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未来戦艦大和 第2章 「若き連合艦隊司令長官」(4)

「次の質問をいたします。今日は何年の何月、何日でしょうか?西暦でお答え下さい」

「えぇっと…いずもに乗ったのが4月7日だったから…2015年の4月7日だと思います」

「日付は合ってますが、年が違います。今日は3045年、4月7日になります。皇歴で言うと明和20年4月7日ですね」

「えぇっ!?31世紀?そんな馬鹿なはずは…21世の間違いじゃないんですか?」

「3045年で間違いないですよ…ほらっ!」

 美青年は壁に掛けてあるカレンダーを指差した。カレンダーは皇歴と並んで、確かに西暦3045年と記されてあった。

「あっ!本当だ…どうなってんだ?」遼と亮は、もう何が何だか分からなくなってしまった。

「驚かれるのも無理はないかも知れませんね…でも、質問の答えを聞いて僕には確信できました」

「何を…です?」

「あなた方がこの世界の人ではない事を…です。その証拠に、机の上にあるあなた方が所持していた器機は、どれもこれもこの世界には存在しないものです。構造も仕様もこの世界の器機とはまったく違います」

「存在しない機器ですって?…自分と亮はこの世界の人間ではないって…どう言う意味ですか?」

「仮説を立ててみました。お聞きになりますか?」

「えぇ、ぜひ…」

「もし、あなた方が他の天体からやって来た人だったとしましょう」

「自分と亮は宇宙人だと言う事ですか?」

「えぇ…しかしその場合は、宇宙に地球と瓜二つの惑星が存在し、生物の進化の過程や、文明の進歩が同じでなくてはなりません。しかも、その惑星に我々と同じ、日本語を話す日本人がいて、日本国が成立していなければならない。可能性はあると思いますか?」

「そんなのどう考えても無理でしょう」

「そうですよね。では次に…あなた方が我々の世界ととてもよく似た、別の世界の日本から来られた方だとします」

「よく似た別の世界の日本…って、それどう言う意味でしょうか?」

「ご説明いたしましょう…これは僕の恩師の「藤崎博士」が、量子論に基づいて立てられた仮説ですが…仮にあなた方が森の中で、二つの道に出会ったとします。一方は右に行く道、もう一方は左に行く道…さて、あなた方はどちらかを選ばなければなりません。どうされますか?」

「う~ん…右を選んで行く事にします」

「あなた方は右に行く道を選択されました。その場合、右の道の先にある可能性が現実となります。しかし、左の道の先にある可能性はなかった事になりますよね」

「左の道は、選ばなかったんだから、そうなりますね」

「ところが、藤崎博士の仮説では、左の道を選んだあなた方もいた事になります。これを「可能性の世界」と言います」

「可能性の世界?…でも、そんなものは空想上の産物では?」

「いいぇ、それも一つの現実です。人が何かを選択する度に世界は分岐を繰り返し、そうして、無数の枝分かれした世界を形作って行くのです。その形作られた無数の世界を称して「時空連続体」と言うそうです」

「時空連続体…ですって?」

「そうです。そして、枝分かれした無数の世界はその起源が同一であった事から、たどる運命こそ違え、影響を及ぼし合います。互いは見えなくとも、それぞれがまったく無関係と言う事はありません。言ってみれば因果の鎖で繋がれている訳です。だから、時空における連続体となります」

「無数の世界が、因果の鎖で繋がれてるって…どう言う事ですか?」

「そうですね~…例えば、あなたが一人の女性と恋仲になったとします。そして、この女性と結婚する事を選択したあなたがいて、もう一方では、この女性と別れる事を選択したあなたがいるとしましょう。道が二つに分岐した訳ですね」

「上手い事を言いますね…恋人と結婚した自分と、恋人と別れた自分かァ」

「あなたは、それぞれの可能性の世界で別々の道を行く事になりますが、ただ一つだけ共通のものがあります」

「と、言いますと?」

「どちらのあなたも、彼女と付き合った…つまり、恋仲だったと言う事実を持っている事です」

「あっ!そうか~」

「なので、枝分かれしたあなたのたどる運命はそれぞれ違っていても、彼女と恋仲だったと言う事実の影響を受ける事になります。仮に、恋人だった女性と別れたあなたが、偶然、街の中で彼女に出合った場合は、少なからず動揺が起るでしょ」

「う~ん、確かに…子供を連れて女房と散歩してた時に、昔の彼女に出会ってびっくりした事もありました」

「遼ちゃん、そんな事があったのかァ…隅に置けないなァ」

「いや、俺は別に昔の彼女に未練がある訳じゃァないよ」

「ははは…まァまァ、例え話ですから…でも、これで時空連続体にあるそれぞれ世界が、決して隔絶したものではなく、相互に影響を及ぼし合ってる事がお解りいただけましたでしょうか?」

「はァ、何となく」

「なので、この仮説通りならば、あなた方が我々と同じ日本語を話す日本人であり、多少の風貌や文化の違いはあっても、起源を同じくする事が証明できる訳です」

「じゃァ、自分と亮はその時空連続体の中にあるいずれかの世界の日本から来たと言う事でしょうか?」

「そう言う事になりますね。いや、それ以外の仮説では、あなた方の存在を証明できません」

「そうだったのかァ…それなら今まで起きた事が何となく説明が付くような気がします。でも、よくご存知ですね~」

「はい、僕も一応科学者の端くれですから…あ、申し遅れました。僕は羽生大二郎と申します」

「自分は軍事雑誌「旭日」の記者で、天雲遼と言います」

「同じく遼さんと同じ軍事雑誌「旭日」のカメラマンで、陣内亮と言います」

「なぁ~んだ。ジャーナリストの方でしたか~」

「失礼な事をお聞きしますが、あなた…いや、羽生さんはこの艦の指揮官なんでしょうか?」

「この艦と言うより、艦隊全体の指揮を任されております」

「えっ!?もしかして連合艦隊司令長官…とか?」

「えぇ、そう言う役回りを仰せつかってはいます」

「やっぱりそうか…でも、一つ気になる事があるんですが…」

「気になる事って、いったい何でしょうか?」

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