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第一話



 とあるところにミクロンという名の少年がいました。

 いっぴきおおかみを気取るミクロンは今日も一人で探検探検



 おや? ミクロンが歩いていると道端で男の子が泣いているではありませんか

 心優しきミクロンはどうしたんだい? と男の子に声を掛けました。すると男の子は


「お父さんが先に帰っちゃったの」


 と言いました


 悲しみにうち暮れる男の子を前に、これはほおっては置けないな。と意志を固めたミクロンは


「大丈夫。僕が何とかしてみせるよ」


 と胸を張りました


 自信に満ち満ちているミクロンの言葉に男の子は


「本当!?」


 と前のめりでミクロンに詰め寄りました。ミクロンは


「僕を誰だと思っているんだい? ミクロン様だぜ!」


 男の子に尊敬の眼差しを向けられミクロンは完全に調子に乗ってしまいます


「じゃあミクロン様、一緒にお父さんを探して下さい!」


「おう! 任しときな! でお前さんのお父さんってのはどんな人なんだい?」


「あれがお父さんだよ」


「はい?」


「あ・れ」


「あれ?」


「うん!」


「………」



 男の子が指差したのは太陽。ミクロンの聞き間違いでなければ男の子のお父さんとは太陽の事なのでしょう


 太陽がお父さんと言われて流石のミクロンも困り果ててしまいました


 どうしたものか……どうしたものか……とミクロンが時間を無駄に消費する事と比例して心なしかミクロンを見る男の子の眼差しが冷ややかになり始めていたその時! やっとこさミクロンに名案が浮かびました



「物知り爺さんのところへ行くぞ!」


「物知り爺さん?」


「早く早く」


「うっうん!」



 男の子の手を握ったミクロンはグングンと歩みを進めます。何故かは分かりませんが男の子の頬は赤く染まっています



「爺さん! 爺さん! 開けてくれ! 聞きたい事があるんだ!」


 ドンドンッ! ドンドンッ!


 ここが見せ場だ! とばかりにミクロンは元気よく扉をノックします。すると



「やかましいわいクソガキ!!!」



 ゴッツン!



 なんとミクロンは拳骨をもらってしまいました


 頭を押さえながら痛みに耐えるミクロンを見た男の子は憤りを抑えきれずに反射的に物知り爺さんに噛みつきます



「痛っ!? 何をするんじゃ―――!!!」



 ゴッツン!



「うえ~ん!!」



 これは痛い! 物知り爺さんの反撃により手痛い一発を食らってしまった男の子は思わず泣き叫びます



「やかましい!!」

「爺さん大人気ないぜ?」

「そもそもお前が原因じゃろうが! こんの!」

「ちょっと待った! かくかくしかじか」

「知らんがな」

「えっ!」

「わしゃ知らん」

「物知りなんじゃないの!!?」

「何でもかんでも知っている訳なかろう」

「そんな………ひっ!」



 思わずミクロンが振り返ると、そこには完全に殴られ損のくたびれもうけな男の子が先程よりも冷たく恨めしそうな目でミクロンに視線を向けています


 思わず鳥肌が立ったミクロンは物知り爺さんに問い掛けました




「じゃあ知ってそうな奴を紹介してくれ!!!」

「ドラゴンかの。ワシャもう寝るから、はよ消えろ」



 バタンッ



 ミクロンは気付いていました

 物知り爺さんが男の子から逃げ出したという事に



「よし! 次はドラゴン爺さんのところだ。頑張ろうぜ!」


「ねえ……」


「何だい?」


「本当に帰れるんだよね?」


「大丈夫だって!気楽に行こう気楽に。急がば回れって言うしさ」


「?」


「兎に角、今日はもう寝よう」


「うん……」



 ミクロンの冷や汗は尋常ではありませんでした。何とか男の子を落ち着かせたミクロンでしたが、あの冷たい視線にはどうにも嫌なものを感じて仕方がないのです



「気にしちゃ駄目だ気にしちゃ駄目だ」



 このようにミクロンはブツブツと念仏を唱えるように眠りにつくのでした




 ◆つづく◆





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