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未来戦艦大和 第3章 「沖縄水上特攻作戦」(6)

「返信のご指示をお願いします。長官」通信士がそう羽生に促した。

「そうだね…敵潜水艦を排除してくれた橋本中佐の労をねぎらって、渡した資料に基づいて敵艦隊の座標を伝えてくれないか」

「はい、了解しました」

 羽生の指示を受けた通信士は、あらかじめ彼から受け取った資料を見ながら、イ-58潜水艦に発光信号を送り始めた。

 羽生は、遼から借りたパソコンの取材記事を元に作戦資料を作成して、あらかじめ各部署に配布していたのだった。

(記事が役に立ったみたいで良かった。異世界で、多少顔の色が違っていても同じ日本人だからな)遼は安堵感を覚えた。

 大和と潜水艦隊との信号のやり取りは、それからしばらくの間続いた。

「作戦資料に基づいて、橋本中佐に敵艦隊の座標と作戦の詳細を伝達いたしました」通信士は、羽生にそう報告した。

「ありがとう…ご苦労さまでした」羽生はそう答えて、海上にいる潜水艦隊に目をやった。

 それに答えるかのように、イ-58潜水艦の司令塔から、また何やら発行信号が送られてきた。

「橋本中佐から長官への伝言です 《これより、本艦隊は海中より作戦海域に先行す。貴艦隊の武運を祈る》 との事です」

「ありがとう。万難を排しても必ず行く。作戦海域で待つように…と伝えてくれ」

「はい、了解いたしました」

 大和からの信号を受け取った橋本中佐は、イ-58潜水艦の司令塔から大和に向かって敬礼をした。

 羽生が敬礼を返すと、来島参謀長、草薙作戦参謀、春日情報参謀、有馬艦長らも一斉に答礼をした。

 そこには海に生きる…いや、海で戦う者たちの無言の魂のやり取りがあった。

 ほどなく、イ-58潜水艦の司令塔にいた橋本中佐は、部下と共に艦内に入りハッチが閉じられた。

 そして、9隻のシャチの群れは、何事もなかったかのように、海中にその黒ずんだ姿を姿を消した。

 遼と亮は、自分たちがいた世界にはなかった別の歴史の一幕を見たような気がした。

 橋本中佐の率いる9隻の潜水艦隊は、何かが起きる事を予感させた。


「これより、本艦隊は偽装航路を取りやめ、一路沖縄フロートへ向かいます」

 若き連合艦隊司令長官、羽生大二郎の意を決した命令が、戦艦大和の艦内に響き渡った。

「と~りか~じ、65度。両舷前進!よぅそろ~っ!」

 有馬艦長が、声高に成海航海長に航路変更を命じた。

「と~りか~じ、65度。両舷前進よ~しっ!」

 艦長の命令を受けた成海航海長も、気合の入った声で、そう答えた。

 雲が低く垂れ込めた曇天の海を切り裂くように、大和は船首を大きく南に向けて舵を切った。

 軽巡洋艦「矢矧」、駆逐艦「冬月」「涼月」「磯風」「浜風」「雪風」「初霜」「霞」の各艦がこれに続いた。

 行く手に何が待ち構えているのか?…遼と亮が知る限りでは、それは不幸な結末を迎えるはずだったのだが。


第3章 「沖縄水上特攻作戦」(完)→ 第4章「激闘!坊の岬沖海戦」 へ続く

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