…何かあるって…みんな、噂してるの……」
「誰だい、僕の大好きな萌香の事を……平凡だなんていうやつは」
「だって…、あたし、本当に、つまらない人間で。ドジだし、失敗ばかりするし、わがままで…かわいく、なくて。それに…」
「……いくら萌香でも、僕の好きな人の事を悪く言うのは……、許せないな」
……ぎゅっ
「……はい、抱きしめの刑」
「…ッ!!!」
「……よし、聞きたくない悪口は止まったね」
「う、うぅ…、あの、その…!」
「萌香は、僕にとって…唯一の、特別な人なんだよ?」
「……ホント?」
「こんなにも僕のことを夢中にさせてくれるのは…萌香だけなんだ」
「あ、あたしだって…シュンくんに、夢中だよ!!」
「じゃあ、相思相愛なんだから、それで…いいんじゃない?」
「……でも」
「……宇宙人だとか、化け物だとか、関係…あるかな?もし僕が…人間じゃなかったら、嫌いになっちゃうのかい」
「なるわけないじゃない!!」
「……でしょ。萌香はね、他人のつまらない噂なんかに振り回されないで…、僕の前でずっと笑っていたらいいんだよ」
「うん……」
ぎゅ、ぎゅぅう~
「あたし……、シュンくんにだったら…食べられても、いい」
「はは……、僕は愛する人を食べちゃったりしないよ?」
……チュッ
「……だってほら、こんなふうに、キスをすることができなくなってしまうからね」
「?!…ッ!!しゅ、シュン君、ここっ!!ここ、めっちゃ人が、人がー!!!」
「……萌香が、悪い。そんな美味しそうな唇で、僕を見上げたんだから」
「~ッ!!う、うう……」
ぐぐ、ぐぅ~
「もう!!シュンくんが美味しそうなんていうから、おなかが鳴っちゃったじゃない!!」
ぐぅ~っ
「……はは、僕もおなかが空いたみたいだ」
「「じゃあ…なにか美味しいもの、食べに行こう!」」
「パフェ、ケーキ、サンドイッチ、たこ焼き、クレープ……何にする?」
「お好み焼き、ラーメン、ソフトクリーム、おにぎり……何がいいかな」
「スイーツ、ファミレス、コンビニ、アイスクリームショップ…」
「回転寿司、ピザ屋、ドーナツ屋、焼き立てパン屋…」
「フルーツ、パン、米、麺類、肉…」
「牛肉、豚肉、鶏肉、ジンギスカン、カモ肉、馬肉、ハト肉、ワニ肉、ダチョウ肉、じんにk…」
「プっ…ワニ?!あはは……!萌香は本当に、食いしん坊だね。普通ワニ肉とか出てくる?!フフ、ハハ、あはははは…!!!」
ぐぐ、ぐぅうううううっ!!!
「ふふ、ぷくくっ…!!!思いっきり笑っちゃって、ごめんね?ああそうだ、お詫びに…、今日は僕がおごるよ!おなかいっぱい、ワニ肉?食べようね、アハハ……」
「………ありがと!!!」
……大好きな人の前だと、思いっきり…食べる事って、できないんだよね。
だって……、幻滅されたく、ないじゃない?
ちょっと……、かわい子ぶりたいじゃない?
ぐぐ、ぐぅ~
……ああ、おなかが、空いた。
ぐぐ、ぐぅうううううっ!!!
……何でもいいから、食べたいな。
味とか気にしないから、とにかく、食べたいよぅ……。
もっちゅ、もっちゅ、もぎゅ、もぎゅ……。
私は、噂の、出所を……。
食 み な が ら 。