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八二天下  作者: グリーンわさび
第一期
11/12

煮込煮込して苦汁を飲め! リポート編

いよいよ採った草を…

さてさて、草についた土は水で落とし終わり、

三人は現在あの激辛カレーを食べた時の円卓テーブル前で立っている。

テーブルの上には洗い終わった草が入ったボウルと、カセットコンロ。

そしてそのコンロの上には鍋が置いてある。


「よーし洗い終わったことだし、早速適当に調理してみようか」

「どう調理するの? コレ」

「そうだなぁ……」




「まぁとりあえずそのまま食ってみっか」




「!!??」

驚愕する佐伯と高村。


「調理するって言ってたじゃんか」

「素材の味をそのまま、まずは楽しんでみようじゃないか」

「すっげぇワイルド!」

「高村、今お前カメラ持ってるけど、お前も後で食ってもらうからな」

「マジかよ……」

「当然だろう、腐った牛乳飲めたからこの程度なら大したことないさ」




カメラの前には佐伯だけが立っている。

宮園は撮影している高村の左後ろに居る。

「よし、トップバッターは俺だな!」

「よーし、良いか? 佐伯。常に笑顔でリポートだぞ。」

「まーかしとけって!」

「んじゃ、よーい……アークション!」




「見て下さい皆さんこの緑色! 美味しそうですねぇ~。

ビタミン満点っぽい色してますよねこれ!」


もはや宮園が笑いそうになりこらえている。


「一体どんな味がするんでしょうか? 今それを確かめてみたいと思います。

ではまず、この草からいってみましょうか!」


佐伯は自分が採った草を鷲掴みにした。


「見て下さいこの緑色! どうですかコレ、美味しそうですよねぇ~」

「それさっき言ったじゃねぇか……」


高村も笑いそうになってしまう。こらえながらも突っ込んだ。

宮園はさらに笑いに襲われ、顔を背けて口を手で押さえ必死にこらえている。


「それでは、いただきたいと思います!」


口に草を押し込む佐伯。

シャキシャキと咀嚼音が聞こえる。今の所笑みを絶やしていない。

満面の笑顔で食べている。

その様子に耐えられず声を出して笑い始める宮園。

高村もこらえる余り体が震えてしまっている。

二人に釣られて佐伯も少し吹き出しそうになる。


しばらくすると味がしみ出してきたのか、

佐伯の表情に少し異変が起こる。そしてゴホッと咳き込み始めた。

そして何とか草を飲み込んだ。目には少し涙が溜まっている。


「ゴホッ、いやぁ、ん~。この味は…何とも言えぬ、これぞ草!

といった感じでしょうか。植物のパワーを私は、舌で感じ取りました!」


ついに高村までもが吹き出してしまった。

宮園は完全にツボに入り、爆笑状態に。


「以上! リポートでした!」

「はいカット!」


笑いながら言う宮園。佐伯も爆笑状態になった。


「いやぁはっきり言うわ」

「どうした?」

「これクッッッッッソ不味いぞ!!」

「ホントか! どれ今度は俺行ってみるわ」


宮園は庭のホースで鍋に水を入れ始める。

鍋には佐伯が採った草と自分が採った草が入っている。


「お前の採った草は大丈夫かよ」

「何が?」

「毒草とかじゃないだろうな」

「それを確かめるためにもな、これから口に入れて見るわけさ」

「でその手段とは?」

「俺は煮込んで、その煮汁を飲んでみるよ」

「ハッハッハ……!! マジか!」

「おう。じっくりじっくり煮込まないとな」

「全部飲んじゃうのか!?」

「分からん。飲めたら飲むわ」




先ほどは逆に、宮園が一人カメラの前に立ち、

佐伯が高村の左後ろにいる。佐伯が左の太ももを叩いて言う。

「準備オッケー?」

「オッケー」

「んじゃスタート!」




「皆さんこんにちは。サトリーノ・ミヤゾンノルフです」

「何を言うとるんだあいつは」


思わず突っ込む高村。佐伯は顔を背けて笑うのをこらえている。


「今回はですね、これからこの雑草を煮込んだお汁を飲みたいと思います。

果たして、一体どんな味がするのでしょうか? とっても楽しみです。

それでは早速コップに入れてみましょう」


透明で緑色の液体が紙コップに注がれていく。


「おお~見事な緑色ですねぇ。何というのでしょうか、『澄んだ青汁』って感じがしますね!」


その澄んだ青汁が入った紙コップを右手に持ち、

勢いよく口に注ぎ込む宮園。おお~と感心する佐伯と高村。

やめることなく注ぎ続け、あっさりと飲み終わってしまった。

宮園の表情は爽やかに満ちている。


「ふむ、これが雑草の味ですか、色で表現するならば…」




「ずばり、『緑』!!」


「そのまんまじゃねぇか」

笑いながら高村が突っ込む。佐伯はもうゲラゲラ笑っている。


「何ともグリーンなお味です。どれもう一杯」


また紙コップにグリーンなお味がする澄んだ青汁を注ぎ込む。

くいっと一気にまたもやあっさりと飲み干してしまう。


「この何というんでしょうか、青汁よりもさっぱりとした感じが致しますね。

まぁ青汁飲んだこと無いんですけどね」

「無いのかよ……!! アッハッハッハ……!」


完全に笑いにはまってしまっている佐伯。

隣で爆笑するせいで高村も声を出して笑ってしまっている。


「では以上、サトリーヌ・ミヤゾンノルフのリポートでした」

「カット」


笑いすぎて声が出ない佐伯の代わりに高村が言う。

満面の笑顔を保ったまま宮園が一言。






「不味いわ」






またもや三人とも爆笑状態に。佐伯は腹を抱えて笑っている。


「だろ? クッソ不味いよな!」

「あぁ。こんな不味いとは思わなかったよ。口に合わないや俺には」

「よく表情保てるなお前……」

「さ、次はお前の番だな高村。お前は表情を保てるかな?」

「俺はどうやって味わうんだ?」




「お前はこの残った草を『すり潰して』煮込んだ汁を飲んでもらおうか」

「何……?」

「おお! もっと濃いのが味わえるって事だな! 頑張れテングマン!」

「おいおいマジかぁ……」




鍋の中のものは何と宮園が全て飲み干し、草は池の中へと放り込んだ。

そして鍋の中に残った草を全て入れ、

前日に購入していたすりこぎ(さすがに家のやつは使わなかったようだ)でごりごりと草を潰し始める。


「結構時間がかかりそうだな。少量の水を入れて煮ながらすり潰すか」

「オッケー、んじゃ注入!」


しばらくすると草は大分潰され、先ほどよりも緑色の液体もかなり濃い。

水も追加して、じっくり煮込んでじっくりすり潰す。

佐伯は煮込まれる液から発される臭いに少し顔をしかめた。


「よし、こんなもんで良いだろ」

「さっきの奴より濃いんじゃない? この色」

「青汁に近くなったな」

「マジでこれ飲むんか……」




佐伯がカメラを持ち、その前には不安な高村が不安な面持ちで立っている。

佐伯の右後ろには宮園が控え、何やらカンペらしき物を携えてある。

何を考えているのやら。宮園が声をかける。


「準備良いか」

「あぁ、やってやろうじゃねぇか」

「俺の指示通りにやるんだぞ」

「あぁ」

「ようし、じゃあアークション!!」




高村がカンペの方を見た瞬間、少し表情を崩した。

何とか笑いをこらえ、書いてある事を言った。


「えぇ~どうも。植物界の仙人、テングマンです」


宮園は別のカンペに変える。


「……今回はこちら、精力をつけるための植物を集めて煮込んだ、

こちらの煮汁をご紹介したいと思います」


「この煮汁を飲めば、たちまちパワーがみなぎり……フッ」

「おい笑うなよ、ちゃんと言わなきゃダメだぞ」

「お前な……」


佐伯も何とか声を出さずに笑おうとしているが、

体が震えてしまっている。


「たちまちパワーがみなぎり、えぇ~第三の膝が現れるほどの精力が付くでしょう」


「その効能を今、私自身で試してみたいと思います。では早速……」


第三の膝を出現させるという汁が入った紙コップを手にする。


「飲んでみましょう。では……」


ゆっくりと口に注ぎ込みはじめる。

三秒ほど経つと、余りの不味さに耐えられず、何とはき出してしまった。


「あ~あ、吐いちゃった……!」

「おいおいおい、吐くんじゃない吐くんじゃない」


宮園が高村に指示するも、高村は苦渋に満ちた表情だ。


「高村、笑顔だ。笑顔で飲め! もっとニコニコしろ!」


宮園の無茶振りに首を振って拒否するも、取りあえずは口に再び汁を注ぐ高村。

が、今度はすぐに吐き出してしまった。

何という事だろうか。人間が緑色の液体を吐くという滅多に見ない光景が広がっている。




「ハッハッハ……!! おい見ろ! エイリアンエイリアン!」

「すごいな、緑色の液体を吐くとか、さすがテングマンだわ」

「マジで不味いわ、お前ら、飲んでみ」

「どれ、一ついただくか」

「どれ、いっただっきまーす!」


二人とも同時にくいっと一口。その瞬間佐伯はブホッとはき出す。

あの宮園もそれまでの余裕の表情を変え、

苦悶なものへとなるが何とか飲み干した。


「ゲホッ、ガハッ! これ一番きっついわ!」

「これさっきのより不味いな。俺の奴は全然だったわけだ」

「信じられん不味さだろ?」

「ごっちゃに混ぜてるからどの草の味かも分かんねぇな!」

「俺が取ったあの見たこともない草の味なのかねぇ」

「何の草でも取りあえずクッソ不味いってことだけは確かだな!」




「さてどうだ、テングマン。感想は?」

「これはやめといた方が良い。絶対にマネすんなよ」


グッと親指を立ててカメラに向かって言った。





あの残った汁は池に捨てて(さすがに宮園も飲み干せなかった)、

草も先ほどと同じく池に沈めた。使用した鍋は綺麗に洗浄し、

カセットコンロなどと一緒に片づけた。

カメラも再び高村が持ち、宮園と佐伯はその前に立った。


「いやぁ未知な味を体験できたな」

「そうだねぇ」

「高村とお前はあの後ホントに腹を下してトイレに行っちゃったもんな」

「急に腹がカーニバルになっちゃってさ、もうリオ・デジャネイロだったよ」

「今はどうだ?」

「大丈夫だよ、快調に戻った」

「高村は? 久々の激痛だったらしいが」

「あぁ、今は問題ない」

「俺は特に今の所何の異変もないなぁ」

「多分お前は舌だけにとどまらず腹もバカなんだろ」

「超合金の胃袋と呼びたまえ、テングマン」




「さて、締めくくるけども……良い子も、悪い子も、そして普通の子も絶対にマネするんじゃないぞ。後は味についてだけど、やっぱりお味は……せーの」




「不味い」

「美味しくない!」

「クソ不味い」


……三人の気持ちが一つになった瞬間だった。

そこらへんに生えてる雑草はイネ科やキク科のものが多いらしいですよ。

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