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 この世界は、六角形の結界に守られている。と言っても、創生時からそうだったわけではない。始りは永遠と続いているかのような大地が有り、その周りは海というとても大きな水溜りが囲んでいたと伝わっている。

 そんなとても広かった世界が今の結界に守られた形になったのは、本の五百年ほど前の話だと伝わっている。勇者と呼ばれる存在を至上とする教会の文献には、世界を我が物にせんと闇の中で蠢く魔王なる存在こそが、全ての元凶と記されている。

 その書物は、こんなことが書かれていた。


 ――(前略)――


 魔王は世界を手に入れるために、まず迷宮と呼ばれる空間を作り上げた。その中では恐ろしく凶悪な魔物が日々生み出され、魔物を育てるためのたくさんの食料が用意され、極めて強力な武具が作られているという。

 もし凶悪な魔物が強力な武具を纏って、迷宮の外に溢れてきたら……。人々はその結末を想像し、日々を怯えながら暮していくしかなかった。

 しかし魔王が恐怖を世界にまき散らす中、一人の好青年が正義の心を携えて、魔王を打ち倒さんと立ち上がった。彼こそが、後に勇者と呼ばれる男である。

 後の勇者は単身で迷宮に忍び込み、そこで生まれる魔物を観察し始めた。そこであることに気が付いたのだ。

「おや、魔物は強力な武具を身に着けていない」

 後の勇者はもしやと思い、強力な武具の納められた部屋へと向った。そこで自分の考えが正しかったことを大いに喜んだ。

「やはり魔王は完全な存在ではない。何故ならば、魔物は武具を使うほどの知能を持っていない」

 後の勇者が入った部屋には、手付かずの強力な武具が残されていたのだ。

「魔王が完全な存在でないならば、我々人間にも勝ちの目はある」

 後の勇者はその部屋にあった武具を纏い、勇者となってその迷宮を破壊した。迷宮は消失し、多くの人々が勇者に感謝の言葉を述べた。王様も大変喜び、自分の娘をやろうと言った。

 しかし勇者は、気を引き締めてこう言った。

「いいえ。世界にはまだまだ危険な迷宮が溢れています。僕は勇者としての使命を果たし、全ての迷宮を破壊して、魔王を倒さねばなりません」

 勇者はそう言って、たくさんの声援を背に次の迷宮を目指したのだ。


 ――(中略)――


 そうして魔王を倒した勇者は、意気揚々と皆の待つ街へと帰ってきた。しかし卑劣な魔王は極めて執念深く、世界に呪いを残していったのだ。

 世界には再び迷宮が現れるようになり、再び凶暴な魔物が生み出されるようになったのだ。

 勇者は毅然と言い放った。

「僕は勇者として、最後の使命をはたします」

 そう言った勇者は目を閉じ、静かに祈り始めた。すると勇者の姿は光の粒となって弾け、空高く登っていった。やがて光は膜となり、世界を優しく包み込んだのだ。膜は魔王の呪いを弱め、迷宮の出現を見事抑えて見せた。そう、人々は勇者の命を掛けた慈悲がなければ、生きていけなかったのだ。

 とはいえ、さすがの勇者も既に生み出された迷宮を消す事はできなかった。僅かばかりの迷宮が地上に残ってしまい、そこからは執念深い魔王の呪いが漏れ出していたのだ。人々は勇者が消えたことに嘆いた。しかしその中に、勇者の正義の心を受け継いだ者達が居た。彼らこそ、教会を立ち上げた最初の五人である、勇者の剣たちである。


 ――(後略)――

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