逃亡1
宜しくお願いします
僕達の教室は突然眩い光に包まれ、そして謎の空間を漂っていた。何故こんな事になってしまったのか誰も分からない。
クラスのヒエラルキートップ、美男美女が集まった人気グループリーダーの白鳥君がみんなに落ち着くように爽やかな笑顔を振りまいている。
ヒエラルキー二位の不良グループリーダーの郷田君がいつも通りに反発している。
ヒエラルキー三位の秀才グループリーダーの山田君達はそれを冷めた目で見ている。
ヒエラルキー四位~六位の仲良しグループはどっちつかずでオロオロしている。
そしてヒエラルキー最底辺の僕は彼等の揉め事に巻き込まれないように机に伏せっていた。
~XX時間後~
俺の前には血を流し死んでいるクラスメイトの死体がある。俺もコイツらに斬り裂かれ、全身から血を流していた。満身創痍だが勝ったのは俺だ。
~XX時間後~
僕の腕の中には引き裂かれたブラウスで胸を隠し、スカートを奪い取られ隠す事も出来ない白い足にピンクの下着姿の美少女がいる。
僕は彼女を両手で抱きかかえ、彼から逃げる為に森の中を走っていた。
~二時間前~
お昼休みも終わりに近い時間。予鈴がなって僕は教室に戻ってきた。
高校1年の秋、文化祭も近くクラスは賑わっているが僕には関係ない。特に勉強も運動も所謂人並み、顔も人並み、性格は内気って言うか人付き合いは苦手。だから仲良しな友達もいないし、友達グループとかにも入っていない。
お昼休みの時間は僕の机はヒエラルキートップグループの人達が使っている。運が悪く僕の隣の席は学年ナンバーワンの美少女にして二階堂グループのお嬢様の二階堂麗華さんだ。
いつも昼休みになると、イケメンの白鳥君やスポーツマンの竜胆君、二階堂さんと矢鱈と仲良しの橋本さんと戸塚さんが集まってくる。
騒がしいのが苦手な僕は、お昼休みになるとそそくさと校舎端の階段へと避難する。人通りも少なく静かにお弁当を食べてラノベを読む。いつもの事だけど、とても落ち着く時間を過ごせる。
お昼休みが間もなく終わる頃、人気グループの人達も席に戻り僕は自分の席に座った。ん?僕の足元に消しゴムが一つ落ちていた。僕は消しゴムを拾い辺りを見回すと隣の二階堂さんと目があった。
「二階堂さんの?」
「そうよ」
「はい」
僕は手を伸ばし二階堂さんの机の上に消しゴムを置く。
「戸塚さん、消毒」
「はい、麗華様」
二階堂さんの前の席に座っている戸塚さんが僕が置いた消しゴムをハンカチで包んで手に取り、小さな除菌スプレーで消毒をした。まあいつもの事だけど。
二階堂さんは落ちた物を自分では拾わない。近くの人が拾い戸塚さんか橋本さんが消毒をする。
「ふん」と僕を一瞥する。ありがとうという言葉を聞いた事はない。
先日も廊下を歩いていた時に、二階堂さんが先生から預かったプリントを、手が滑ったのであろうか廊下に散乱させていた。たまたまその場にいた僕がプリントを拾い集めて渡すと、二階堂さんは受け取らず「あなたが持って行きなさい」の一言だ。
高飛車なお嬢様、それが二階堂麗華さんだ。
もう少しでベルが鳴り先生がくる。そんな時に教室が揺れた。地震だ!す、凄い揺れ!
パキィィィーーーーーーーーーーーン!!!
物凄い音がして全員が床に伏せた。
……………………………………治まった?
「おい!外がなんか変だぞ!」
誰かの声がして何人かが窓に走った。走って行かなくても分かる。窓の外は白い霧に覆われている。
「廊下も真っ白よ!」
廊下側の窓を見るとそこも真っ白な霧に覆われていた。
「と、扉が開かない!」
「窓も開かないぞ!」
「どけぇてめえらァ!」
不良チームリーダーの郷田君が椅子を持ち上げ、窓ガラスに向けて投げつける。しかし窓ガラスは割れずに椅子は弾き返された。
「な、何だァァ!?」
その後もみんなが色々やったが教室から出る事は出来ない。先生が来るかもと待ってみても誰も教室には来なかった。
そして途方にくれるクラスメイトを人気グループのリーダー白鳥君がみんなを宥め、不良チームリーダーの郷田君が大文句を言っている状況が続いていた。
そしてまた教室がまた揺れ始めた。
「ま、また地震だ」「な、何なの!」「ひ、ひえ~」
『あなた方は時空震に巻き込まれ、今は時空の狭間を彷徨っています』
教室が揺れる最中に謎の女性の声が頭の中で聞こえた。みんなも聞こえているみたいだ。
『このままでは時空の渦に飲まれて皆さんは消えてしまうでしょう』
教室内が騒然となった。「バカな!」「何でだよ!」「嫌よ!死にたくない!」「ひえ~」「た、助けてくれ~」
『皆さんの世界には戻せませんが、別の世界になら転移出来ます。宜しいですか?』
「何処でもいい!」「早く助けて!」「宜しい!宜しい!宜しいです!!!」
『では転移します』
そして僕達は眩しい光に包まれて時空の狭間に漂う教室から姿を消した。
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