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第二十八話

 

 ほとんどの場合、怒りという衝動的な感情は何かの邪魔をする。

 裏を返せば怒りの感情をコントロールすることで物事は大抵うまくいく。

 だから俺は物心ついた頃から怒りのまま行動することはしなかった。

 この先もそうしようと決めていた。


「············」


 三年前戦場で仲間を失った時みたく悔しがって終わるのか。

 今回も助けられたくせに。


「———そんなの冗談じゃない」


 俺に右手を残し身体中の痛みに耐えながら、それでもレオは最期に笑っていた。


「クソ馬鹿野郎がァアアッ—————ッ」


 今俺の身体を突き動かしているのは単純な怒りの感情だ。

 気づいた時にはエキドナの首を切り落としていた。

 エキドナの死を皮切りに周りにいた魔物は一度動きを止める。

 しかし後方から更に魔物が出現し始めていた。


「······文也さん。レオ君はずっと前から自分の右腕をあなたに託したいと言っていました。僕と同じようにレオ君はあなたを尊敬していたんです。親友の覚悟をどうか受け取ってください······勝ってください」


「ああッ」


 フェイはレオの遺体を結界内に封じ込めた。相手は幹部の全員を失い残るは大量の魔物と魔王のみ。だが戦力差は依然として大きかった。


 しかし当然今の俺達に負けるという選択肢はなかった。


「·····この音は」


 魔物の攻撃が止まり静まり返った戦場に声が聞こえてきた。

 魔物ではない、人間の雄叫び。

 その雄叫びは次第に大きくなりその存在は急速に接近してきた。


「皆殿が応援に来たぜござるな」


 足音と俺でも感じ取れる魔力を考えればかなりの人数が来ている。このまま応援に来た仲間と戦ったとしてもグレイナルが援護射撃をしてくればさっきの二の舞だ。ここはもう賭けるしかない。


「俺は魔王のところへ向かう。ここの魔物は頼んだ」


「ふ、文也それはあまりに危険すぎるよッ」


「大丈夫だレイ。私が一緒に行く」


 そう言ってシオンは俺の隣に立った。


「うむ。ならばこの場は任された。レオ殿には指一本触れさせん」


「······ボクも心配だけど、サラちゃんも二人を待ってるから。絶対に生きて帰ってきて」


「尊敬するあなたなら心配はしていません。シオンさんそして文也さん、あなた達は今僕たち人類が持ち得る最高戦力です。自信を持ってください」


「おうッ!」


 背中には戦ってきた仲間。そして隣にはシオンがいる。どこにも不安要素はない。あとは魔王を倒せばいい。たったそれだけだ。


 俺とシオンは走り出し魔王のいる奥の部屋へと向かっていった。



************************************



「やはりお前達二人か」


 グレイナルはまるで俺たちの登場を予期していたかのように立っていた。

 魔王という名に相応しい強者の圧。だが身体は竦むこともなく武者振るいをしていた。


「やはりって何だよ」


 魔王と言っても会話はできる。ここは気圧された時点で俺の負けだ。


「フンッ、語るにはまだ早い」


「来るぞ文也」


 魔王の装備している大剣は俺の太刀や侍ニキの刀より一回りも大きい。その大剣は黒紫の禍々しいオーラを放っている。片手に持った大剣はまるで空気を切り裂いているかの如く。大剣の周りにある空気が明らかに揺らいでいた。


(今から言う通りに動け)


「······シオン。今何か言ったか?」


「ん? 何も言ってないぞ」


 よく考えると頭に聞こえてきた声はつい先程聞こえた声だ。「守れ」と言われ咄嗟にシオンの前に飛び込み俺は胸に光線を喰らった。だが戦闘の激しさでずっと忘れていた。


(左前方から斬撃、来るぞ)


「······シオン、斬撃だ」


 一切疑うことなく言われた通りに動き出していた。

 驚くことに魔王が剣を振ると空気の塊が斬撃となり飛来してきた。


「ほう?」


 どこか聞き覚えのある声。先程も同じだがこの声はまるで未来を知っているかのようだ。誰か分からないがこれは使える。


(誰か知らないけど頼む。手伝ってくれ)


(言われなくてもそうするつもりだ)


「シオンッ———俺に合わせてくれ!」


「了解」


 同時に俺達は走り出した。

 確信は無い、だが安全に勝機を見出す方法はこれしかない。

 三年で俺達の連携は洗練された。

 一瞬のアイコンタクトで次の動作を決定する。

 復活した右手により普段の数倍力が入り素早く動ける。


(右からの斬り上げ、死角からの回し蹴りッ)


 加えて俺だけに聞こえる予知の声。


「ウゥ”ッ———」


(堪えろ、シオンと位置を交代だ)


 だが途中から明らかな違和感を感じてきた。

 声はシオンへの攻撃を俺に喰らわせようとしている。

 そして明らかにシオンも違和感に気づき始めていた。


「おい文也、私への攻撃を警戒し過ぎだ。お前の身体が持たないぞ」


「わ、分かってる」


(お前絶対わざとだろ)


(知るかよ····避けろッ——右胸だ)


「おっ······と」


 魔王がノーモーションで放った魔力の光線。

 軌道まで完璧に予期した声により俺は攻撃よりも前に動き出し難なく避けられた。


「文也····お前、今のを予期したのか」


「ま、まあな」


「······違うな、今ので確信した。お前は今、頭の中に声が聞こえているだろ」


(バレたッ——?)


「どうした? 何処かおかしいのか」


「いや、何処も問題ない····はず」


「そろそろだな。話をしてやる」


 一度、グレイナルは攻撃の手を止め距離を取った。大剣を納め攻撃する素振りもなく油断させようとしている様子もない。何より頭の中に声は聞こえない。


「シオン・クロムウェル。そして南雲文也。我は貴様らの剣を知っている。そして我はこの戦いの結末も知っている。貴様らとこうしてしのぎを削るのはこれで二度目だからな」


「······は?」


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