第66話「潜入、姫の城と追跡者の影」
「これが今回の任務だ」
師匠から渡されたのは、分厚い封筒。中には豪奢な書状と、隠密用の通行証。
「某国の姫君、“シルヴィア姫”の護衛及び、周囲の異変の調査だ」
「お姫様かぁ……」
蒼はどこか苦笑しながら紅を見た。
「また惚れられたりしないといいけどな、俺」
「もう惚れられてるけどね?私に」
紅の悪戯っぽい視線に、蒼は肩をすくめた。
◆ ◆ ◆
到着したのは、白亜の城。だがどこか空気が重い。
出迎えたのは、長い銀髪に凛とした瞳の姫、シルヴィア。
「遠路ご苦労。そなたらが、忍の精鋭……であるか?」
その目が蒼に向いた瞬間、姫の表情が一瞬だけ揺れる。
(……なんだ?この感じ)
蒼もまた、胸の奥にざわりとした何かを感じた。
◆ ◆ ◆
護衛中、蒼と姫は行動を共にすることに。
「ふむ……そなたの瞳、どこか私の幼き頃の夢に似ておる」
「え……?夢?」
姫は少し微笑みながら、蒼の頬に触れそうになり――
「い、いかんっ!これは礼儀に反するな!」
と、自分で慌てて顔を赤らめた。
◆ ◆ ◆
その夜。
紅は、蒼の髪をブラシで整えながらぽつりと呟いた。
「……あの姫、なんか蒼に惹かれてるよ」
「やめろ、今は任務中だぞ?」
「じゃあ……任務終わったら、私の唇にも、また“護衛”してくれる?」
「意味分からん!」
◆ ◆ ◆
だが、その平和な夜は突如破られる。
城の外縁に“黒装束”の気配――
(この殺気……まさか!)
蒼の瞳が鋭くなる。
「来やがったか、“黒陽の者”……!」
烈火時代の記憶に刻まれていた、滅んだはずの暗殺組織が、なぜこの世界に?
そして、彼らの狙いは――蒼の記憶と姫の血筋だった。
敵は静かに動いている。
だが蒼たちも、ただでは終わらない。
「……紅、楓、影。いくぞ」
「任務開始ね。愛しの蒼、背中は任せたわ」
「……蒼ちゃん、気を付けてくださいね。ハンマー、最大出力でいきますから!」
「……潜入・迎撃・影散布完了」
蒼の鞭は、金属の鱗のような鎖を纏い、既に“アーマーモード”へと変化していた。
(負けるもんか。俺は――“蒼”だから)
――そして、忍びたちの本当の戦いが、夜の闇に紛れて始まった。




