表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/145

第65話「もう一人の転生者、仮面の下の素顔」



 


夜の静寂を破るように、窓が開いた。


蒼はすぐさま反応し、跳ね起きる。全身にぞわりと走る、かすかな殺気。

その気配は、蒼だけでなく、紅や楓、影(ZERO)までもを一瞬で目覚めさせた。


 


「出てこい、隠れても気配で分かる……誰だ?」


窓辺に立っていたのは、仮面の男。

黒ずくめの忍装束に、無機質な仮面。口を開くと、静かでありながら異様に響く声が部屋を満たした。


 


「久しいな、“烈火”」


 


蒼の身体がビクリと跳ねる。紅が即座に庇うように前に立った。


「こいつ、何者!?」


「……烈火って……私の、異世界での名前……」


仮面の男は、ゆっくりと仮面を外した。

そこにあったのは――


鏡に映る蒼自身のような、もう一つの顔だった。


「嘘……!?自分……!?いや、違う……似てるけど、違う」


 


「俺の名は“灰火はいか”。烈火の片割れ――もう一つの魂だ」


仮面の男は語る。


異世界の終焉時、分裂した烈火の魂。

そのうち一つが“蒼”として現世に転生し、もう一つが“灰火”として異なる存在となった。


 


「お前は、全てを抱え込もうとしている」


「……は?」


「焚火の記憶、烈火の力、“蒼”としての感情と愛。

すべてを手に入れて、何を成す。何を守る」


灰火の問いは、どこか怒りにも似ていた。


蒼は一瞬、言葉に詰まるが――その手が、隣の紅の手をぎゅっと握る。


 


「守るんだよ、今を。“今の私”を信じてくれる仲間を。そして――紅を」


「……ふっ、愚かだ」


そう言いながらも、灰火の表情には、どこか満足そうな翳りが浮かんでいた。


 


(この力……まだ、目覚めていない)


蒼の身体の奥で、譲渡スキルが再び脈動する。


灰火はその気配に気づき、ふっと身を翻す。


「いずれ分かる。どちらが“本当の烈火”か……いや、“蒼”か」


そして、夜の闇に消えていった。


 


◆ ◆ ◆


次の日、宿を出る前に――


紅が蒼の肩にそっと寄りかかった。


「私さ……蒼が“烈火”じゃなくて、“蒼”でよかったって思ってる」


「……紅」


「だから、もし揺れそうになったら……私を見て。“今の蒼”を信じてるから」


 


その言葉に、蒼の胸の奥がまた熱くなった。


そして――紅の唇が、そっと蒼の唇に重なる。


「……えっ」


「あ、あっ、ちょ、朝から!?お前っ!!」


「えへへ。譲渡スキル、また進化するかもよ?」


 


蒼の身体がまた、少し……いや、かなりボリュームアップしたように感じたのは気のせいじゃなかった。


 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ