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日常は唐突に
「それじゃ、お父さん行ってくるから」
玄関先で軍服を身に纏いリュックを背負った父はそう言った。
「早く帰ってきてね」
寂しそうな顔をして話す私を父は穏やかな表情で頭を撫でつけ、そして何も言わずに出て行った。
その時の顔は大丈夫だとこちらに言い聞かせるようでもあり、死地に向かうことを覚悟したようでもあった。
それからの生活は今までと特に変わりはなかった。
それもそのはずで、軍に所属していた父は長期間家を空けることも多く、短くても半年、長い時には3年の時もあった。
帰ってくる日もいつも何の連絡もなく帰ってきて、父の分の食材がない何てこともあった。
だからきっと今回も、ふらっと連絡もなく帰ってくると無意識に考え日々を送っていた。
そんなある日、中学3年生の私の元にそれは届いた。
【 〈秋風 春〉 の父 〈秋風 秋守〉 本作戦において認定死亡とする。】