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Side:レン-3-

 俺はアフガニスタンの孤児院へ戻ると、もうすっかり過去については振り返らない覚悟を決めた。

 そして日本ではまず見られないだろう綺麗な星空を眺めながら――アフガニスタンの女性の地位向上を目指す、教員の女性と恋に落ちた。

 彼女は日本で国語の教師をしており、最初はあまりボランティアといったことには興味がなかったという。

 けれど、海外ボランティアの研修に友人から誘われ、気づいたら安定した教師の仕事を捨ててアフガニスタンまで来ていたと言って、ミチルは笑った。

 いや、俺が彼女のことをミチルと名前で呼ぶようになったのは、正確には結婚してからのことかもしれない。

 その前まではずっと、ミチルのことは苗字の飛鳥のほうで呼んでいたので、アフガンにいる間はずっと、俺は彼女のことをアスカと呼んでいたと思う。

 孤児院を運営する日本人スタッフは、アスカと俺と横溝清二という三十代後半の男性の三人だけだった。それと、短期のボランティアスタッフが時々1~数名派遣されてくるといった程度。

 あとは日本人ではない、アメリカやロシア、あるいはヨーロッパ各国のボランティアスタッフと混合チームを組むような形で、孤児院は運営されている。もちろん、現地の人たちの助けの力もとても大きい。

 たとえば、食事などは三食、近隣に住んでいる女性たちが集まって作ってくれるし、土地を孤児院建設のためにほとんどただで譲ってくれたり、新しく建物を建てる時には無償で手伝ってくれたりと、俺はその「日本ではまずありえない環境」に徐々に慣れつつあった。

 とはいえ、夏は気温が五十度にも達する環境での労働というのは、決して楽なものではなかったし、毎日がとにかく、犠牲と奉仕の連続だったといえたかもしれない。

 もちろんこれは、悪い意味でいっているのではなく――俺にとってそれは、1の犠牲や奉仕によってその十倍以上もの報酬の実や充実感を得られるといった種類のものだった。またそうでなければ、アフガニスタンに二年もいるということはおそらく出来なかったと思う。

 正直このまま、アスカと一緒にずっとアフガンにいて、いっそのことここで結婚式も挙げてしまおうかとすら思っていた時……ある一本の連絡が日本から入ったのだ。

 それは、俺が時々個展を開かせてもらっていた喫茶店のオーナーで、喫茶店の壁にかかっている俺の描いた絵を、二百万で買い取りたいと言っている人がいるがどうするかという話だった。

「二百万、ですか。その人、どんな人ですか?」

 俺が嫌な予感とともにすぐ思いだしたのは、七津美さんの旦那のことだった。自分の絵をそんな高い金をだして買いたいだなんて、何かの陰謀が裏にあるとしか思えない。

「なんていうか、その人は出来れば君にも会ってみたいと言ってる。特に胡散臭い感じの人物でもないし、職業はスポーツのインストラクターをしていると言ってた。なんでもその、叔父さんが画廊を経営していたそうなんだが、経営が苦しくなって首吊り自殺したらしい。その叔父さんの遺言で何十枚もの絵が彼の手元には残ったけれど、どうしていいかわからず、暫くそのまま静かに保管していたという話だ。でもミズシマくんの絵を見て、何かこう……魂が揺さぶられる体験をしたということだったよ。電話ではどうも、彼の感動した様子を君に伝えるのは難しいな。短期間でも、もし帰国する予定があったら、こっちに顔を見せてくれないか」

 わかりました、わざわざすみません、といったようなこと言って、俺は電話を切った。

 実際、日本へは一度帰国する予定があった。ミチルの両親に会って挨拶したりといった予定もあったし、それと同時に子供たちが今では二年前の倍の八十名近くになっていたので――スタッフを増員すると同時に、入れ替えるかどうかの話し合いも日本の事務局ですることになっていた。

 つまり、ミチルの両親とも話しあって、新婚のうちは暫く日本にいたほうがいいだろうとか、その話しあいいかんによってスタッフ増員の人数が決められることになっていたのだ。

 子供たちはみんな、俺やミチルが一生アフガンにいるものと思いこんでいるので、その信頼を裏切ることは、俺や彼女としてもとてもつらいことだった。

 けれど俺は、自分の絵が売れそうだということは、日本へ戻るための何がしかのサインではないかと思ってしまったのだ。

 それが本当に何か一種の啓示のようなものなのか、単なる俺自身の強い思いこみによるものかどうかはわからない。

 そして俺はその見極めを、自分の描いた絵を二百万で買ってもいいという男との出会いに賭けてみることにしようと思ったのである。



 日本へ戻ると、俺とミチルの両親は某高級ホテルのレストランで初めて互いに顔を合わせるということになった。

 こうしたことのセッティングをすべてしてくれたのは、兄のタケルだった。

 俺は先に言ったとおり、おふくろのことが苦手なので――彼女に直接「結婚したい相手がいるんだけど、会ってくれないか?」と頼んだりすることは出来なかった。

 それは何故かといえば、答えは至極簡単だ。

 おふくろはたぶん、ミチルと会う前に彼女の前情報を俺から欲しがるだろう……つまり、生年月日にはじまって、血液型など、前もって知れるだけのことを知って俺とミチルの相性を占うに違いない。

 俺はおふくろのこの性格に、小さな頃からどれだけ苦しめられたことだろう。

 父の毅と兄の尊は、母穂波のこの占い好きという性癖について、かなり達観した態度で臨んでいるのだが、俺はとうとう家を出るまで彼らと同じようにはなれなかった。

 つまり、どういうことかというと――毎年年末になると、家族全員の来年の運勢について母から「御託宣」があるのだ。

 たとえば、父のタケシは八白土星人だから、今年前半の運気の流れはこうだとか、兄のタケルは六星占術で大殺界にあたっているから、今年一年は慎重に行動すべしとか、水瓶座の俺は六月にある皆既月食が過ぎるまで運気が落ちているけれども、その後は除々に上り調子になる……まあ、そういったような具合だ。

 その実にありがたい母の「御託宣」が下るたび、父と兄はともに、まったく同じ表情をして眼差しだけで会話を終える。

 簡単にいえば、彼らはふたりともおふくろの異常な占い好きをただの習慣として受け容れ、「信じていないが、まあそう悪くもないもの」として扱っているということだった。

 俺は小さな頃、母親が厄除けとしてくれたガラスの宝石玉を随分大切に持っていたことがある。

 もっとも、そのラピスラズリのガラス玉に厄除けとしての効果があるとまでは信じていなかったけれど――「持っているといいことがある」くらいには、漠然と思っていた。

 ところが、ある日俺はその深く碧い色の綺麗な宝石をなくしてしまった。

 そのことが小さな子供にとってどのくらいショックなことか、言っても頭の固い大人たちには決してわからないだろう。

 母はまた別のガラスの宝石玉をくれようとしたが、いくら同じラピスラズリでも、それはもう前に持っていたものとは違うのだ。

 その時に俺が味わった喪失感、それはその後俺が占い全般を憎むようになる契機となる出来事だったといえた。

 つまり、何か<形あるもの>に占星術的な力を与えるのは、実はとても危険なことなのだ。

 俺はただ単に子供らしい無邪気な気持ちから、あのラピスラズリの宝石玉を大切にしていた……そう、「たったそれだけ」のことなのに、あれがないとこれから自分はろくな人生を歩まないとか、あの時あれをなくしたから今自分はこんな惨めな人生を送っている、などなど、占いは根拠のないことを信じさせる契機に十分なりうる。

 そういう意味合いにおいて、俺は占いとか、占星術全般といったものを今も激しく嫌悪している。

 昔、つきあっていた彼女が女性誌の占いコーナーを見て、「水瓶座の彼」とかいうところを読み上げた時、俺はその女とはすぐに別れた。だから、ミチルとは彼女にそっちの気がまったくないことを確かめてから、結婚を申し込んでいたといっていい。

 まあ、大体そういったような事情から、俺はここ何年もおふくろとは電話ですらまともに話をしていなかった。

 何故といえば、いちいち最後に「車の難には気をつけなさいね。タロットカードにそう出ていたから」などと言う女とは、話をするだけ時間の無駄というものだからだ。

 もっというなら、母の穂波には日本語というものが通じない。だから俺は間に通訳者として兄を立て、おふくろと話をしていることがほとんどだった。

 さて、ある意味俺にとって恐怖の両家初顔合わせの日、俺はわざと母穂波の目の前に座ることにした。

 彼女がもしまずいことを言いだそうものなら、「殺すぞ」という目線で牽制するためだ。なんだったら、彼女の足の指が折れるくらい、テーブルの下でギュッとピンヒールの爪先を踏みつけてもいい。

 俺が気迫みなぎる目つきで睨みを利かせていたためかどうか、おふくろは食事の中ごろまでは大人しくしていた。

 そして懐石料理に舌鼓を打ちつつ、ミチルの見るからに「善良で平凡」と顔に書かれた両親と、父や兄が仕事のこと、定年後の生活の予定などを和やかに話していると(ちなみにミチルの両親はともに六十二歳、俺の両親は父が六十五で母が六十三である)、突然なんの脈絡もなしにおふくろはこう口火を切った。

 それまでずっと、失礼なくらい黙りとおしていたにも関わらず、だ。

「ミチルさんは、何月生まれでいらっしゃるの?」

 座席は、長方形のテーブルの右側手前から、俺、ミチル、ミチルの両親、そして左側手前からおふくろ、兄、父の順である。

 おふくろは「そちらはそちらでお話なさって?」というように、魅惑的な視線を投げかけ、小さな声で話を続けた(どうでもいいようなことだが、フェイスリフトをしている彼女は、とても六十三という年齢には見えない)。

「えっと、四月生まれなんです、わたし」

 ミチルには最初から、おふくろの占星術好きについては重々注意してある。

 その話を振られたら、なんとかうまく逃げたほうがいい、俺もうまくフォローするから、と。

「四月生まれっていうことは、牡羊座かしら?それとも牡牛座?」

「えっと、牡羊座です」

 トロを軽く炙って食べながら、ミチルはそう答えた。

 彼女には、はっきりそうと聞かれるまでは、生まれた日にちまでは答えないほうがいいと最初に忠告してある。

「なるほど、牡羊座ね……」

 どこか天井の隅のほう、そこに守護天使が見えるといった顔の表情をおふくろがしているのを見て、俺は彼女の足をテーブルの下で踏んでやろうかと思った。だがおふくろは「そんなことはお見通し」とばかり、サッと素早く足をよけている。

「残念ながら、水瓶座のレンとは相性がいいとも悪いともいえないわね。きっとあなたもわたしの占いのことはレンから聞いて、どうせ「馬鹿らしい」と思っているのでしょ?でも、これからわたしとあなたは仮に相性が合わなくても義理の母と娘としてやっていかなくちゃいけないわけよね。だったらわたしの戯言に、最後までつきあってくださるかしら?」

「はい。えっと、まあ……」

 よろしい、といったようににっこり微笑むと、おふくろは客の前でタロットカードを広げる時とまったく同じことをはじめた。まずは深呼吸をし、そして陰と陽のバランスを整えてから、カードをめくるのだ(ちなみに彼女は“スピリチュアル・カウンセラー”を名乗って、小さな占いの館を気が向いた時にやっているのである)。

「牡羊座っていうのはね、後ろを振り返りながら歩く運命を背負っているの。こういうと、牡羊座には後ろ向きの性格の人が多いと思われてしまうかもしれないけど、そういう意味じゃないのよ。そうね、あなたはとっても優しい人。自分の後ろに弱い人がいたら、いつも気になって後ろを振り返らずにはいられないんじゃなくて?つまり、自分を犠牲にしてでも他の人を助けたいと思う気持ちが強いのよ。ただし、同じ牡羊座でもB型の人は少し自己中心的なところもあるの。ミチルさん、あなた血液型は?」

「えっと、A型です」

 ミチルが少し驚いたように(当たってる)という顔をしたので、俺はかなりのところイライラした。

 こんなものはただのペテンにしか過ぎないのに――最初の入口のところで、「なんかちょっといいかも」と思う人間のなんと多いことか……だがそのカラクリについて熟知している俺は、ミチルがだんだんおふくろのペースに嵌まっていくのが見てられなくて、とうとうガタリと席を立っていた。

「おふくろ、ちょっといいかな」

 いいかげんにしてくれよ!と叫びだしたくなる感情を抑えて、俺はなんとか大人の態度をとろうと懸命に努力した。

 そして、すみませんというようにミチルの両親に会釈し、作り物の竹林が生えた廊下へと、おふくろのことを半ば強引に連れだした。

「兄貴から伝言、聞かなかったのかよ?せめて今日くらいは絶対、星占いの話はしてくれるなって、しつこいくらい兄貴に頼んでおいたのに」

「ふん、そういうことは自分の口で直接言いなさいよ。だから今、こういうことになってるんでしょ?」

 おふくろは俺がつかんだ腕を、まるでペンチでつねられたとでもいうように、何度も撫でている。

「なんでもいいからさ、とにかく今日くらい<普通>にしてくれって俺は頼んでるだけだろ?もう占星術の話はなしにして、ミチルの両親とも普通に会話してくれよ……俺が頼んでることって、そんなに贅沢なことか?」

「ええ、そうよ。贅沢よ」と、おふくろは冷たい鬼のような顔をして言った。その顔の表情で、俺には彼女の言いたいことがすぐにわかった。(自分の親のことを、冷たい鬼みたいな目でよくも見てくれたわね)というわけだ。

「あたし、小さな頃からあんたに<普通>にしてろなんて言ったことある?あたしがあんたを育てるのにどんなに苦労したか、忘れてるようだから思いださせてあげるけど、レン、あんたが三歳の時に粘土遊びを教えてあげたのはこのあたし。それからそっちの方面に才能があるみたいだって見抜いて、五歳の時にはお絵かき教室にも通わせたわ。つまりね、あんたが芸大なんてものにストレートで入れて、そのあと美術展に入賞できたのも、すべてはこのお母さまのお陰ってことよ。なのにあんたは、その母親のあたしになんの相談もなく、アフガニスタンなんかに勝手に行っちゃって、危うく地雷を踏んで絵を描けない体になるところだったじゃないの!!」

 俺はこの時、何故かふと川上サクラのことを思いだしていた。あいつならたぶん、俺のおふくろの饒舌な舌にも負けることなく、おそらくは同じくらいの勢いで、言い返せるに違いないと思ったからだ。

 だが俺は、まるで尻尾をつかまれた犬みたいに大人しくなることしか出来なかった。

 すぐ目の前を、ホテルの従業員が何人か通り過ぎていく……俺は陰と陽のバランスを整えるためではなく、深呼吸して、なんとか落ち着きを取り戻そうとした。

「悪かったよ。一応、兄貴には事情を全部説明しておいたから、おふくろもそれで納得してくれるかなと思ってさ」

「そう。で、今度は一体なに?結婚するからその両親と会ってほしいですって?レン、あんたがあたしに求めてるのはとても贅沢なことよ。それも最上級にね。タケルは平凡なつまんない子に育っちゃって、これまた平凡でつまんない子とお見合い結婚しちゃったけど、あたしはあんたは違うと思ってた。茶髪にヘソピアスしたような、もうちょっとエキセントリックな子を連れてくるかと思ったけど、一体なんなの、あの子!?しかも、虫唾が走りそうなくらい、あの子の両親も凡庸そのものじゃないの。まったく、つまらないったら。言っておくけど、あの子とあんたの相性は最悪よ。あんたは水瓶座で、あの子は継母から殺されかかってた兄妹のうち、妹のほうを海に落っことした牡羊座。つまりね、あんたの才能がたぶん、これからじわじわあの気の毒な子を殺していくの。それはミチルさんの心にトラウマとして残るでしょうよ……まるで、ヘレーのことを海で死なせてしまったことを悲しむ金の牡羊のように」

「だからさ、俺はおふくろのそういうところが我慢できないんだって!」

 ついカッとなって、俺はそう叫んでしまった。ミチルや彼女の両親、それに兄貴たちのいる座席から、レストランの入口はかなり離れているとはいえ――俺はなんとなく、のれんの向こうのほうを振り返ってしまった。

 おふくろはといえば、俺のこの怒鳴り声にも動じる様子がほとんどない。

「つまりさ、そういう暗示にかけるようなことを言われるのがすごく嫌なんだよ。確かに、おふくろがミチルに対してさっき言ったことは結構当たってるとは思う……彼女は子供とか年寄りとか、あるいは弱い立場にある人とかを庇ったり守ったりするっていうタイプの人だよ。だから結婚したいんだ。これで、わかってもらえる?」

「そうね。たぶん今は恋愛感情が燃え上がってる時期なんでしょうから、あたしが何を言っても無駄でしょうよ。だけどね、レン。馬鹿な羊に水瓶座の水のような奔放さや自由さは理解できないのよ。確かに彼女は浮気もしない、貞潔を守るいい奥さんになるでしょうね……でもあんたは、そういうことに長く価値を置けるタイプじゃない。今は一時的に人道支援とやらに熱中してるんでしょうけど、時期に星回りが変わったら――あんたは絶対別のものが欲しくなるはずよ。あたしには、そのことがわかるの。だって、あんたは他でもないこのあたしが作った、この世の最高傑作なんですからね」

 俺はもう、何をどう言っていいかわからず、溜息をついて前髪をかき上げた。

 今は良くても次期に物足りなくなる……その予感は、確かにその当時から俺の中にあったものだった。

 それでも俺は、その部分についてさえ自分が目を閉じていられるなら、ミチルとの結婚は穏やかで静かな、とてもいいものになるだろうと思っていたのだ。

 そして俺は、自分の欠点についてミチルが目を閉じてくれるように、彼女に対して同じようにしたいと考えていた。

「ふーっ。お互い、言いたいことを言ったら、少しスッとしたわね。本当はこのままここから抜けだして、自慢の息子とデートでもしたいところだけど、あんたはどうせそんなことしたくないっていうんでしょ?だから仕方なく、適当におべんちゃらでも振るまって、感じよくするわよ。でも、レン。言っておくけど、これは大きな貸しだからね。あとでちゃんと菓子折りでも持って、先日はありがとうございましたって、あたしと父さんにお礼を言いに来なさい。わかったわね?」

「あ~あ。ほんと、最悪な親……」

 俺がのれんをくぐりながらそう呟くと、おふくろは俺のケツをクラッチバッグで叩いて、「何か言った!?」と怒鳴った。

 そして俺はこの時、なんとはなし、また川上サクラのことを思いだしていたのだ。

 おふくろの今日の格好は、シャネルのスーツにグッチの靴、それに手にはプラダのクラッチバッグといった装いだったが、どうしておふくろもあの女もこういったくだらないブランド物に価値を認めるのだろうと、不思議になって。




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◇オリジナル小説サイト『天使の図書館』
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