第零話 新しい七不思議
「『多目的Dの幽霊』?」
放課後、いつも一緒にいる仲良しグループのクラスメイトと夕日の射し込む教室で一つの机を囲んで話し込んでいると、怪談好きの一人が学校の七不思議なんだと話し始めた。
俺、鍵谷宗介が通い始めて早3年目になる赤山中学校は創立80年になるまぁまぁ古い学校だ。やはりそう言う不思議な怪奇はつきものである。
ついて来る怨念少女
音楽室の呪いのカノン
理科準備室のマッドサイエンティスト
勝手に点く会議室のプロジェクター
段数の変わる特別校舎2階の階段
願いを叶える猫の姿見
真夜中相談教室
の、計七つが我が赤山中学校で語り継がれている七不思議だ。
赤山中学校に入学してサッカー部に入ったとき、当時3年生だった先輩達が新入生歓迎会と称して一人一つずつ怪談を話してくれた。その時自分が一番興味を引かれたのが赤山中学校の七不思議だった。
聞いた怪談が自分の凄く身近なところにあると知ってしまうと、更に深く知りたいと思ってしまうのが怖がりの探究心だろう。
俺はとにかく聞いた七不思議をこの目で確かめてどれが本物で、どれが偽者なのか知りたかった。
知ってどうする?と皆は言うだろう。
もちろん知って偽者なら安心。
本物なら遭わないように避けて避けて避けまくるんだ。
何故なら俺は大の怖がりだから。
七不思議とは大体出現場所や時間帯が決まっているものが多い。だから本物と偽物を知って、この不思議は偽物だから安心。この不思議は本物だから要注意、と普段の行動に気をつけることが出来る。
そうして七不思議のうち二つを残し、五つを検証し終えて得た答えは全て嘘、偽物だった。
「待てよ、俺の知ってる七不思議には『多目的Dの幽霊』なんて無かったぞ」
「何だよ鍵谷知らないのか?七不思議に『真夜中相談教室』ってのがあっただろ?あれの正体は用務員のおっさんだったって話さ。そんで後々ちゃんとした不思議が出てきたんだよ!それが『多目的Dの幽霊』!」
何てことだ、真夜中だから自分は全く関係が無いと踏んでいた『真夜中相談教室』は偽物で、普段前を通る多目的Dに本物の不思議があるだなんて・・・。
宗介は少し癖のある髪の毛をくしゃりと握り机におでこをくっつけ深くため息をついた。
そんな怖がりの宗介が面白いのか机を囲んでいる友人達は笑いを堪えながら話を続ける。
「でもこの『多目的Dの幽霊』は鍵谷が気にするようなもんじゃないと思うぞ?」
「え?」
「なんでも『多目的Dの幽霊』は悩み事を聞いてくれる幽霊らしいんだよ!」
「へぇ・・・随分親切な幽霊なんだな・・・」
ところで何故お前はそんなに『多目的Dの幽霊』に詳しいんだ?と言う宗介の呟きは部活終了を告げるチャイムにかき消された。開けられた窓からは部活終了の号令をしている野球部の元気すぎる声と、春になったばかりの少し身体を冷やしてくる風が入ってきた。
初めて自分の思い描く話を表に出させていただきます。
拙い文章は読みにくいかも知れませんが、お付き合い願えれば幸いです。