Side:サクラ-2-
「嵐の中で抱きしめて」は、ドラマの第一回目が放映になっているというのに――まだ八回目までしか、脚本が書き上がっていなかった。
まあ、視聴率があまりに悪かった場合は、そのくらいで打ち切りに近い感じになるとはいえ……あともう少しで書き終わるというところで弟から電話が来、あたしはかなりのところイライラしていた。
クマちゃんにも、この種のことではかなり八つ当たりをしているが、童話に出てくる心温かいクマのように寛容なクマちゃんは、そのたびに優しく笑って許してくれる。
「うん、人気脚本家ってのは大変なもんさ。執筆中はナーバスになるのも無理ないよ。わかってる……ホテルのスイートを予約しておいたから、仕事が終わったらそこで一緒にリラックスすることにしよう」
なんていうことが、これまで数えきれないくらいあった。
つまり、わたしが今目指しているのはその地点だった。クマちゃんとお風呂に入るバンビ、お礼に彼の背中を流してあげるの巻といったところ。
でも、弟から「助けてくれ、姉ちゃん」なんて言われてしまうと――父さんの葬式にも呼ばれなかったあたしに、今さらそんなこと言われてもねえ……などと冷たく突き放すことも出来ない。
第一、弟のアキラがもしあの日、「底辺で這いつくばってる」発言をしなかったとしたら、あたしは今も彼のいう底辺社会とやらで男に頼って生きる生活をしていたかもしれないのだ。
そういうこともすべて考えあわせ、とりあえずあたしは弟から電話のあった一週間後、随分久しぶりに実家へ戻ることになった。
不動産業を営んでいる隣のハゲ親父は、ジュリエッタの死後、今度はチャウチャウを二匹飼っていると聞いていたけれど――名前をなんていうのか、あたしはあとで弟に聞いておかなくちゃと、そんなことを思いながら実家の敷居を跨いだ。
「姉ちゃん、ありがとう。恩に着るよ」
「あんた、一応言っておくけど、これは大きな貸しよ。大体、あたしが帰ってきて、あの母さんがいい顔するはずないんだから」
「そんなことないよ。母さん、姉ちゃんが脚本したドラマ、毎週欠かさず見てるくらいなんだからさ」
弟からそんな言葉を聞かされても、あたしはちっとも嬉しくなくて、溜息がでるばかりだった。
母さんは昔から世間体といったものをとても気にする人で――父さんが亡くなった時、あたしはもうキャバ嬢ではなかったのに、弟からそういう関係の仕事をしていると聞いていたがゆえに、親戚の手前あたしを葬式へ呼ばなかった。
もっとも、あたしはそのことで母さんのことを怨むつもりはない。
十八の時に完全に家を出て以来、ずっと実家へは寄りつかなかったのだから、当然の報いともいえよう。
いや、報いという言い方はおかしいだろうか。実をいうとあたしは、父さんが心筋梗塞で突然亡くなる一週間くらい前に、某高級デパートで偶然にも父に再会していた。
六十五歳で退職し、その後「え?それってもしかして天下りなんじゃ……」という某企業に嘱託社員として出向いていた父。
その頃あたしは「ロマンス通り113番地」という脚本を書き上げていて、今度それがTVで放映になると父に伝えることが出来て、本当に良かったと思う。そしてデパートの最上階にあるレストラン街で食事をし、あたしは父さんととてもいい時間を過ごしていた。
そうなのだ――あたしと父さんとの間の関係というのは、母さんが間に挟まるからおかしなことになるというだけで、彼とあたし自身の間には関係性として歪んだようなところは一切なかった。
それというのも、父さんは母さんとはまた別の意味で頭の古い人だったために、「女の子は成績悪くても幸せな結婚が出来ればそれでいいよ、うん」という考えの持ち主だったのだ。
今もよく覚えているが、偏差値の高いとてもいい高校に通うブスの姉妹に、あたしは紹介されたことがある。確かあたしが高校一年くらいの頃のことで、母さんならばわたしの通う高校名を人に言う時、実に微妙な顔の表情をするのだけれど――父さんは違った。
街で偶然ちょっと通りすがった父の部下は、「こんにちは」と言い、それからブスの姉妹にも挨拶させ、意気揚々と偏差値の高い高校の名前を告げた。そして父もまた、わたしの通う3・5流の高校の名前を告げて、その家族連れと別れたのだけれど、父の顔はどこかとても誇らしげだった。
父さんはもしかしたら、いい高校に通うブスの娘よりも、3・5流の高校に通う美人の娘のほうが誇らしかったのかもしれない。もちろん彼はとても温厚な人なので、わざわざそんなことを口にだして言うような下品な人物でもなかったけれど。
ただ、わたしは嬉しかった。父が自慢に思えるような美貌が自分には備わっているのだという、そのことが……。
さて、前もってあたしがやってくるとわかっているにも関わらず、ろくに玄関にも出迎えにこない、母さん&弟の嫁。
アキラに聞いたところによるとどうも、母さんとアキラのお嫁さんというのは、毎日のように冷たい戦争を繰り広げているのだそうだ。
いっそのこと、お互いにお互いを出刃包丁でグサッ!と刺しあえれば、決着がつくのに……と思うことすらあるとアキラが言うくらいだから、これは相当に凄まじいものがあるのだろうと、あたしはそう覚悟していた。
そして居間にあたしが入っていくと、母さんは意外にも敵意剥きだしといった顔の表情はしておらず、きのうもおとついも、あるいは十年以上昔からずっと、あたしはこの家にいたとでもいうような顔つきをしていた。
(やれやれ。一体これはどういうことなのかしらね?)
『母さん、キャバ嬢をしている娘を父さんの葬式に呼ぶのは恥かしかったんでしょ?』なんていうことをいつまでも根に持つほど、あたしは暗い人生を送っていない。さらに遡って、『高校の時、あたしの通ってる学校の名前を人に言うのが恥かしかったのよね、母さんは』などと恨みごとを言うつもりもなかった。
「えっと、遅くなっちゃってごめんなさいね。ちょっと車が渋滞に巻きこまれてしまったものだから……え~っと、これは……」
あまりに雰囲気が寡黙なので、あたしにしては珍しく、率先して機嫌のいい声をだしてしまったほどだ。
弟は、毎日この空気の中で食事をしている俺の苦しみを察してくれという目つきをしているし、弟の嫁の千鶴さんは、あたしに会っても挨拶するでもなく、つーんと澄ました顔をしている。
そしてそういう彼女の顔を見て、あたしはあるひとつのことを察していた。
たぶん彼女は、すでにわたしが母さんから嫁の悪口を一くさり聞いて、その言い分を全面的に信じているものと勘違いしているのだ。
とはいえ、弟の言っていたことは大袈裟でもなんでもなく、母さんが近所の人に嫁に対する不満を言い触らしてまわっているのは本当なのだろうと――あたしはその食卓の品を見て思った。
つまり、母が近所の人に言い触らして千鶴さんが怒っているというのは、次のようなことだ。
『わたしはそのうち、嫁に餓死させられる』
わたしが座った椅子の前には、ごはんと海草の味噌汁、それにほたての刺身が三切れ、それに大量のサラダがボールに入ったまま、どんと乗せられていた。
わたしにしてみれば、この時点で笑いたくて仕方ないくらいだったけれど――この現状が川上家の地獄、弟の苦しみの原因なのだと思い、なんとか真剣な顔で対応しようと必死に努力した。
「ねえ、これどう思うよ?今日は久しぶりに娘が来るから、せめても少しは見栄を張って、天麩羅なんてどうだろうってあたしは言ったんだよ。でも千鶴さんときたら、「いつもの食事にして、お姉さんの意見を聞いてみたい」なんて言うんだから。それで、サクラ、あんたはどう思うの?」
「どうって……」
あたしはメチャメチャ薄く切られたほたての刺身を見て、笑いたいのを必死で堪えた。
食卓の上には、醤油やソース、味の素などの各種調味料の他に、わさびのふりかけや味付けのりなどが置いてある。ようするに、ほたての刺身だけで満足できなければふりかけでもかけろと言うことなのだろう。
「まあ、ヘルシーな食卓でいいんじゃないの?野菜は一日ひとり350グラム食べる必要があるとかって、テレビのコマーシャルでやってたわよ?このボールの中にはそのくらい野菜が詰まってていいんじゃない?」
「信じられないね、この子は!!」
母さんは絶対に自分に味方してもらえると信じていたのだろう、今にも箸を投げださんばかりにして、手を震わせていた。
「アキラから一体どこまで聞いてるのか知らないけど、うちは毎日コレなんだよ!ううん、毎日ほたての刺身が三切れって話じゃない。肉じゃがとか、魚が一尾なんていう日もある。でも肉じゃがと魚が一緒に出てくることはないの!母さんはね、肉が食べたいんだよ。そしたら野菜もたっぷり食べる。けどね、こんな野菜だけでーんと出されても、全然食は進まないの!常識的に考えたら、誰にでもわかることでしょ!?」
まあ、確かに母さんの言うことももっともだとは思う。
でもあたしは、母さんがどんな人かというのを、よく知っているので――仮にどんな素晴らしい人がアキラの嫁になったところで、彼女は絶対文句を言うに違いないのだ。
むしろ、ちょうどよく運命にお灸を据えられたのだろうとしか、今のあたしには思えない。
「ま、食べ物があるだけ幸せって思えば?昔、母さんがあたしたちによく言ってたみたいにね。農家の人の苦労をよ~く噛みしめてごはんを食べなさいって話。わたしだったら、毎日三食自動的にごはんが出てくるってだけでも感謝するな。それに満足できなかったら、自分で好きなものを買ってきたらいいんじゃない?」
流石にここまで言うのは、少し意地悪だったかもしれない。
何しろ母さんは、近ごろ足腰が弱って――あまり長い距離を歩けなくなってきていると聞いたからだ。
かといって、仲の悪い嫁の車に乗って買物するのも嫌だし、あれ買ってきてくれこれ買ってきてくれというたび、毎日年金からお金を出さなくてはならない。
そもそも最初から食費としてそれ相応の金額を毎月まとめて払っているにも関わらず、だ。
「ああ、まったくもう、娘なんて持つものじゃないよ!」
ついに母さんの口から本音が飛びだした。
「肉、肉、肉。母さんはね、お肉が食べたいの!!汁気たっぷりの、ジューシーなお肉!!ねえ、サクラ。おまえどっかレストランにでも連れていっておくれよ。なんだったら、ハンバーグだっていい。頼むからさ、ねえ……」
一瞬、母さんはもしかして認知症になりつつあるのかと思ってしまったけれど、そうではなかった。
何しろ、千鶴さんが川上家のキッチンに立つようになって以来――ステーキとかハンバーグといった肉類は、一度として食卓に上がったことがないというのだから。
「うん、わかったわよ、母さん。ほら、泣かないで……そんなことしたら、千鶴さんがまるで悪者みたいじゃないの。そうね、今度の日曜日にでも、迎えにくるわ。そしたら焼肉でもなんでも一緒に食べることにしましょう。よかったら、みんなで……」
ところが、ここまで言っても、千鶴さんのつーんと澄ました顔に変化はまるで生じなかった。
(あーらら。この子もしかして、本当にかなり変わってる子なのかしら?)
アキラはといえば、言いたいことは山ほどあるけど、今は言えないといった顔をして、黙々とごはんを食べ、またボールの中の野菜を食べている……確かに毎日こんな調子で会話がないとしたら、彼としてもつらいに違いなかった。
母さんは、あたしのことを「肉を食べさせてくれる救世主が現れた」といったような顔で見ると、その後、あたしのドラマのことに対して話を向けた。「あのドラマの主人公たちって、みんな不倫とか浮気をしてるだろ?あたしはああいう内容のドラマは関心しないねえ。もし父さんが母さんの知らない間に誰かと浮気なんてしてたら、母さん気が狂って、今ごろ自殺してるよ」とか、そんな話。
そしてここで、わたしは弟の嫁の千鶴さんに対して、あるひとつのことに関して少しばかり感心していた。
自分の夫の姉が、そこそこヒットしてるテレビドラマの脚本家だなんて知ったら――たぶん少しは顔の表情を変えて「芸能人のお知りあいなんているんですかあ~?」みたいに聞いてくるかもしれないと思っていたのだ。
でも彼女は相変わらずつーんとした顔のまま、弟とさえ話をすることはなかった。
(やれやれ。こんな調子でいつか、あたしは義理の妹と仲良くなったりなんて出来るのかしら?)
あたしは内心ではおかしくてたまらない気持ちのまま、その日の夕食後、久しぶりにやって来た実家をあとにすることにした。
そして帰ろうとするあたしのことを、アキラがカーポートまで追ってくる。
そこにあたしは自分の愛車のフェアレディZを駐車しておいたのだ。
「姉さん、今日は本当にありがと……その、さ。千鶴は菜食主義者ってわけじゃないんだけど、肉っていうものを一切口にしないんだ。で、俺は昼間に会社の外でハンバーガー食べたりしてるんだけど、母さんはそういうわけにもいかないからな」
「そうね。正直ちょっとびっくりしたわ。だって母さん、わたしが家にいた頃でもそんなに肉が好きってわけじゃなかったし……出ても週に二回くらいだったわよね?でもあたしも、もしかしたら肉を食べられない状態が一年以上も続いたら――母さんみたいになるかもしれないわ。ところであたし、千鶴さんのブログ読んだわよ」
そうなのだ。母さんが千鶴さんのことで怒っているのは、肉のことばかりではなかった。
彼女は何も、姑とのいざこざをブログに垂れ流しているわけではなく、<電脳アイドル・綾坂千鶴>として活動中なのだ。
「うん……なんかさ、近所の誰かにそれがわかって、ちょっと噂になったらしいんだよ。母さんはパソコンなんて電源がどこにあるのかもわからないような人だからさ、俺はずっと知られずに済むといいなって思ってたんだけど、よりにもよって隣の奥さんがさ」
と言って、アキラはどこか怨めしげに隣の立派な御殿を眺めやる。
「母さんに教えてくれちゃったんだよな。しかもノートパソコン持参でさ。で、母さんはそのことに対する怒りもあるし、肉が食べられないストレスもあるしで――つい思わずポロッと言っちゃったわけ。よくあるうちの嫁はあーだこーだっていう不満をさ。で、さらにその話を隣のお節介なババアが近所に広めちゃって……母さんと千鶴は今みたいに口も聞かない関係になったってわけ。姉さんはさ、「くっだらない」って思うかもしんない。でもさ、俺の身にもなってくれよ。朝も夜もしーんとして、誰も口聞かないんだぜ?友達に相談したらさ、早く子供でも作れって言われたけど――その、俺……千鶴は不妊症か何かなんじゃないかって思うんだ」
「どういうこと?」
アキラは隣近所の耳がそこらじゅうに張りついているとばかり、声のトーンを落とした。
「俺たち、結婚してもうすぐ二年になるだろ。で、一般的に普通に夫婦生活を送ってて、二年子供が出来なければ不妊のカップルだって、昔何かで読んだ記憶があるんだ。でも俺、千鶴に病院へ行って調べてもらったらなんて言えないから、まずは恥を忍んで自分が検査してもらうことにした。本当にすっごく嫌だったけどさ、たとえば無精子症とかそういうのだったら、俺のほうに子供が出来ない責任があるわけだろ。母さん時々、そのことで千鶴のことろをチクッと刺すようなこと言うんだよ。もし俺に原因があれば、「俺が悪い」ってことに出来るけど、結果はさ、俺の精子は至極正常ってことだったわけ」
「そっか。あんたもツライわね。そういえば昔、うちの店に来た時の悩みはどうしたの?もしかして会社でも生き地獄を味わい、家庭でも……なんていう話なんじゃないでしょうね?」
「違うよ」と、アキラは微かに笑った。「あのあと俺、本社から支社のほうに転勤になってさ。支社って言っても、本社からそんなに離れてない場所にあるんだけど。そこの雰囲気がすんごく自分に合ってて、今は割合のんびり構えて自由に仕事させてもらってるよ。だから、そっちのほうは問題ないんだ。でもこっちが……」
そう言ってアキラは、自分の家のほうを振り返った。
「ひとつだけ聞きたいんだけど、あんた、千鶴さんのことは好きなんでしょ?」
「当ったり前だろ。じゃなきゃ誰が結婚するんだよ?」
「うん、それならいいのよ。だったらあんたは、最後は千鶴さんの味方してあげなさい。あんたがあんなほんのぽっちりの食事でも、文句言うでもなくずっと彼女と仲良くやってけるっていうんならね。まあ、あたしは彼女のことはまだよくわからないわ。ブログを読んでも、ああいうのは全部<電脳アイドル>としての発言なんでしょうから、本音みたいのがよく見えてこないしね。もしあんたが母さんさえいなければ千鶴さんと仲良くやってけるのにって思うんなら、あんたたちがふたりで家を出るか、それか母さんをどっかの施設に入れるっていう手もあるわ」
「出来るわけないだろ、そんなこと!」
「ううん、出来るわよ。あたし前に、介護を題材にした二時間ドラマを書くことになった時――色々取材して、いくつかわかったことがあるのよ。一緒に暮らしていてお互い不幸なら、離れるのもひとつの手なのよ。もちろん、あたしは母さんとは一緒に暮らせない。面倒を見るのが嫌とかじゃなくて、本質的に無理っていうのは、あんたが一番よくわかってるでしょ?でも、介護付きマンションの四階と五階にそれぞれ暮らすとかっていうんなら、手を打たなくもないわ。もちろん母さんがこの家を離れるなんて言うはずもないけど、わたしが妥協できるのはそこまでだと思っておいて。実際ね、うちだけじゃなくて似たようなことで悩んでる家族はいっぱいいるわ。最初は見捨てたように思って罪悪感を感じたり、捨てられたと思って恨んだとしても……結局最後はそれで良かったっていうケースも多いのよ。まあ、暫くの間母さんのことは焼肉に連れていったりなんだり出来ると思うけど、わたしの忍耐にも限度があるからね。母さんが自分でそうと気づかないであたしの心の地雷を踏んだりしたら、うまくいくものもいかなくなるって可能性は高いもの」
「うん、わかってる……」
それから弟は、あらためて「今日は本当にありがとう」と言ってあたしのことを見送ろうとした。
あたしは車の鍵を開け、運転席に乗りこもうとして――ふと弟にこう聞いた。
「そういえば、隣のババアとハゲ親父は今度、チャウチャウを飼うことにしたんですって?それで、名前はなんて言うの?」
「レノンとマッカートニーだよ」
あたしはさもありなん、という顔をすると、微苦笑しているような顔の弟に手を振り、エンジンをかけた。
最後に挨拶がわりにビッと軽くクラクションを鳴らすと、そこここから犬の鳴き声が聞こえてくる……このへん一帯には、犬を飼っている家庭より、飼っていない家庭のほうが少ないのだろうと、あたしはなんとなく不思議な気持ちになりながら、今度はクマちゃんの住むマンションにまで車を走らせることにした。