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グルルルルルっ!負けない、負けないぞっ!!

 

 獣人少女「"ご主人"を離せーーー!!!」


 突然叫びながら現れた、オオカミのような獣耳と尻尾を持った少女。

 

 背丈はお兄さんと同じくらいに高く、金色の鋭い瞳に褐色の肌。

 焦げ茶色の髪の毛先は黄色のグラデーションで染まっている。

 口調の割に女の子らしい服装で――


 獣人少女「ぎゃおーーっ!!」

 

 ヒュンッ!

 

 問答無用で獣人少女が突っ込んできた!


 エシア「ふえっ!?」

 サッ!

 間一髪のところで身をかわすエシア。


 獣人少女「ウガーーーーー!!」

 続いて回し蹴り。

 

 エシア「あっぶ――」

 

 ブゥンッ!

 

 その蹴りはエシアの首を掠めた。


 獣人少女「フーッ、フーッ!」

 四足体制で両手足を地につけ、構える少女。

 

 エシア「いやいや!ちょっいきなりすぎてもうわけが――」

 気が付いた時には、目の前に少女の足の裏が迫っていた。

 

 エシア(避けきれない!?)


 ッダアーーーンッッ!!!


 顔の前で腕をクロスさせて何とか防ぐが、その衝撃で後方に吹き飛ばされてしまう。

 

 エシア「くぅッ!」

 

 ズザザザザザザザッ!


 エシア「……やるじゃないですか」

(あぶないところだった。あんなもの顔面に食らっていたら……)


 リンネ「……」

 

 お兄さん(エシア!)

 

 リンネ「あの女なら無駄に丈夫なのだから。死にはしないわ」

 お兄さん(でも……)

 リンネ「貴方は……私を置いてあの子を助けに行ってしまうの?」

 お兄さん(リンネ……)

 

 エシアが心配だけど、リンネを降ろして僕が行ったところで足手まといになるだけなのはわかっているけど。

 

 僕はどうすれば……。


 エシア「オルアアアアアアアッッ!!!」

 獣人少女「ウゥゥガルルルルルルルルルルッ!!」

 

 ダンッ!

 ドスッ!

 

 ッタアァーーーーン!!


 衝撃に草木が揺れる、一進一退の攻防。

 二人の打ち合いは激しさを増していき、次第に森を巻き込んでいった。

 

 エシア「ふんぬッ!」

 

 ズボオォォォッ!!!

 身の丈の十倍は超える大木を引き抜くエシア。


 獣人少女「ウガーーーッ!!」

 

 突進する少女を――


 エシア「ウオラアァァーーーーッ!!!」


 引き抜いた大木で打ち上げた。

 

 

 パァアアアーーーンッ!!バキバキッ!

 

 

 激しい音を立て、折れ曲がる大木。

 獣人少女「ぐッッ!!」

 

 ビダァーーンッ!!

 

 かなりの高さから地面に叩きつけられながらも、体制を立て直しエシアを睨みつける少女。


 エシア「フゥ~……」

 

 息を吐きながら、素手で構えるエシア。

 静かなる闘志を燃やすその瞳には、もはや倒すべき敵の姿しか映っていなかった。

 

 獣人少女「グルルルルルっ!負けない、負けないぞっ!!」

 少女は近くにあった巨大な岩に手をめり込ませ――

 

 獣人少女「ンぎぎぎぎぎぎぎ……ッ!!」

 

 持ち上げた。


 エシア「フフッ……♪」

 クイッ

 

 投げてみろ、と言うかのようにアゴで挑発するエシア。

 普段の陽気さはそこには無く、瞳孔を開かせ口元だけで笑みを浮かべていた。


 リンネ「まずいわね……」

 

 リンネ(このままだと彼に被害が及びかねないわ……それに)

 

 お兄さん(エシアを助けなくては。だが、僕に何ができる?いや、そんな事を考えている暇があったらエシアを助けに行った方が……!)ソワソワっ

 

 リンネ(まずい。本格的に彼がソワソワし始めた……あぁ、でもそんなあなたも好きよ♪)

 

 ってそんな場合じゃない。

 なんとかしないといけないわ……!

 

 リンネが思考を巡らせている間に、獣人の少女はついに"ソレ"をエシアに向かって放り投げた。

 

 獣人少女「ウガアアアアアアアアアア!!!!」

 

 ブゥンッッッーー!!

 

 エシア「フフフ……」

 

 飛んでくる巨岩石に構えるエシア。

 しかし、その岩がエシアのもとまで届くことは無かった。


 リンネ「……」

 シュルシュルシュルっ

 

 包帯を外し、赤い目を光らせながら岩に指先を向けるリンネ。


 

 "重力崩壊グラビデ・コラプス"


 

 そうつぶやいた瞬間――


 


 ドオオオオオーーーンッッ!!

 

 

 巨大な岩が轟音を響かせながら、地面に吸い込まれていく。

 

 


 ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ………

 



 次第に音が消え、静まり返る空気。


 

 

 シーン…………。


 


 飛んだ岩の代わりに、エシアと少女の間には底の見えない穴だけが残っていた。

 

 エシア「ファッ!?」

 獣人少女「なぁっ!?」

 お兄さん(!?)

 

 リンネ「……ふぅ」

 

 エシア「ま、魔法……?」

 

 全員が一瞬硬直してしまったが、獣人少女はそれでも諦めなかった。

 

 獣人少女「う、うがああああああ!!」

 

 お兄さん(なぜ、彼女はそこまでして僕らを襲うのだろう……?)

 

 エシア「あっしまっ――!?」

 唐突な展開にすっかり戦意を喪失するエシア。


 リンネ「仕方ないわ……お仕置きよ」

 

 今度は獣人少女に指先を向け――


 

 「"超高層血色型雷放電ブラッディスプライト"」

 


 バチィーンッッ!!!パリパリパリッッ!!

 


 赤い雷撃が獣人少女の上から放たれた。

 

 獣人少女「ッ!?」

 

 ダンッッ!

 

 少女は高くそびえたつ木々へ飛び移り、何発も飛んでくる雷撃を回避し続けた。

 

 リンネ「……」

 

 バチバチバチバチバチッ!!

 

 獣人少女「クッ!」

 

 雷撃は少女を追いかけまわす。

 

 間一髪で躱してきた少女だったが――


 

 バチィーーーーンッッ!!パリパリパリパリッッ!!!!


 

 獣人少女「ガァッッ!!」

 

 赤い閃光は少女に直撃。

 少女が地面に叩きつけられてもなお、雷撃は繰り返される。

 

 

 バチィンッッ!!バチィンッッ!!バチィンッッ!!バチィンッッ!!バチィンッッ!!バチィンッッ!!バチィンッッ!!バチィンッッ!!パリパリパリパリッッツ――

 


 リンネ「……」

 

 エシア「あの~、リンネさん?そろそろ、その辺にしといてあげては……?」

 リンネ「だめよ、彼がケガをするところだったのよ?むしろ――」


 (いっそこのまま殺して……)

 

 お兄さん(リンネ、やめるんだ)

 

 リンネ「でも……」

 お兄さん(リンネっ!)

 

 僕は振り向き、横目で彼女の赤く光る瞳を睨みつけた。


 リンネ「え、ええ。わかったわよ……」



 リンネが手を下すと、赤い雷撃は止まった。

 

 そして再び静まり返る空気。


 エシア「今の、リンネさんの"魔法"ですよね?もしかしたら魔法が使えるかもとは思ってましたが、まさかあの獣の人をこうもあっさりと……」

 

 お兄さん(……驚いたけどそれよりも。あの子は生きてるの?)

 リンネ「手加減はしたわ」

 

 エシア「パネェ……」

 

 お兄さん(なら。よかった)

 リンネ「怒ってるの?」

 お兄さん(そうじゃない。仕方がなかった状況だったのもわかる。ただ僕は、君にあの子を殺してほしく無かったんだと思う)

 

 リンネ「心配をかけてごめんなさい……」

 お兄さん(いいんだ。それより――)

 

 獣人少女「う、うぅ~……」

 

 少女が目を覚ましたみたいだ。


 エシア「さ~てと。なぜ私達を襲ってきたんか、キッチリ話して頂きましょうかねぇ……メスゴリラさぁん?」(ニッコリ)

 

 獣人少女「ひッッーー!?」


 

 マジ○チスマイルで少女に迫るエシアだった。







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