橋って飛び込め!
腹の調子が悪い。でも書く。
「どうも、宮園です」
「佐伯です」
「高村です」
いつもの三人。今日は橋の上で撮影をしている。
下には余り波が立たない静かな川が流れている。
「さて、今日はここが舞台だ」
「橋の上でその格好……もう想像はついているけど」
佐伯と高村は普段着だが、
宮園は何故かパンツ一丁だ。
足元には脱いだ服やズボンが置いてある。
「そうだな、佐伯の想像通り、今回はこの橋から下の川へダイブするぞ」
「またダイブかよ……」
高村があきれた口調でつっこみを入れる。
「この前みたいに一人ずつ飛び込むの?」
「ノー。今回は俺だけだ」
佐伯の問いの答えに、内心ほっとする二人。
それもそう、結構高さがあるし、
水面が穏やかだからこそ底知れぬ怖さがある。
「良かった~。俺さすがにこれはちょっと……」
「お前も飛び込めば良いのに」
「ばかやろ!」
「まぁいいや、とりあえず俺飛び込むぞ!」
飛び込む方向から見て反対側の手すりにいる宮園。
そこから走って前方の手すりにジャンプして乗り、
そのままさらにジャンプして川へ飛び込む、というものだ。
そう上手くいくかは分からないが、
宮園の表情は自信に満ちあふれている。
「……おいおい、通行人がいるぞ」
佐伯が心配そうにテンションが上がっている宮園に話しかける。
「気にしてたら何も出来ないさ」
「そうだけどよ……」
「こっちが恥ずかしいんだよこのタコ」
「何だ、お前落としてやっても良いんだぞ」
「勘弁してくれ」
前回の高村を落としたときの動作をしながら
言った宮園に笑って返す高村。
「じゃあ行くぜ!」
ダッシュする宮園。そして右足でジャンプし、
左足で手すりの上に乗る…
と、その時だった。
何と、左足が手すりに着地したのは良いが、
勢い余ってスリップしてしまい、
体が半回転して橋から投げ出され、
首倒立のような姿勢で川に落ちてしまった。
ドボーン、と下から音が聞こえ、
ちょっと時間が経つと、今度は「いてぇ!」という声が聞こえた。
二人は爆笑し、
佐伯は笑い転げてしまった。
高村ですら大きく口を開けて笑っている。
「いや~、ハッハッハ、いや~綺麗に滑って落ちてったなぁ」
笑いすぎてまともに喋れていない佐伯。
「こいつぁ傑作だ、わずか二回目でこんな画がとれちまうとはな」
もはや撮影なんて忘れてしまっているくらい笑う高村。
そんな爆笑している二人を、
丁度通りかかった人はとっても怪しそうな表情で見つめていた。
「ククク、みやぞ……ハッハッハ……!!」
上がってきた宮園に話しかけようとする佐伯だが、
全然まともに喋れていない。
宮園も笑ってしまった。
「すごい綺麗に落ちてったぞ……!!」
「やっと少しは喋られるようになったか?」
「あぁ、もう大丈夫だ」
「良い画が撮れたぜ、聡。これは良い」
「そんなに綺麗に撮れたのか?」
「ちょっと見てみるか? 佐伯も来い」
三人で先ほどの落下シーンを見直す。
再び佐伯が大爆笑し、笑い転げる。
宮園も爆笑してしまった。
「あぁ~、これは良いね」
「だろ?」
「わずか二回目でこんなシーン撮れるとはなぁ」
「それはさっきお前が落ちたとき俺も思ったよ」
「ってなわけで、格好つけて飛び降りようとしたらまさかの事態にね、なった」
「おかげでククッ、良いのが撮れ、撮れたしなッハッハッハ……」
「お前笑いすぎだって、さすがにちょっと恥ずかしくなるぞ」
「だってあんなに綺麗に滑って落ちるんだもん」
「あそこでまさか滑るとはなぁ……」
「俺は滑ってしまえってちょっと思ってたけどな」
高村の言葉に宮園がキッと顔を向ける。
「そうか、お前の呪詛だったか」
「何だよその顔は……」
「お前も落としてやる!」
「やめろ!」
カメラを置いて逃げ出す高村。
それを追いかける宮園。
それを見て笑う佐伯。
地面に置かれたカメラには、
一人の男がびしょ濡れになったパンツ一丁の男に追いかけられるという
光景が映っていた。
今日の夕食はトンカツだそうです。
やったー!