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密着・オンライン警察24時!!  作者: 木魚
一章 イベント編
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金欠は最大の敵なり

「逮捕だぁ?舐めたこと言ってんじゃねぇぞ!!」


 俺がかっこよく決めゼリフを言ったのが気に入らなかったのか、男は発砲してきた。といっても所詮ゲームはゲームだ。現実の銃弾よりずっと遅い。俺は少年を抱えて横にステップを刻む。二発三発と撃っているが、当たる道理もないので避けていく。それよりもこれは、


「公務執行妨害だな。余計な罪を増やして、何がしたいんだ?お前」

「うるせぇンだよ!!さっさと死んどけや!!」


 気が短い野郎だ。これはキツイお灸が必要かな。俺はメニュー操作で装備欄から手錠をもう一つ装備した。基本的に手錠は持てるだけ装備することが可能だ。


「お前ごときに銃は必要ないな。手錠だけで十分だ」

「ごちゃごちゃうるせえ!!」


 男は引き金を引いた。が、弾が出てくることはなかった。それもそのはず。初期装備の銃に込めることが出来る弾は六つ。怒りで残った弾を確認していなかったのだろう。男は弾が無い状態で発砲したため、ほんの少しの硬直に陥る。俺はその隙に懐へと潜り込み、手錠で素早く足と手を拘束する。この間約三秒。


「チェックメイトだ。署……はまだないから、取りあえず俺の部屋に来てもらう」

「くそ!離しやがれ!!おい、引きずるな!!」


 犯罪者に口なし。俺が無視して引きずって帰ろうとしたその時。


「あの!!僕はいったいどうすれば」


 俺を引き留める声がした。少年だ。さて、どうするか。選択肢は三つ。連れて帰るか、誰かに預けるか、放っとくか。誰かに預けるのは無理だな。知り合いいないし。放っとく、俺は警察と同じような者だから、この処置をとるといろいろ問題が出てくるな。警察の面子に関わる。


「となると仕方ねぇ。着いてきな、坊主。少しの間だけなら面倒見てやらんこともない」


 少年は曇らせていた表情を笑みへと変えると、俺に着いてきた。とにかく、この少年のことに付いても聞かなければ。仕事がまた増えたな。






「銭型さん。犯罪者予備軍をひっ捕らえたことは良いですが、ここは託児所じゃあないんですよ」

「ハハ。そこをどうにかなんないかな?放っとく訳にもいかないし」


 所変わり、俺の部屋。捕えた男にお灸を添えて、俺は部下に頭を下げることになっている。てか、俺上司だよな。少なくとも目の前のスーパーエリート様より偉いんだよな。それと少年、俺を盾にするな。確かにあのお姉ちゃんは怖いかも知んないけど。


「宿の部屋代はどうするんです?人数が増えたらそれだけ、料金も上がるんですよ」

「う……ご尤もで」

 

 俺と彼女の二人だけなら後十日は持つだろう。だが少年を入れると五日ほどでスッカラカンになってしまう。自分で金を稼ぐか?この世界で金を集める方法は確か大きく分けて五つ。

 一つ、ファミリー同士の争いで勝って土地の所有権を手に入れる。所有権を手に入れれば、その町の金がいくらか『ショバ代』として周ってくる。

 二つ、敵ファミリーから強奪する。読んで字の如く闘って奪い取る。

 三つ、商売で稼ぐ。武器や薬などを売り捌く闇商人になる。

 四つ、ファミリーからの依頼を受け報酬として金をもらう。

 最後、月一であるらしいイベントに参加して、上位の者に送られる商品を売る。

 

 こんなところだ。ちなみにプレイスタイルも上からボス、ギャング、アキンド、ヒットマン、ギャンブラーと公式で分類されている。

 この中で俺がやれることは、五つ目。ギャンブラースタイルだろう。人を殺すことを前提としたものは無論NGだし、俺に商売ができるとも思わない。イベント時はHPがなくなっても死なない仕様だから大丈夫なはずだ。

 よし、希望の光が見えて来たぞ。


「喜べ少年。俺がイベントで活躍すれば、どうにかなるかもしれないぞ」

「ホントに?……でも、いつ開催かわかるの?」

「恐らくまだ先であろう開催日とこちらの所持金がなくなる日、どちらが早いかは明確かと」


 しまった。そのことを完全に失念していた。これは本気でまずい。俺は思わず頭を抱えた。見捨てるしかないのか?少年を。行き詰ったこの状況、次のアイデアを出したのはなんと少年だった。

 

「他の部屋を取って、必要な時だけ呼んでもらうっていうのは」

「おお、なるほど」

「無理ですね。部屋は全て埋まっていますし、その後はどうするんです?君のような子供が人を殺せるの?」


 駄目か。まるで希望を打ち砕かれた気分だ。やはり少年のことを見捨てる他ないのか。すっかりネガティブになり、黙り込んだ俺たちを見かねたのか、弥生君は見ていたノートを勢いよく閉じると少年の元へ詰め寄った。

 そして威圧的に話し始めた。


「君、名前は?」

「へ?」

「名前を聞いているの」

「あ、竜崎聖りゅうざきひじりです!!」

「なんでここにいるの?」

「お父さんのダイバーを勝手に使って……それで」


 ちなみにダイバーってのは仮想空間に入るための機械だ。原理はなんちゃら波がなんとかなってだったような気がするが全く知らん。それより、そんな事故だったのか。今後こんなことが無いように、戻ったら会議の時にでも言っておく方がいいかもな。


「そう、聖君。特価交換って言葉知ってる?」

「何かを得るには、それ相応の何かを支払わなければならない……ってやつですか?」

「そうよ。つまり何が言いたいかっていうと、私がしばらく商売でお金を稼ぐから、あなたに雑用をやってもらうわ」

「雑用……つまり、家事全般ですか」

「もしもの時のために、戦闘技術も学んでもらうけれど。文句はないわね」

「はい!!」


 最後の方は脅しに近かったが、とにかく丸く収まったのか?だがあの顔、絶対何か企んでいるな。竜崎聖、彼のこれからはいろいろ大変そうだ。


「という訳で銭型さん。仕事は三倍増しですがよろしくお願いします」


 ……俺もこれから大変そうだな。


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