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第二十三話

 

 戦闘中で集中しなければならないのは分かる。だけど周り、それも間近に見える位置で人が簡単に死んでいる。ここまできて恐怖で身体が思うように動かない。


「せいッ——!」


 だが幸いにも俺は無事だった。それもそのはず隣にいる侍ニキが見た目以上に強い。高い位置から振り下ろされる刀は大型の魔物をも真っ二つにぶった斬り一瞬にして絶命させる。まるで小林が隣にいるかのような安心感。正直俺がそっち系の人間なら惚れてるだろう。


「文也殿、砦に向かうでござるか?」


「ああ、取り敢えず俺はシオンのこと追いかけるけどニキはどうする?」


「に、ニキ?」


「あっ、えっ村継だったな。ごめんごめん」


「構わんでござる。そちらの方が呼びやすそうだな。シオン殿の願い通り拙者は文也殿について行こう」


 俺は先程からほとんど太刀を振っていない。悔しいが俺が真っ向勝負を挑んだところで殺されるのがオチだ。今は死なずにシオンと合流することが最優先になる。流石というべきか。周りの兵士達はこの戦場にすぐさま適応し反撃の兆しが見えていた。


「文也殿ッ! 拙者の後ろについて参れ!」


 侍ニキはシオンの走っていった方向にまるで戦車のように進み始めた。重量感のある刀を両手に持ちながらも速度は陸上選手なみ。言われた通りなんとか後ろについて走ると一切魔物の攻撃に当たらず進むことができた。


「文也殿! シオン殿がいたでござる!」


 砦の中には既に力尽き横たわった人や魔物で溢れかえっていた。各所で戦闘が起こってる中、シオンは一際凄まじい覇気を放ち無傷のままでいる。


「村継かッ——助かった。文也、こっちに来い!」


「おっ、おう!」


「皆さん! 強化魔法を付与します!!」


 近くにいたファイザが周りの全員へ強化魔法を付与し戦況は徐々にこちらへ傾いてきた。あちこちで悲鳴や雄叫び、様々な音が鳴り響く。砦での地獄とも言える戦争はおよそ三時間続いた。



************************************



 砦での戦いが終わった後、身体中血だらけになっていた。ついている血が自分のものなのかもわからない。感覚が狂い、手や足が欠損しているのかどうかも正直分からなかった。


 ———でもそんなことどうでもよかった。


 戦争中シオン繋がりで俺を助け声をかけてくれた人が多くいた。


 命懸けの状況で百人以上。

 戦場で頭は混乱していたが全員の顔をはっきりと覚えている。


 俺のことを守ってくれた。

 肩を合わせて戦った。

 回復してくれた。

 自分を犠牲にしてまでも俺の命を救ってくれた。


「······クソッ」


 だけどほとんどがこの戦場で命を落とした。そのうち残ったのは六人のみだ。戦争が終わった後一緒に宴をしようと言ったやつも、戦争中だって言うのに彼女の自慢をしてきた面白いやつも無惨な姿で再会した。


「クソッ——!!」


 お礼も言えないままもう二度と会うことができない。

 これが、こんなのが戦争だ。どこにこの感情をぶつければいいのかも分からない、最悪の気分だ。


 周りには死んだような顔で仲間の遺品を回収する兵達。

 戦争中シオンや村継とはぐれてしまった。

 俺は血の海と化した地面を歩きみんなを探した。


「おぉ! 文也殿! 生きておったか!」


「······侍ニキ!」


 侍ニキこと村継は全身血だらけの状態になりながらも五体満足で生き残っていた。


「······文也殿、落ち込むなとは言わん。戦場とはかような場所でござる。お主もシオン殿も無事だったのだ」


「シオンはッ! シオンはどこにいるんだッ!」


「シオン殿は其方を必死に探しておる。戦闘後であるというのにやはりすごい方にござる······って待つでござる!」


 侍ニキの言葉を聞かず気づけば俺は走り出していた。身体の疲れなんてもはやどうでもいい。

 血まみれになりながらも生きているやつにシオンの場所を聞きようやくその姿が見えた。


「はぁ····まったく」


 シオンは必死な顔で倒れた兵の顔を確認していた。多分もう死んだと思われている。


「俺が死んだと思ったか。失礼なやつだな」


「······文也」


 声を聞いた瞬間シオンは振り返り確実に目が合った。

 シオンは唇を震わせ身体は一瞬硬直していた。

 地面の血で滑ることも気にせずシオンは前のめりになって向かってきた。


「ウグッ——」


 感動の再会。だが予想していたものとは違い直前で足を滑らせたシオンに頭突きをされ、戦場での記憶はそこで途絶えてしまった。



*************************************



「あぁ、今日も疲れたぁ」


「文也さん、勇者なんですからもう少し安全な立ち回りをしてください。僕もう心配で心配で」


「本当にフェイの言う通りだ。私の心配も····知らないで」


「悪い悪い、今度から何とかする」


「フハハハ! それでこそ勇者よ。拙者が認めただけあるにござる」


 ここは砦の中。俺の周りには多くの仲間がいる。

 全員俺と一緒に死地を潜り抜けてきた信頼できる仲間だ。

 冬の時季を迎え、誇張抜きで外は凍え死ぬほど寒い。


「おいフミッ!! テメェまた俺のこと庇って怪我しやがったな! クソが! 死ね!!」


「おいおいどっちだよ。回復魔法で治る程度だろ」


「レオ····そんなこと言って本当に死ねばどうするんだ」


「······それは、その。ダァアッ! うっせぇよシオン! 大体お前はこいつに甘ぇんだよ!! そんなならさっさと結婚しろや!!」


「なっ———お前何を」


 今の俺はある程度強くなった。シオンと肩を並べられるくらいだ。


 砦での戦いが終わってから今日で三年の月日が経過した。

 あの戦いが終わってから戦争は更に激化し俺はいくつもの戦場を経験してきた。


 死に物狂いの三年。到底言葉で言い表せるものではない。

 

 あの戦場で初めて出会い俺を助けてくれた六人————村継、ファイザ、レオ、フェイ、ロサリアそしてレイ。もちろんシオンもだがみんな無事に今日を迎えている。


「······そろそろだなぁ」


 そして俺はこの日大きな決断をした。


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