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八二天下  作者: グリーンわさび
第一期
8/12

台車でGO!

ついにけが人が。

「宮園っちです」

「佐伯ん太郎です」

「テングマン高村です」


今回は宮園の家の近くにある長めの坂。

三人の側には前回飛び込むのに使われたあの台車がある。

お気づきになっただろう。そう、台車でこの坂を下るのだ。それだけだ。


「さて諸君。まぁ企画は…一応言っておくか?」

「まぁ何やるかは分かるけどさ、一応ね…」


「前回、俺が池を飛び込そうと使ったこの台車で、この坂を下る!」

「…それだけでしょ?」

「もちろん」

「これ危ないって、転びようによっちゃ大けがするよこれ」

「佐伯の言うとおりだぜ、やるのはお前だけにしてくれよ」

「ん~高村は是非やってもらいたいんだがなぁ」

「バカ、俺は今日少し体調が悪いんだ。勘弁してくれ」


今日の高村はどうも体調が悪いらしい。

頭が痛くて気持ち悪い、だそうだ。

本当は寝ていたかったのだが、無理矢理宮園に連れてこられた訳である。


「まぁ、今日は体調が悪いのに撮影してもらってるから、

お前は乗せないよ」

「頼むぜホント」




「…んで、トップバッターは俺かい」


ヘルメットを着用して台車に乗っている佐伯。

不安そうな表情で前方を見つめている。

一方宮園はかなりテンションが上がっている。


「頑張れよ、佐伯!」

「待てよ、これすげー怖いぞ」

「大丈夫だ!」

「いやでも、たしかにこれは爽快感はありそう…」

「だろ? 爽快感を味わってこい!」

「っしゃあ! 行くぞおおオラアアア」


急激にテンションが上昇した佐伯。

宮園のテンションもさらに上がる。


「じゃあ行くぞ!!」

「オー!!」


「3!」


「2!」


「1!」


「ゴー!!!」


三人のゴーと同時に宮園が台車を力強く押し歩き、六歩目で手を離した。


「おおおおおおああああああああああ!!!!!!!!!!」


どんどん加速していく台車。

必死に台を掴む佐伯。




台車はどんどん左に寄っていき、そのまま草が生い茂る脇の斜面に突っ込んだ。

がしゃーん、と音が響き渡る。

草むらの中に隠れてしまったのか、佐伯の姿が見えない。


爆笑する二人。


「くそ、全部下ることは出来なかったか~」


悔しそうに宮園は言う。


「言ってる場合かよ、早く佐伯の所に行こうぜ」


横倒しになっている台車の元へ駆け寄る二人。

二人がつく頃、ゆっくりと佐伯が立ち上がる。

どこか痛めたのだろうか、表情が苦しそうだ。


「大丈夫か薫!」


こんなこと言ってるが、笑っているリーダー宮園。


「くっそ~痛ぇ」


「どこか怪我したのか」


高村が少し心配しながら言う。


「いや、斜面に思いっきり頭ぶっけちまった」

「これで擦り傷一つ無いのもすごいもんだな」

「俺の取り柄だからな!」




次は宮園を先頭に二人が台車に乗っている。


「さ、次は二人でこの坂を下るぞ!」

「また俺乗るのかよ!」

「今度は二人乗ってるからな、スピードも出ると思うぞ」

「じゃあもっと爽快感が出るって事か!?」

「そういうことだ!!」

「よっしゃあ! ならもう一回やっても構わねーや!」

「よく言った! んじゃよろしく頼むぜカメラマン高村!!」


「お前ら、どうかしてるよ…」


転んでいたい目に遭うだけなのに、

さっきよりテンションが上がる二人に、唖然とする高村だった。




「じゃ、押すぜ」

「来い!!!」

「何ハモってんだか」


左手でカメラを持ち、右手で台車を押し始める。

十歩目の所で高村は右手を離した。

先ほどよりもどんどん加速していく台車。

今度は道路の中央をゴーっと音を立てて走っている。


不安そうに見つめる高村。

「ヒャッホオオオウ!」と二人の楽しそうな叫び声が聞こえてくる。


そして案の定台車はガダーンと大きな音を立てて横転。

先頭にいた宮園が前へ放り出され、

佐伯は地面にたたきつけられ、しかも坂を転がり落ちている。

これはダメージが大きいのではないかと

本当に心配して急いで駆け寄る高村。


「派手にいったな、大丈夫かお前ら?」


佐伯は右膝を押さえて起きあがる。

表情もかなり痛々しい。これは怪我したな、高村はそう思った。

一方前方へ吹っ飛んだ宮園はこれまた何事も無かったかのように高村の元へ歩いてくる。

しかも表情を見てみると、何と笑っているではないか。

いやこれまた清々しい笑顔だ。


「ハッハッハ…! いやぁ面白いなこれ!」


宮園はこの様子だと大丈夫そうだが、問題は佐伯だ。


「ん? 佐伯大丈夫か?」


宮園が佐伯に声をかける。佐伯は苦しそうな表情で言った。


「いってぇ、多分擦り傷出来たかもしれない」

「マジか、どれ見せてみ」


黒いジャージを太ももあたりまであげると、

血で真っ赤に染まった右膝が現れた。

現れた瞬間、「うわぁ」と今度は宮園と高村がハモる。


「あっちゃ~さっきは大丈夫だったのにな。ジャージも破けちゃってるじゃない」

「まぁでもあれだ、爽快感味わえたしいいや! どうってことねーよこんなの!!!」


佐伯は立ち上がり台車を押しながら坂を駆け上がる。

あの様子からもう一度やる気だ。

笑い出す宮園と、呆気にとられる高村。


「ハッハッハ、どうやらお気に召したようだぞ。あの感じだと」

「マジかよ…だんだんお前に似てきたな」

佐伯君はこの後左肘にちょこっと傷をつくっちゃったそうです。

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