この中に一人、変態がいる。
この中に一人、変態がいる。
リンネ「あなたにだけは言われたくないわ」
エシア「……」
お兄さんが起きたところで、あたしたちは今後の話をすることに。
エシア「しかしこんな状況どうしようもないっすよね。だって完全に閉じ込められてるんですから……」
ポンポンッ
エシア「え、なんですか、お兄さん?」
お兄さんがあたしの肩を優しく叩いていた。
お兄さん「……」クイッ
玄関の方を指さすお兄さん。
エシア「え?いったいなん――ファッ!?」
エシア「ドアァアっ!!?え?えーーーっ!!?」
驚くことに、あの石で塗りつぶされたような玄関に扉が出現していた。
エシア「え、いつの間に……?」
リンネ「やったわね」
グッと親指を立てるリンネ。
お兄さん(リンネは冷静だね)
リンネ「生きていればドアの一つや二つ、出たり消えたりすることもあるわ」
お兄さん(そうかな……)
エシア「いやいやないでしょっ!」
(リンネさんはなぜそんなに冷静なんだろう……?)
訝しむあたしをよそに、話を進めるリンネさん。
リンネ「出口が現れたのだし、そろそろ行きましょうか。貴方♪」
そう言いながら手を伸ばすリンネさんと――
お兄さん(うん)
よいしょっと――
再びリンネさんを背負うお兄さん。
リンネ「ありがとね」
お兄さん(問題ないよ)
エシア(あ、なんだろ……)
その様子を見ていると胸がチクチクしてきた。
だって、お二人のそれは、
なんだか長年連れ添った夫婦みたいに見えてしまったから……。
お兄さん(エシア)
エシア「えっ?」
気が付くとドアの前に立っていたお兄さんが、あたしの方に振り返って『行くよ』と言うかの様に小さくうなずいてくれていた。
エシア「お兄さん……」
このドアをぬけた先がどうなっているのかぜんぜん分からない。
もしかしたら洞窟以上の危険が待っているかもしれない、けど――
お兄さん(大丈夫だよ)
そうだ。あたしがこの人を守ればいいだけの話。
あたしがこの二人を守ってさえいければ大丈夫なんだっ。
不安になるな、あたし。
エシア「うっしゃ!行きますかー!!」
リンネ「……」
お兄さん(……)コクッ
彼のおおらかな態度に吸い込まれるように、後ろからついて行った。
あたしたちはドアを開け、光の中を潜り抜け――
エシア(うわ、やっぱりまぶしっ!)
ドアを抜けた先であたしたちを待ち受けていたのは、
またしても予想外の展開だった。