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密着・オンライン警察24時!!  作者: 木魚
一章 イベント編
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優秀な部下

 ゲームでの死が現実の死となるデスゲームに化したBWO。この仮想の世界に囚われたプレイヤーの数、約百万人。そのうち生きて帰れるのは百人、確立としては0.0001%。言い換えれば、九十九万九千九百人の命を犠牲にするという事だ。さらにタイムリミットがあり、三年のうちに脱出できなかった場合も、死が待ち受ける。


「開始から三日、プレイヤーのほとんどは動けていないが、すでに動き出している者も数える程度にはいる。俺たちも、いつでも動けるようにしておかないと、なぁ?弥生君」

「それも大事ですが、やるべき仕事もきちんとこなしてくださいね。銭型さん」


 最初にある金で宿をとった俺は、コーヒーを煎れながらこれからのことを考えていた俺に、凶器の如く書類の山を投げ掛けてきたのは、今日というか十分ほど前に本部の方から送られてきた、『ブレインガーディアン』候補生〈如月弥生きさらぎやよい〉。今年超一流大学を卒業した、超絶エリート様だ。


「なぁ、弥生君。俺は本来なら休暇を満喫して、しばらく仕事デスクワークとはおさらばの生活を送っているはずなんだが……その辺をどう考える」

「急とは言え、この状況も仕事は仕事ですので、書類の方も片づけなければ困るのはそちらの方ですよ」


 正論で返された。俺の反論は完全なる正論によって壊された。反論する気力もなくなり、ため息を吐きながら書類を片付けていく。異常なステータス補正のおかげだろうか。手が速く動く。

 

 『ブレインガーディアン』ハッカー糸原深夜が、予定通り俺のアシストとしてアイテム欄に送ってきたものは三つ。

 まず、俺の装備。いつも俺が着ている古ボケたベージュのコートと、武器として手錠と拳銃。このうちコートはステータスをいろいろとおかしな数値に高めてくれている。なんと通常の十五倍だ。まぁ、守る立場の俺がレベル上げ、つまり殺する訳には行かないから、この数値も妥当なとこだと思う。


 二つ目に、特殊エリア『トリカゴ』。簡単に言うと牢獄だ。といっても、何でもかんでも投獄するわけじゃあない。三人以上殺害した者しか投獄できないようになっている。さらに、僅か三ヶ月しか入れておくことが出来ないという。シン曰く、敵に邪魔されてこれが限界だったらしい。俺たちに殺し合いさせるための、敵の思惑だろう。


 最後に優秀な部下。無論、弥生君のことだ。首謀者探しが少しは捗るだろうとのことらしい。


 今日のことを考えながら、装備によるステータス補正で、いつもより早く書類を片付けた俺は弥生君に少し提案をしてみることにした。


「時に弥生君。今はまだ起こってないが、犯人との戦闘になった時のために、肩慣らしをしておいた方がいいと思うんだが。どうかな?」

「書類仕事を終わらせたのなら、好きにするといいです」


 部下からの許可を得た俺は、早速町に出ることにした。高機能AI(人工知能)を搭載したNPCが世間話に花を咲かせている。名前が表示されないのがNPC,逆に表示されるのがプレイヤーだ。ちなみにBWOではNPCへの暴行は禁止されている。万が一した場合、『ポリス』と呼ばれる戦闘NPCが出動し、レベルダウン、アイテム剥奪などのペナルティを加えるらしい。


「……プレイヤーを見かけねえな。全員引き籠ってんのか?」


 そんなことより、今は動いても大丈夫な広い場所を見つけないと。「オープン」の声でメニューを出し、マップの項目をタッチする。地図が映し出される。


「えーと、広い場所……あったな。二分ぐらいか」


 先程NPCが和やかに話していた場所を表とすれば、明らかに裏のような場所にあった。少し走って二分ほどで到着。さぁ、いろいろやってみようという時だ。俺はある声を捕えた。


「……子供……か?」


 子供の声だ。だがおかしい。BWOは知っての通り、内容が過激だ。購入時には必ず、十八歳以上か否かの確認がされるはずなのだ。だが、俺がさっき聞いた声はまだ声変わりもしていない、十歳ぐらいの子供の声だ。

 俺が立ち止まっていたその時だ。


『ざけてんじゃねえぞ!!クソガキ!!』


 少し離れた場所からそんな声が聞こえてきた。今度はおっさんの声だ。そんなことより、さっきクソガキって言ってたよな。ということは、俺がその前に聞いた声は間違いなく、


「子供の声ってことか。ここからだと、三百メートルってとこか」


 俺は声のした場所へ向かって全力で走り出した。ステータス補正により、五十メートルを三秒ほどで駆け抜ける。現実ではありえない、ゲームだからあり得るスピードだ。二十秒ほど走り、見えてきた。子供の姿が見える。それよりも重大なのは、もう一人いる大人が銃を構えていることだ。


「まずいっ!!間に合え!『伸縮』」


 俺は手錠を装備し、振るった。数あるギミックのうちの一つ、『伸縮』が発動。繋ぎ目が伸び、五メートルほどの距離を一瞬で埋める。少年の手を捕り、引き寄せる。間一髪で銃弾に当たることなく、こちらに手繰り寄せることが出来た。


「っな、なんだてめえ!!」

「こんな状況で苛立っているとはいえ、子供に手を出すとは穏やかじゃねえな」


 手錠をはずしてやりながら、俺はゆっくりと向き直った。


「政府公認対電脳犯罪特別機動隊。通称『ブレインガーディアン』メンバー、《暴君》銭型八郎の名において、恐喝、殺人未遂の罪でお前を逮捕する」

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