返事をしてくれジョニー
戦場で使い捨てられる大量生産される兵士。クローン。ジョニーシリーズと呼ばれる彼らは、生まれたときから兵士である。何もわからないまま行軍を開始する。これは戦争ビジネスであった。
しかし戦争が集結してしまった。生物科学研究所は大いに困った。この大量に余ったジョニーシリーズをどう処分しようか、頭を悩ませていた。仮にも彼らジョニーシリーズは、大統領の息子の遺伝子から生まれたものである。
それはすぐに解決した。研究員のひとりがある提案をした。ジョニーシリーズを家庭用に改良してみてはどうだろうか。というものだった。
家庭用ジョニーの開発が始まった。
そして案外簡単に完成した。それはジョニーシリーズが間違いなく人間の遺伝子を持っていることの証明でもある。
家庭用ジョニーシリーズは、他者に対して危害を与えないように教育された。ただし、人間を最優先に考え行動するようにプログラミングされている。犬や猫よりも大事な命なのだ。
家庭用ジョニーシリーズの販売が開始した。それは瞬く間に売れていった。食事を必要としない安価で質の高い労働力。死んだら買い換えれば良いという手軽さも人気を呼んだ。
ここに、一つの家族があった。彼らはジョニーシリーズを大切に、人間として扱った。常に無表情を崩さないよう教育されたジョニーシリーズは、このとき初めて笑った。ジョニーナンバー<10119>彼は幸せ者だった。
「ねぇジョニー!絵本を読んで!」
娘のメアリーが言った。彼女はジョニーに一番懐いていた。
「メアリー、それはお仕事が終わってからね」
メアリーの母、ミシェルが言った。ミシェルも誠実なジョニーを信用していた。
「はっはっは!ジョニーは人気者だなぁ」
父親のゴードンが言った。彼はジョニーを仕事仲間だと思っている。
多くのジョニーシリーズが使い捨ての道具として扱われる中、10119は間違いなく幸福であった。
仕事終わりには美味しい食事が待っていた。ジョニーシリーズはあまり食べなくても活動できるように改良されている。なにも食べなくても1ヶ月は活動できる。価格は約100$。安価なためダメになったら買い換えるものもいる。廃棄しても土に還るので自然にも優しいのだ。
ある日、ミシェルとメアリー。そしてジョニーナンバー<10119>が共に歩いていた。買い物帰りの家路を進むと、男が現れた。黒ずくめの男は銃を持っていた。
男が銃をこちらに向ける。撃った。倒れたのはミシェル。その時ジョニーの中に兵士だった頃の、別のジョニーの記憶が蘇る。さっと男の懐に飛び込み、銃を奪った。その銃で男の眉間を撃った。男は絶命した。
「ママ!ママ!返事してよ!」
メアリーが泣き叫んでいた。ジョニーは脈をとる。死んでいた。
銃声を聞きつけて、人が集まってきた。
「なんと言うことだ。ジョニーシリーズが人を殺した」
なんと言うことだ
ひどい
ジョニーは安全何じゃなかったの!?
そんな声が溢れていた。メアリーは話せる状態ではなかった。
すぐにジョニーシリーズの販売が停止した。大量のジョニーシリーズが廃棄された。
ジョニーナンバー<10119>も例外ではない。
大人になったメアリーは生物科学研究所に対して、人間の尊厳を傷つけたとして裁判を起こしている。勝利はきっと目の前に迫っている。
プロトタイプジョニーの続編です。