表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
密着・オンライン警察24時!!  作者: 木魚
一章 イベント編
12/19

奥の手

 その報せが俺たち本戦出場者全員に届いたのは、本選開始から僅か十数秒の事だった。報せとは即ち『一人目の入賞者が決まった』ということ。俺は、いや参加者全員が自分の耳を疑った。当然だろう。数十秒という短時間で三人のプレイヤーを倒すなど馬鹿げているにも程がある。しかし実際にいるのだ。そんな馬鹿げた事をこなすプレイヤーが。

 システム音と共に流れた名は『シモン』。それ以上の情報はなかったが、今後二日もすればシモンというプレイヤーの情報は自然と耳にはさむだろう。

 とまあ長々と考えに耽ってはみたが、今それはどうでもいいことだ。では何に集中するのか、という問いが生まれるが答えは簡単だ。


「目の前の敵を倒す……だな」


 呟きながら前を見据える。視界に移るのはマシンガンを構えるプレイヤー。正直言うと、今まで俺はハンドガンを装備するプレイヤーとは何度か相手にしたが、マシンガンを持つプレイヤーとは闘ったことがない。

 理由は簡単。マシンガンの類がハンドガンと比べ飛びぬけて高いからだ。一番安い物でも一万メタは下らない。そのため今の、ほとんどのプレイヤーが資金不足という状況下ではマシンガンを所持するプレイヤーは極端に少ないのだ。

 だが今眼の前にいる男はどうやって稼いだのか知らないが、マシンガンを装備している。初のマシンガン相手に緊張が募る。ゲーム内だというのに、リアルを追求してか手汗が滲む。俺と男が睨み合う中、何の前触れもなく風が吹いた。それを合図にするように、男は引鉄を引き、俺は横に飛び移った。


「オラアアアァァァ!!」


 雄叫びと共に、無数の弾丸がさっきまでいた場所を蜂の巣に変えた。横目でそれを確認しながら、左のハンドガンで牽制の一発を放つ。放たれた弾丸は男の脇腹を掠り、HPバーをほんの僅かに減らした。続け様に二発三発と撃つが当然のごとく避けられる。

 お互いに距離を取り合ったところで男はあるものを取り出した。拳よりちょっと大きいぐらいのサイズをした筒。手榴弾だ。男はピンを引き抜くと俺目掛けて投合した。山なりに落下してきたそれを、俺は空中で撃ち抜いた。爆風と熱が伝わってくるが、男のいるであろう場所に再び視線を向ける。が、そこに男はいなかった。

 

「こっちだバーカ!!」


 背後からそんな声が響き、直後無数の衝撃が背中を駆け巡った。さっきの手榴弾は俺の視線を動かすためのフェイク。本命はこっちの銃撃だったのか。

 俺のHPバーがグングン減っていく。何とかイエローゾーンに入る前に攻撃から脱することが出来たが、状況はこちらが不利なままだ。だが、学べたこともある。マシンガンの攻撃力が予想以上に高かったことだ。恐らくもう一回、乃至二回の攻撃をもらえば俺のHPはひとたまりもない。

 ならばどうするか。選択肢は三つ。逃げる、闘う、諦めるだ。諦めるは論外だとして、逃げるのも背後を見せればその時点で終わりだ。となると残る選択肢は闘うのみ。


「まあ、勝機が無いこともないがな。まずは《伸縮》。そして《針山》」


 俺の声に反応し、手錠の接続部分を担う鎖が伸び片方の錠が地面に落ちる。それと同時に地面に落ちた方の錠の外側へ、二十センチ程の針が五本形成された。鎖を手繰り寄せながら、あるスキルの発動準備を済ませる。


「正直、最初はどうやって活用するか分からんかったが、この使い方思いついたときは雷に打たれた気分だったぜ」


 言いながら鎖を手首のスナップで回転させる。忍者が鉤縄を使うときの動作と似たような感じだ。ここまで来れば予想がつくだろう。俺が思いついた画期的な攻撃、それは手錠を『投げる』ということだ。


「いわゆるゴミスキルと言われる《投合》スキル。それでも使い方次第じゃ大分強力な武器になる。行くぜ!これが俺の奥のジェットニードルだ!!」


 掛け声とともに投げつける。《投合》により爆発的に加速した手錠は、鋭い針で男の体を貫く――事はなかった。キィンという金属音と共に弾かれたのだった。それも目前の男がしたことではない。明らかに第三者の仕業だ。

 それを裏付けるように、幾つかの発砲音が鳴り男を一瞬で蜂の巣にした。男のHPバーが急激な勢いで無くなっていき、やがてゼロになると、一つ一つの小さなポリゴンへと分解され跡形もなく消え去った。


「……タハハ!あっけないよな。この世界のプレイヤーの死は!!……まあ、イベントだから死んではないが」

「お前がやったのか?銃弾に匹敵するほどのスピードを持った手錠を撃ち落としたのも、あのプレイヤーを倒したのも全てお前の仕業か?」

「ん~と、ボクだと言ったら……どうすんの?」


 不敵に笑いながら尋ねてきた。と言っても、答えはとうに決まってるが。


「倒す」

「ハハハハ!!そうかい!ボクを倒す……ねえ!!」


 男、いや青年と言った方がいいだろう。青年は笑い狂いながら言った。雰囲気で分かるが、こいつは強い。カザミに匹敵、下手したらそれ以上だ。

 それでも、俺の答えは決まっているがな。


「勝負だ。俺は銭型というが、お前は?」

「クハハ!!『レイジ』だよ!さあ、早く始めよう」


 そう言いレイジが取り出した武器、それは二丁の拳銃。即ち『二丁拳銃』だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ