幽鬼
彼女を止めようとしたが無駄だった。
いくら話しかけようともこちらに反応せず、俺が手を伸ばしても触れることも出来ず、落ちることを繰り返すのをただただ見ていることしか出来なかった。
少女は不思議そうな顔でこちらを見ていた。
何も出来ないことを認めた後、俺は少女に連れられて近くの公園に来ていた。
アイス屋さんが通りすぎ、少女がこちらをキラキラとした目で見てきた。
財布の中身を確認したが、クレジットカードしかなかった。
アイス屋さんにクレジットカードに対応しているか聞いたが、対応している訳ないだろうと返された。
少女は使えないモノを見る目で見てきた後、自分のお金で買っていた。
アイス屋さんの顔は分からなかった。
見たはずなのに分からなかった。
「アレはね、幽鬼っていうの」
アイスを食べ終わった少女は口を開いた。
「アレが何かわかってなかったんでしょ?
わかってたら助けようとしないもん。
時間のむだだから」
「…幽鬼って何だ?」
「簡単に言うと…たましいがない幽霊みたいな現象?」
そういいながら少女は首をコテンと傾げた。
ふわふわ飛びながら少女は言う。
「ううん説明むずかしい…おじさんは幽霊って知ってる?」
「いや、まあ」
「幽霊にはたましいがあるの
幽鬼は幽霊に似てるけどたましいがないの
じょうぶつはしてるの」
俺の目の前で逆さまに浮いている少女は悩みながら説明を続けた。
「幽霊はみれんがあるの。幽鬼はみれんだけなの」
「未練…」
「たましいがないから、みれんだけだから、
じょうぶつさせようがないの。
どうにもできないの…基本」
「基本?」
「基本。
力をちらせば幽鬼は消えるけどちらせるヒトなんてあんまいないの。
2人…しか知らないの」
「助けられる人がいるのか!?」
「うん。
1人は神さま。
お狐様」
「かみさま…」
「うん。
もう1人は…来た」
少女がガシッと俺の腕を掴み引っ張った。
そのすぐ後に俺が座っていたベンチは粉々になった。
「ユウキノシュラ様
穢れ殺し
穢れたモノの敵」
ベンチの会った所には血だらけでボロボロな着物を着た顔に包帯を巻いた男が立っていた。
「ユウキノシュラ様はいっぱい穢れたモノにしか近よらない。
ねえ、おじさんはなんでそんなに穢れてるの?」
少女は神さまとユウキノシュラ様を2人扱いでいいのか迷ってます。
どちらも今は人じゃないので。