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☆勇者・聖女・けん者の乙女ゲーム転生物語  作者: ミケ~またイチ
★秋の少女達は新たな伝説を生む
13/30

▲13話 ここは乙女ゲームの世界ですわ



 「そっそう言えば、ヒロインちゃんの攻略がさらに進んで、取り巻きがずいぶん増えたとか……。生徒会も仕事が(とどこお)ってしまっているそうですわ」


 しばらく死んだ目をしていたクリスティーナだが、気を取り直してそう報告し始める。


 「……生徒会。王子は生徒会役員でしたかしら?」


 クリスティーナから伝えられた内容に、アリエンナの視線は上を向く。


 ゲームでは、王子が生徒会長で、その取り巻き達が生徒会役員をしていた。

 でも、実際のところ、王族や高位貴族であるあの三人が、一般生徒のためにあくせく働くことなど考えられない。

 現実では、他の人間が生徒会長だった気がする。

 ゲームと現実に多少の齟齬(そご)が生じるのは、もう分かっていることだ。


 「王子は名誉生徒会長をやっておりますわね」


 「名誉生徒会長?」


 ブリジットが告げた、初めて聞く言葉にアリエンナは首を傾げる。


 「ええ、肩書きだけで、本当の生徒会とは別ですわね。

 慣例として、この学院では直系王族は名誉会長職に()くそうですわ。

 学院に、直系王族がいるときは、名誉生徒会と実際の執務・運営をする生徒会の二つが、存在するということですわね。

 名誉生徒会は、会長と副会長の二職だけで、王子の取り巻きの数だけ、副会長がいるそうですわ。

 (ちな)みに、王族が複数いる場合は、下位の方が、副会長になるそうですわ」


 ブリジットの詳しい説明に、アリエンナの眉が寄る。


 「有名無実というか、それは、意味があるのか、ないのか……邪魔なだけの存在のような気もしますけど」


 「本来の生徒会室とは別に、『名誉生徒会室』と言う名の豪華絢爛(ごうかけんらん)な応接室があるそうですわ。

優秀な成績や功績をあげた生徒を招いて、(ねぎ)らったり、褒賞(ほうしょう)を与えたりするのだとか……。

 将来の優秀な人材を確保する意味もあるようですから、あちらにとっては全く無意味と言う訳でもないようですわ」


 アリエンナの訝しげな表情を見て、ブリジットは補足説明を付け加えた。


 そこにクリスティーナが割って入る。


 「でも、邪魔は邪魔ですわよね。

 偉そうなだけで、仕事をしない役立たずは、ずっと出てこないように応接室に閉じ込めておけばいいんですわ。

 (たと)えば、あの立って歩いて(しゃべ)る、頭に緑の(こけ)()した、悪魔化した黒い『ウジムシ』とか……」


 クリスティーナの発言に、ハッとブリジットの目が見開かれる。


 「そうですわね。あの中身が燃えカスになってる赤い頭のオーガ、剣を振り回すしか能のない『ゴミクズ』とかは、人の目に触れないように閉じ込めておけばいいですわね」


 「──それは高ランク討伐対象になりそうですわね」


 (あき)れたように(つぶ)いたアリエンナの言葉を耳にして、二人はビクリと身を震わせる。お互いに顔を見合わせると、水を得た魚のように元気に話し始めた。


 「ハエになる前に、ギルドに依頼を出しましょうか?!」


 「いい考えですわっ。あれもキングになると、知恵がついて厄介(やっかい)になりますからね。」


 「()しき者は殲滅(せんめつ)すべきですわよね!」


 「跡形(あとかた)もなく、消滅させるべきですわね!」


 「クェックェックェッ」


 「クフックフックフッ」


 暗く目を輝かせ、狂気を()びた奇妙な声で笑い始めた二人を見て、アリエンナはゆっくりと立ち上がった。

 手を伸ばすと、すばやい動きで二人の額にピシッ、ピシッとデコピンを喰らわせる。


 「戻ってきなさい」


 威圧を込めた重い声が、アリエンナの口から発せられる。


 「ここは乙女ゲームの世界ですわ。

 王は普通の人間しかでませんわよ。魔法や魔の森があっても、悪魔や魔物はでませんの。落ち着いて下さいな」


 自分の一言が引き金になったのを棚に上げ、アリエンナは静かな声で二人を(さと)す。

 自分の額に手を当てた二人が静かになったのを確認すると、再び腰かけた。


 「……申し訳ありませんでしたわ。それで今は実質的な生徒会役員の方々も、ヒロインさん目当てに応接室の方に入り(びた)って、生徒会が機能していない状態らしいですわね」


 額をなでながら、癒しをかけたブリジットの顔は正気に戻っている。


 「もうすぐ、学院祭でしたわよね?そんな状態で大丈夫なのかしら」


 「ああ、その点は生徒会執行部の女生徒の方や、落ち着いた顔や味のある顔の男子生徒の方々が頑張って、なんとかなるみたいですわ」


 額に赤身が残っているが、クリスティーナの声音(こわね)も元に戻っていた。

 ブリジットの手から淡い光が、投げかけられ、クリスティーナの額の赤身も消える。

 感謝の視線を送ったあと、クリスティーナは籠に盛られた焼き芋に手を伸ばした。


 アリエンナはクリスティーナの話を聞くと、小さくため息をついた。


 「それは、良かったですけれど、お困りの方も多く出てそうですわね」


 「ええ、ヒロインさんはその辺のことは余り考えず、大勢の取り巻きを引き連れて、学院内を闊歩(かっぽ)しているようですわね。困ってる方も多いそうですわ」


 アリエンナの懸念(けねん)を受けて、ブリジットが答える。


 「……ヒロインの取り巻きも、横に広がらす、廊下では縦一列(たていちれつ)に並んで歩くぐらいの、人に迷惑をかけない分別(ふんべつ)があればよろしいんですが……」


 「──ええ、本当に」


 アリエンナの呆れを含んだ言葉に、ブリジットの眉がわずかに動くが、ニコリと微笑んで相づちを打つと、皆のカラになった湯呑みにお茶を注ぎ始めた。








★有名無実──名ばかり(立派)で、それに(ともな)う実質のないこと。


★ハエの王──名前の付いてる、結構有名な悪魔。

★オーガ──ハイファンタジーなどで、よく出てくる鬼のような魔物。キングに進化すると力が増大して群れを作り、厄介な存在になる。

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